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最強魔術師は無職です  作者: 十字たぬき
占い師

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5




「確かに、アタシがあの子の事をお願いした。間違いない。それにしたって……」


 イーストプールで娼婦として働くローラは、(めく)った天幕の裾から見える光景に驚きを隠せなかった。


 ローラの勤める娼館に程近い飲食街。その中心にある広場には、所狭しと屋台や露天が並んでいる。

 昼食前の時間だと言うにも関わらず、既に多くの人で賑わっていた。


「凄いだろ? 俺一人じゃここまで出来なかったんだけどさ、今回は人選が良かった」


 クロが、フィオナの客獲得の為に思いついた『大食い大会』。クロの頭の中で描いたものは、街の広場にステージを用意し、他にも客を集める為に周りに露店や屋台を出店させると言うふんわりしたイメージのみだった。


 しかし、相談されたのはこの街一番のマフィアのボス。出店料や、露天の為の資材貸出、それだけでもかなりの儲けが見込めた。


 今時、マフィアも暴力だけでは食べていけない。知略を駆使してディニータ・ファミリーをこの街のトップへと導いたユリウスは、今回の話は旨味があると踏んだ。


 ユリウスは企画・運営・設営まで請け負い、ディニータ・ファミリー主催の『大食い大会企画』がスタートする。


 多彩なルートでの口コミ宣伝から始まり、大店の商人から行商人の出店には金額で立地や搬入の優先順位を設ける等あらゆる手を駆使した結果、ディニータ・ファミリーでも類を見ない規模の利益を上げることなった。


「まさかクロがあのディニータ・ファミリーと知り合いなんてね。アタシまでこんな格好してるし」


 そう言って、ローラは自身の服を見下ろした。ローラの視界に映るのは、身体のラインがよくわかる白いワンピースである。


 わざわざステージを用意するのに、大食い大会だけでは勿体ない。そう思ったクロは、ユリウスに『美人大会』所謂ミスコンも提案した。


 美人と酒と美味い飯。三拍子揃えば、来場者は盛り上がり、更に金を落とす。


 一部の一般参加者を加えたものの、娼婦や街のちょっとした有名人を招待した()()()()()()()()()()ミスコンも同日開催されるに至った。


「ローラも上手くアピールすれば客増えると思うし、良かったじゃん」


 そう言ったクロに、天幕の外から呼ぶ声が掛かった。


「俺もう行くわ。アンタも楽しめよ」


「え? クロもこっち側の人間じゃないの?」


 天幕の内外、また広場に至るまでディニータ・ファミリーや今回のイベントの主催側の人間が忙しなく動いている。ローラはそれを視線で指すが、クロはゆるく首を振る。


「俺働きたくないし。ここにはアンタに挨拶しに来ただけだから、向こう行って色々食ってくるわ」


 そう言って天幕を出ていったクロを、ローラは唖然とした顔で見送った。











「お祭りって、宗教関係なくてもできるんだね」


 メリーは、活気溢れる広場を見回しながら言った。


「なんか、ユリウスも同じ事言ってたな。盲点だったとかなんとか。でも、村特有の祭りとか結構あるよ?」


「さすがクロ様……っと!」


 人混みの中で走ってきた子どもにぶつかり、メリーが少しよろける。


「危ないな」


 それを見たクロはメリーの手を取り、当たり前のように手を繋いだ。


「えへへ、なんかクロ様と二人って久しぶりだね」


「そうだなー、俺もなんかドタバタしてたし。こうして祭り行ったのも懐かしいよな」


「どこだったっけ? 羊の串焼き美味しかったとこ! また食べたいなあ」


 飲んで、食って、騒いで。現実から逃げた日々を思い出して、二人は懐かしさと少しの寂しさを思い出す。


「私ね、師匠はとっくに越えたよ? 遊ぶ分は自分で稼げるし、イーストプールに来る前も楽しく暮らせてた」


 クロの背に、メリーの晴れやかな声が届く。その顔は見えずとも、クロにはメリーの顔に笑顔が浮かんでいることが想像出来た。


「クロ様はどう? 楽しく暮らせてる? それとものんびり過ごせたかな?」


 メリーには、辺りの喧騒が少し大きくなったように感じた。そう感じる程のクロの沈黙。

 メリーからはクロの背しか見えない。大好きクロが望むまま、穏やかな日々が毎日彼の元に訪れればいいとその背に切と願った。


「そこそこ俺も楽しくやってるよ。…………それよりさ、ずっとなあなあにして来ちゃったけど、俺もケジメつけなきゃなって思ってさ」


 繋いだ手から、クロの体温が少し上がったのをメリーは感じた。


 ずっとクロの事を好きだと言っていたメリーだが、交際への発展も断りも、ちゃんとした返事を貰った事がない。


 とうとうこの日が来た。


 そう思ったメリーは自分の身体が強ばるのを感じた。一度意識してしまうと、自身の心拍数が徐々に上がっていくのにも気づいてしまう。


「その話は! お祭りが終わった後に聞きたいな!」


 メリーが上擦った声で言えば、繋いだ手を確かめるようにクロは優しく一度握った。


「…………それもそうだな。じゃあ、まずはエール買いに行くか! 飯はそれからだ!」


「うん! 私もうお腹ぺこぺこー!」


 先程までの雰囲気を無理矢理変えるように、二人はハイテンションで祭りの景色と同化した。

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