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「ちょっぱやで終わらすから、出来れば黙ってて欲しいんだけど」
そう言ったクロは、レオと一緒に少女が眠る部屋の中にいた。
説明する間もクロは惜しみ、部屋にいたメイドは強制的に眠らせ、部屋には鍵をかけた。
「いいよ。でも僕はここにいる」
「……邪魔だな」
そう呟いたクロから何か光が飛んできて、レオは自分が魔術をかけられた事に気づいた。
ふとレオが下を見ると、自分の足が無い。腕を動かしてみれば、それも無い。透明になる魔術をかけられたようだ。
クロがどこか遠くを見るように少し上を向きながら、ラルム、ラルムと呟く。
「……いた」
次の瞬間、部屋の床の一部が光を発し、そこにラルムが現れた。
「えええ!?」
ラルムは何が起きたか分からないようで、辺りを見回してる。それもそうだ、今さっきまで王城にいたのだから。
しかし、ここはよく知る娘の部屋。
夢なのだろうかと思うが、何故か娘はベットに横たわり、全身黒い男がそのベットに腰掛けている。
夢だとしても、嫌な夢だ。
「何者だ!」
ラルムは娘を助ける為ベットの方へ駆け寄ろうとするが、踏み出した脚ごと身体が宙に固定された。
「んなっ! 身体が動かない!?」
「なあ、お前に聞きたいことがあるんだ。死んだ娘を返してやれば、この娘は不要か?」
「お前! 化け物かあ! 娘を返せえ!!」
「質問に答えろ。時間はない」
クロはラルムに冷たく言った。
ラルムは娘を人質に取られていることに気づき、顔を青くさせながら必死に叫んだ。
「妻も! エラも! 悲しいがもう死んでしまった!! この世にはいないんだ!! 私にはサラしかもういないんだ!! 怪物め!! サラには指一本触れさせないぞ!! サラは私が守るんだあああ!!」
ラルムは、夢だとしても、もう家族がいなくなるところは見たくなかった。そんな事になるなら全力で戦う。相手が怪物だとしても。
身体が動かない事も忘れて本気で叫んだ。唯一自由な青ざめたはずのその顔は、いつのまにか真っ赤になって血管が浮き出している。
その全力な叫びを聞いて、クロは笑った。
「おい、聞いてただろ。もうエラはいなくていいんだってよ」
その言葉を聞いて、いつの間にか起きていた少女が身体を起こした。
「本当に……?」
「確かめてみれば? お前の父親はそこにいるし」
少女はベッドから飛び降り、ラルムの元へ駆け出した。
ラルムの見えない拘束はいつの間にか解かれ、そのまま娘を抱きしめた。
既に、怪物と呼ばれたクロはその場から消えていた。




