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最強魔術師は無職です  作者: 十字たぬき
占い師

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7

 



「凄かったね! お腹いっぱいなんだけど、私ももうちょっと食べたくなってきたー!」


「わかる。俺も、なんか今なら行けそうな気がする」


「甘いものならいけるかな?」


 きゃっきゃと楽しそうに笑うメリーを横目で見ながら、クロはタイミングを伺う。

 それに気づいたのか、メリーは三歩進んだ先で立ち止まりクロに向き直った。


 今まで、なあなあにして来たメリーとの関係。知ってはいたが、返す事はしなかったメリーの気持ち。


 クロの中で様々な感情が渦巻くものの、年月が彼を変えたのか、今日この日メリーとの関係を変える決意をしていた。


「えっと、あのさ」


 クロが思い切って伝えようとした時、



 ()()()()()()()()()()()



 頭部を失ったメリーの身体がゆっくりと倒れる。


 その首からは血が吹き出し、身体が倒れた瞬間にびちゃりと嫌な音がした。


 近くにいた女性がそれを見て悲鳴をあげた。


 それを発端に、あちこちで人の叫び声が響く。恐怖を煽られ、我先にと逃げ惑う人々で広場は荒れた。


 阿鼻叫喚な光景を前にして、クロはその場に佇む。その横目に熱を持って紅く光る、抉れた地面が映った。


「隕石? ははっ、こんな事故ってある?」


 掠れた声でクロは呟く。


 ゆっくりと、ゆったりと。

 力の籠らない脚で一歩ずつ近づくと、クロは()()()()()()()()を抱えた。


「メリーごめんな、痛かったよなぁ」


 メリーの身体が淡く光り、()()()()()()()()()()()()


 綺麗な顔で目を瞑るメリーの頭をひと撫ですると、その身体をクロはゆっくりと地面に置いた。


「やっぱ辛いわ。……やっと覚悟出来たのにな」


 その言葉を最後に、クロはその場から姿を消した。







 ユリウスは、その一連の光景を見ていた。阿鼻叫喚な人の群れを押し退けて、ようやくメリーの元へ辿り着く。


 クロが、過去にユリウスに伝えた言葉。


『ひとつ、心の傷は治せない』

『ふたつ、一時的な傷や病気は治せるけど、慢性的なものや老化は治せない』

『みっつ、死んだ人間は蘇らせられない』


 目の前で大切な人が死ぬ瞬間を見てしまったクロ。規格外の魔術を使えても、その命は戻らない。せめて、最後は綺麗な姿のままでと身体だけでも治したのだろう。


 そう思ったユリウスは、恐慌状態の人々に踏み荒らされる前にとメリーの遺体を回収することにしたのだ。


 本来ならば、遺体の安置までクロがすべきだろうとユリウスは思う。だが同時に、まだ若いクロが悲しみの余りに逃げ出したくなってもしょうがないとも思った。


 自身の警護をする部下の一人がメリーを横抱きに持ち上げるのを見て、ユリウスにはメリー死んでいる事が嘘のように思えた。血色の良いその顔は今にも目を開けそうだ。


「………………ボス」


 ユリウスが思ったのが先か。

 部下が気づいたのが先か。


「まさか」


「この娘()()()()()



 その言葉に反応したのか、メリーがゆっくりと目を開く。


 頭部を失った人間の元に戻したら生き返るか?


 答えは否。


 酸素が欠乏した身体は元には戻らない。


「つまりは、ヤツは嘘をついていたのか?」


 何の為に。


 それについてはユリウスにだって憶測できる。


 人の生死を自由に操れる事など、口外すべき事ではないのだ。もしかしたら、自身の妹であるリリーも一度死んで蘇らせたかもしれない事実だってユリウスには想像がついた。


「……なに? どうしたの?」


 状況が把握出来ていないようで、ゆったりとした動作でメリーが辺りを見回した。


「お前は一度死んだ。クロの魔術により蘇ったが、今は動くべきではないだろう」


 ユリウスは言った後で、しまったと思った。

 常人であれば理解の出来ない現象。しかし、メリーは静かに頷いた。


「……そう。クロは? クロ様はどこ?」


 ユリウスよりも、メリーの方が余程落ち着いていた。若さゆえか、クロとの付き合いが長い所為か。ユリウスには知る由もない。


「わからない。ヤツはどこかへ消えた」


「そっか。なんでいなくなっちゃったんだろ? こういう時、クロ様が行きそうな場所なんてわからないよ」


 寂しげにメリーは呟く。


「私、クロ様の事本当に知らないんだな」


 気の利いた言葉を探すが、ユリウスは何も見つけられない。クロと行動してるのを見かけただけのまだ歳若い女性。妹と歳の近い女性の寂しげな姿に、ユリウスは心を痛ませて思わず目を逸らす。


「…………これは、今知るべきって事だよね? 今まで遠慮してたけど、踏み込むべき時期だよね!」


 しかし、ユリウスが再度メリーを視界に入れた時、そこに弱々しく寂しげな女性はいなかった。


 目に輝きを持ち、力強く未来を見据える強い女性の姿があった。


「どうするんだ?」


 特に意味はなく、ユリウスは頭に浮かんだ疑問をつい口にする。


「クロ様の過去を覗いちゃおう!」


 普通は有り得ないような過去を覗くという行為。そんな事がメリーに出来るのか出来ないのか以前に、辛い感じで人の過去に覗くと宣言するメリーの人格の異常を、ユリウスはたった今垣間見た。

七章完結です。


ここまで第一部扱い、次回から第二部に入ります。


ブクマ・評価ありがとうございます。頂けるたびに励みになります。


ここまでお付き合いくださりありがとうございました。次章もよろしくお願いします。

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