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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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97 地区代表たちの決断

「もしかしてこれも……アーサーの仕業だったりするのか? 」


 皆は心のどこかで考えないようにしていたそのワタリ言葉に、互いに目を見合わせる。明らかな敵意を持って、人間に病をばら撒くアーサーがもし本当に存在するのだとしたら……。


『アーサーという存在は、確かにこちら【ホーム】でも確認されていますよ。人間に敵意を持っているかどうかまでは私どもには分かり兼ねますが、病に倒れた地区代表ならば知っておられるかと』


 彼等の不安を煽るように代理の兵士が言葉を矢継ぎ早に発する。代表達は全員憶測で語り始めようとはせず、この中で最もアーサーについて詳しいであろう学長の方へ視線を集めた。コウゾウも、このまま黙っているわけにもいかないだろうと観念して恐る恐る話し出す。


「アーサーという存在は、それぞれアース復活のためにアースの記憶を護っています。環境や気候など、惑星のテラフォーミングに必要なものばかりだと考えていましたが……例えばアースの【動物や細菌の遺伝子】の記憶を護るアーサーがいたのだとすれば、病原菌によるバイオテロを行う可能性もあると思われます」


「何たることだ……早く、一刻も早くアーサーという存在を捕獲しマキナへと送りつけるべきです! 」


  コウゾウの話を聞いたワタリは怯えたような顔で突然立ち上がり叫び始める。カゲツやエンノスケも人間に対して敵意を抱いているアーサーには出会ったことがなかったために、どうすればいいか考えながら黙り込む。



『とにかく、代表や他の職員の方々もかなり苦しそうで……出来るだけ早く治療のために【ホスピタルウォール】へと向かわせていただきたいのです。通常の黒いトレインだけで全員を輸送できないかもしれませんので、できれば通常トレインを連結させてこちらへ寄越していただけませんか? 』


「…….わかりました。しかしトレインの車両編成の調整には多少時間がかかります。少なくとも3日はかかると思っておいて下さい」


『わかりました……。一刻も早く……お願い致します』

 

 心なしか、画面に映る兵士も少し苦しそうだった。もしかすると彼も感染症にかかってしまっているのかもしれない。事態は一刻を争うようだ。そう全員が思う中、オサだけは睨むような眼で画面の男を見つめ続けていた。









「二つの問題……関係ないようで、実は一気に片づけられるんじゃないですか? 一石二鳥、って言うんでしたっけね。アースの言葉じゃ」

「どういうことでありますです? ゲインさん」



 悪だくみ顔で薄ら笑いを浮かべているゲインの言葉を聞いて、ジュノは興味津々で質問する。他の地区代表達は薄々彼の考えには気づいていたようだが、黙って彼に説明を聞こうとしている。

 

「【ホーム】にいるアーサーを捕縛し、惑星マキナへと献上すればいいんですよ。それなら貴方がたの友達であるアーサーは渡さずに済むし、感染症の元凶であるアーサーもこの惑星から遠ざけられる」


「なるほど……しかし、そんな危険なアーサーを渡して大丈夫なのでありますですか? 」


「そこはまず問題ないでしょう。皇帝陛下は全てのアーサーを手に入れるつもりなのですから。危険なものから少しずつ彼等に引き渡し時間を稼ぎながら、残りのアーサー達に目的を果たさせればいいのです。アース復活の後なら彼等を引き渡そうが、彼等も文句は言わないかもしれませんし」


 ゲインはやはり、アーサーという未知数かつ危険な科学は最終的に惑星マキナの管理下に置かれるべきだと考えているようだった。カゲツやエンノスケ達が反論しようと身を乗り出すが、学長が手を伸ばして2人を静止する。


「なぜ止める、コウゾウ」

「それは……私も彼の意見に賛成だからです」


「なんじゃと!? お前、自分が何を言っているかわかっとるのか!? 」

「もちろん、アーサーが惑星マキナのものだという意見に賛成したつもりはありません。しかし、アーサーを引き渡す事で時間稼ぎをするという方法は選択肢としては悪くないと思います。先日のリオンの話もある」


 学長が言っているのは3日前の地区代表会議に参加していた最後のアーサー•リオンが語った彼自身の持つあるシステムについての話だろう。その場にいた全員が彼の話を思い出す。


「もちろん惑星マキナとの話し合いを重ねた上で決める事です。しかし、もしこの惑星を危険にさらすような状況になるのだとしたらその時は……」


 そこまでいって学長は言葉を止める。こんな話をアラム達が聞いたらどう思うだろうか。それでも、地区代表としてすべき選択はリバイブの未来を良くするものでなければならない。惑星マキナと惑星間戦争が起きれば、惑星リバイブだけでなく多くの惑星が巻き込まれかねない。


 ここにいる地区代表たちの中で最もアースを愛し、アーサー達を一番近くで見てきた男が覚悟を決めて両方を活かす道を模索している。カゲツやエンノスケも、彼が言うのであればと渋々この案を受け入れる。


 今期の地区代表会議は今日が最終日だ。これからまた数ヶ月、惑星リバイブは日常を取り戻す。それでも暗雲は宇宙の漆黒に溶け込みながら、人々も知らないうちに潜み寄る。 


 【ホーム】、惑星マキナ、そして【メカニカルフォックス】。更なる脅威が動き出す。

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