表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強魔術師は無職です  作者: 十字たぬき
記憶の上映 2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/73

11




 火が上がる。

 人がまた死んだ。

 クロの目の前には、

 地獄のような光景が広がっていた。

 叫び剣を奮う兵士達はもう正気じゃない。

 また人が死んだ。


 クロは現実に心が折れかけていた。


 違う、こんな事望んでいなかった。


 彼は心の中で言い訳を唱える。


――――戦が始まり戦闘が起きても、王家や貴族の指示に従わずにクロは一切攻撃をしない事をまず心に決めた。いっそ一度戦わせて、みんな片っ端から生き返らせればいい。そうすれば、終わらない戦いに疲弊して皆戦争の無意味さを分かってくれる筈だ。クロはそう考えた。


 今回の戦争には、彼なりに考えて参加した。しかし、目の前の光景は彼が考えていたような甘い物ではなかった。


 人を殺して、殺されて。

 死を迎える程の痛みを感じたのに、再び目を開ければ戦いは終わっていない。また自分を殺そうとする敵が襲いかかってくるのだ。死んだ筈の人間が自分に襲いかかってくる。殺さなければ殺される。それを繰り返す内に味方も敵も見分けがつかなくなる。

 そしてまた絶命の痛みを味わう。

 再び目を開ければ、終わらない地獄が待ち受けている。


 そんな状況の中で、戦争に挑む兵士達は皆狂っていった。


 ()いて、()いて、(わめ)いて、()えて。


 戦いの中聞こえるのは、国や自分の未来を思う人間のそれではない。


 もうこの場に要人はいない。

 阿鼻叫喚の地獄絵図を目にして、クロが戦う気がないのを悟ると影武者を置いて早々に離脱した。


 ロベルトもクロの側にいない。


『どうせ生き返らせてくれるんだろ? 少し人生経験積んでくる』


 そう言って、ロベルトは兵士の中へと紛れ込んだ。





 自分をずっと責めていたクロは、ふとロベルトを思い出し彼を探す。


 彼もまた気が狂って、味方の耳を食いちぎった所だった。次の瞬間には後ろから槍で刺されて命を落とす。クロが戦場に掛けたオートの魔術で間も無く命を吹き返すと、近くにいた敵の目玉に剣を突き刺し笑い声をあげた。


 そんなロベルトの姿を見ていられずクロはぎゅっと目を瞑る。



 死んで。死んで。死んで。死んで。生き返って。

 また戦場に兵士が蘇る。死ぬ度に皆狂っていく。





 逃げても、逃げても、思考をどこへ逃してもクロは苦痛から逃れられず、再度目の前の光景と向き合う。


 なんでこうなった? どこで間違えた?

 こんな光景なんて望んでなかった。

 ああ、また人が死んだ。

 いつまで繰り返せばいい? もう嫌だ。

 誰のせいだ。俺のせいか?



 俺がいなければ。


 ごめん。みんなごめん。俺のせいだ。


 俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺せいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ。






「そうか、俺がいたからいけないんだ」


 ふと思いついた事が、クロは正解だと気づいた。


 クロが世界に現れたからロベルトは狂った。

 アレンだって、クロがいなければ死ぬ未来はなかったかもしれない。


 世界から消える、そう考えたクロは気づけば自分の視界が滲んでいるのに気づいた。






「みんな、ばいばい」






 涙声でそう呟いて、クロはこの世界の住人の時を戻した。クロがこの世界に現れた日へと。


 住人は淡い光と共に皆消えたが、クロが見る風景は変わらない。人の時を戻しただけで、世界の時を戻した訳ではないのだ。


 ふと、彼の目に石板が映った。


 壊そうと考えて、考えを改める。


 クロは誰の記憶にもいなくても、この数年自分が生きた事実をどこかに残して置きたかった。



「なんか疲れたな。ゆっくり眠りたい」



 そうしてクロは、最初の森に移動した。

 ロベルトと過ごした屋敷を創ると、そこに擬態の魔術をかける。


 中へ入ると格好もそのままにベッドへ倒れ込んだ。


 気持ちが落ち着くまで、誰にも起こされないように。


 それは魔術だったのか。彼の願いだったのか。






 クロは長い眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ