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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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96 アーサーたちをどうするか

「どうしましょうか……皆様方のご意見をお聞かせ願いたい。彼等、アーサーたちをどうするか」


 心なしかいつもより俯きがちな姿勢のオサは、頭を抱えながら困り果てた様子で横長の円卓を囲む男達に問いかける。数日前にその存在が判明したアーサーたちの件について、7人の地区代表がまた招集されていた。今回の地区代表会議は通常より長い期間開かれており、市民からも少し不安の声があがっていると聞く。


 参加者全員が重苦しい雰囲気を漂わせているのも仕方がない。惑星間の戦争さえ引き起こす可能性があるのだから、皆が言葉を躊躇うのもある意味当然のことだった。そこに加えてリオンというアーサーの話がのしかかってくる。自分達がどういう選択をとるべきかを全員がいまだ決めかねているのだ。


 このままでは埒があかないことを悟った【キャピタルドーム】の地区代表、オサは息を吐いてから自分の意見を話し始める。


「私は正直、彼等の話もアーサーのこともまだよく分かっていないのです。しかし、アーサーが実在している以上何か対応策を考えなければなりません。皇帝ガルアリクの機嫌を損ねればこの星がどうなるか……皆様も想像出来るとは思います」



 



「ワシは、コウゾウの息子を支持するぞ。大事な後輩の倅だからなぁ」


 先陣を切って言葉を発したのはカゲツだった。隣に座っていたジュノもカゲツの方を見つめていたが、やがて覚悟を決めたように頷く。カゲツも嬉しそうに、震えているジュノの身体に機械の腕を回す。

 学長は言葉を漏らさずにカゲツの方を見て深く頭を下げる。しかし彼らのアーサーを尊重する姿勢は、あの惑星マキナからの要求を断るということでありこの惑星の未来を危ぶめる可能性がある選択だ。それを理解している者たちは不満そうに、静かに反論する。まず言葉を発したのはワタリだ。


「……ハルバートがガルアリク帝に喋ってしまったことがそもそもの始まりだったのだ。そこは私から謝罪させていただきます、本当に……本当に、申し訳ない。

 しかし、惑星マキナとの貿易はなくなるとリバイブとしてはまずい。それは皆様もご承知のことでしょう? 今の関係を保つ為にもアースのアンドロイドなど、早く差し出してしまう方がいいのではないか。そう私は考えております」


 惑星マキナからは、主に小型のスペースシップやドーム間を繋ぐトレインの装甲やドーム内にある市役所や【ホスピタルウォール】などの主要施設の機器などを輸入している。ある時期からこれらの製造や修理を惑星マキナからの輸入に頼っているのは、惑星リバイブの必須資源であるゼルの特性が原因だ。


 本来ゼルは緑色の球体で、【メカニカルフォックス】の研究者や製造者達のプログラミングによってその性質や形状を変えるものだ。

 それらが惑星リバイブの衣食住を支えているのだが、内部に設定されたセキュリティーを突破してしまえば一度決められたゼルの性質や形状は後から変更、改造することが出来る。


 そのゼルの特性自体は食べ物の味を変化させたり住まいを簡単に改築できたりと長所はあるのだが、もしもトレインやスペースシップ等の乗り物に細工をされてしまえば利用者たちの人命に危険が及ぶ可能性がある。ドーム内の重要施設に細工をされることも、同様に問題視されている。こういう理由からゼルによる製造は原則禁止とされており、惑星マキナのゼルではない資源から作られた機器を輸入して取り入れているのだ。


 惑星マキナの科学力は絶大だ。惑星リバイブのような小さな惑星が今のように取引をできるのが奇跡といってもいいほど。だからこそ、言いなりにならざるを得ない。それがワタリの考えだった。

 そしてその考えに賛同する者がもう1人声をあげる、【ストームイーグル】の地区代表ゲインだ。



「私も、アーサーという存在に経済的な利用価値はあると思います。実際目にしたアーサーは2体のみですが、どちらも神秘的とでも表現すべき……また異質とも言い換えられる特別な機能を内蔵していました。彼等を制御できれば、相当の利益と富を産む。 


 しかし、あなた方に彼等を制御し管理下に置くという気はなさそうだ。ならば私はこの惑星にとって彼等の存在を脅威であると捉えます。我々の手で制御できないものなど、不要。渡してしまえばいい」


「なかなかの言い草だな、若僧。アーサーを商品としか見とらんようだな。奴らと関わったのなら、お前も知っとるはずだろうが。あいつらがどれだけ一途にアースを想っているのかをよ」 


「私にとってはアンドロイドは商品です。それ以上でもそれ以下でもない。不必要な感情で損失を被るなど、商売人としてはあってはならないことです」


 体格の良いエンノスケが覗き込むようにしながらゲインを睨むが、ゲインは鼻で笑うように彼の訴えに意見する。アーサーに関して大きく二つの意見に分かれて議論は収まらない様子だったが、学長だけはずっと黙り込んだまま何かを考えている様子だった。


 突然、会議の最中に備え付けのモニターに人影が映し出される。そのモニターは【ホーム】の地区代表が会議の際にリモートで参加するために備え付けられたものだが、そこに映し出されたのは【ホーム】の地区代表ではなく【ホーム】の警備を任されている戦闘用装備に身を包んだ一般兵だった。その顔はマスクによって隠されている。



『あのー、すいません! こちら【ホーム】管制塔、情報司令室です。非常事態につき【ホーム】地区代表の代理で出席させていただきます』


「代理、ですか……そんな話は彼から聞いてはおりませんでしたが」


 オサが不思議そうに代理と名乗る一般兵に対して質問する。するとその一般兵はそう言われるのも仕方ないと言わんばかりに、申し訳なさそうに話し始める。



『現在【ホーム】では謎の感染症が流行しております。地区代表と私の同志達の多くは、この感染症のせいで皆倒れてしまったのであります。


 私が代理を任せられたのは、【ホスピタルウォール】への緊急搬送の手配をして欲しいとのことで。勿論、会議には貢献させていただきますが』


 彼が無礼とも捉えられ兼ねないフルマスクで地区代表会議に参加しているのは、その感染症の予防策であるのだろう。だが、それよりもこの場にいた者たちが気になっていたのは別の部分的だった。


「もしかしてこれも……アーサーの仕業だったりするのか? 」


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