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最強魔術師は無職です  作者: 十字たぬき
眠れる獅子

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「アンタ! 心配されてるぞ!」


 ケイトはその言葉に、思ってもみなかったとでも言うように顔をきょとんとさせた後、静かに笑った。


「後の事考えてるなら、俺が回復してやるよ」


 ケイトの顔を見つめて、クロは手でゴーサインを出す。


「いいぞ、やっちまえ」


 ケイトも、その顔を見て頷いた。


 振り返りざまに、渾身の右フック。


 顎に綺麗に入った一撃で、アイシャは脳を揺さぶられそのまま崩れ落ちた。


 ベンは何が起こってるのかわからず、ただただ見ていた。


「あー、すっきりした。たまには、やり返すっていうのも気持ちがいいものね」


 清々しそうに声を上げたケイトは、ベンの近くに腰を降ろした。


「ごめんなさい、ベンは心配してくれていたのね。貴方とは付き合いが長いから、もっと話すべきだったわ」


 ベンは言葉の意味が上手く理解出来ず、ただただ疑問を口にする。


「だって、君は困っていただろ? 仕事を押し付けられ、荷物を押し付けられ、本当は僕が助けてあげられれば良かったんだけど」


「アイシャに任せて不備があるより、私がやった方が早いし確実。聞く気がない人に教える程、私優しくないもの」


 ベンは、ケイトはもっと弱いと思っていた。

 女性は、男性よりも弱く守るべきものだとずっと思って生きていた。


「荷物だってそう。アイシャの歩く速度が落ちるくらいなら、少し位持つわ。早く帰りたいもの」


 しかし、ケイトは強かった。


「私ね、結婚するの。だから、これが最後の任務。ベンは真面目だから、一緒に仕事する時は気が楽だったわ」


 ベンは、今になってケイトの事が好きだったと気づく。今更気づいたってもう遅い。


「おめでとう。幸せに暮らせよ」


「ありがとう。ベンも怪我には気をつけてね」


 ケイトは強い女性だった。

 その心に、眠れる獅子を秘めていた。





四章完結です。


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ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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