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最強魔術師は無職です  作者: 十字たぬき
記憶の上映

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10




 悲しみの波からゆっくりとメリーは浮上していく。


 少年と同調した心は傷つき、浮上していく毎にそれは少年へと慈しみへと変わる。


 愛しい。それでいて、切ない。






「わっ! お姉ちゃん起きた!」


 メリーが目を開くと、ハンカチを持ったリリィが間近にいた。


 ホロリと頬を伝う涙を指で拭って、メリーは気づく。


「リリィちゃん、拭ってくれてたんだ」


「お姉ちゃん大丈夫?」


「ありがとう。大丈夫か大丈夫じゃないかって言ったら、全然大丈夫じゃない」


「ええ!! どうしよう!?」


「あははっ。取り敢えず、もう夜だよね? 私ご飯食べたいな」


「わかった! お願いしてくる!」


 リリィがハンカチを握ったまま扉を開けて出て行くと、メリーはゆっくりと息を吐いた。


「ちょっと、辛すぎるね……」


 思わず吐いた独り言は、同調したクロの感情からか。それとも、愛する人の過去を知ってか。


「……ああ、壊れそうな少年のクロ様、好き」


 しかし、メリー節は通常運転の様だ。


 ゆっくりとメリーは立ち上がり伸びをした後、窓を開いて風を浴びる。


 そこから見える月を眺めて呟く。


「クロ様、早く帰ってこないと全部過去覗いちゃうぞ」


 楽しげに言いながら、メリーは悲痛な表情を浮かべた。


 そんな彼女の様子を月だけが見ていた。

第二部一章完結です。


ブクマ・評価ありがとうございます。とても励みになります。


突如の過去編、更に第一部の一章完結型とは違う形式となりました。次章も過去返信続きますが、お付き合いいただけますと幸いです。


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