92 思わぬ再会
アラムとジャッジの討論……正確には地区代表候補たちの模擬会議が徐々に熱を帯びていく最中、突然空気を読まない1つのモニターが起動音とともに動き始める。そこには人影が2つ映っており、皆が画面に注目する。
「皆さん、遅れてすいません。【スペースゲート】の次期地区代表候補として、地区代表会議に参加させていただきます」
「なっ! お前は……! 」
アラムはその姿を見るやいなや動揺して思わず立ち上がる。アラムはその男の顔を見た事があった。
「お前、もしかしてハルバートか!? ユーシアと揉めてた……」
「なっ、てめぇは……そうか。考えてみればあり得る話だな。まぁ、どっちにせよこの場に出てきてくれたのは好都合だ」
画面に映っていた人影の1人は少し前までユーシアの同級生だったハルバートという名の男だった。学長の話だと確かいまは惑星マキナへの留学中だったはずだ。ということは、隣に立っている人影は惑星マキナの人間ということになる。アラムとリオンが初めて見る惑星マキナの人間に興味津々で画面を覗き込んでいると、誰ともなく驚きの声が部屋に響き渡る。
「なっ、あなたは……皇帝陛下! 」
その言葉を聞き、アラムとリオンは思わず顔を見合わせる。アラムは知識としてはその男の事を知っていた。
アースを滅ぼした崩壊の聖戦のきっかけを作った者達の末裔が暮らす科学の惑星マキナを統べる現皇帝、ガルアリク•ギラ•マキナ。
マキナの皇帝一族に産まれた者は王位継承までに科学者や発明家としてマキナの科学力の発展に尽力を注ぐことを命じられているのだが、ガルアリクは歴代皇帝の中でも新たな発明品や技術を幾つも生み出していることで有名だ。
隣にいる人影を見て地区代表達は驚きの声を上げながら立ち上がり次々に頭を下げて挨拶をしていく。地区代表候補たちもそれに倣い頭を下げていく。しかし、本当に驚くべきことが起こるのはその後だった。
「あー……ミナサン、頭を上げてください」
ガルアリクが惑星マキナの言語ではなく、この惑星リバイブに伝えられたアースの言語で地区代表達へと語りかけてきたのだ。あまりに予想外の出来事に皆は少しの間状況が飲み込めずに混乱していたが、いち早く冷静さを取り戻したオサが代表してガルアリクに確認する。
「あ、あの……皇帝陛下。どうしてこの国の言葉をお使いになられて……」
「私も疑問です。どういうコトか……ミナサンの言葉を理解しなければ、彼等は読み解けないようなのです」
「は、はぁ……」
訳がわからないオサに対してガルアリクは微笑みながら機械の両腕を前に広げて見せる。
「後で話しマス。今はまず、ミナサンのお話を進めてください? 」
「し、しかし……地区代表の会議は門外不出の契約が交わされています。ましてや、他国へその情報を漏らすなど……」
オサに続こうとジャッジが恐る恐る皇帝ガルアリクに意見を述べる。ガルアリクは何か喋ろうとしたがそれをハルバートが遮って話し始める。
「地区代表の会議なら、お前の言う通りだろうな。しかし俺たちの話し合いはただの真似事だろう? そもそもその契約には全く反しない」
「むぅ……」
ハルバートの言い分に、ジャッジは言い返す事ができない。他の面々も異論を唱えることはなく、話し合いのためにもう一度席に着く。
「さぁ、それでは話し合いを始めようじゃあないか」
「あー……いや、やっぱそれ無理だわ」
全員が驚いたようにアラムを見る。ガルアリクは彼の発言に驚いたような顔をしており、ハルバートも慌てたように喋り始める。
「お、おいお前! なんて事を言い出すんだ、馬鹿野郎が! 」
「いやー、そんな事言われても。俺としてはただの真似事じゃなくて、ちゃんと惑星リバイブの未来の為の提案なんだもん。というか、ここにいる皆ちゃんと惑星リバイブの事を考えて話し合いをしてるんだよ」
たちまち場の空気が凍りついていく。こんな時にまで、またアラムの自由極まりないトンデモ発言がはじまるとは。リオンは頭を抱える。
地区代表たちは恐る恐る画面の中に映るガルアリクの方を見る。ハルバートも恐る恐る、黙り込んで俯いている皇帝の方をゆっくりと振り返る。しかし次の瞬間しんと静まり返った会議室に、笑い声が響いた。画面の中でガルアリクが腹を抱えて笑っていたのだ。
「ハハハハハハハハハッ! イーーーーヒヒひひヒヒヒッ! お、面白いなぁキミ! 私にそんなこという人初めてミタヨ! 」
ハルバートの後頭部をバシバシと叩きながら 笑い転げるガルアリクを見て困ったような表情で頬をかく。ひとしきり笑い終えたガルアリクは息を整えながら喋り始める。
「っはーーーーあっ。シカタナイネ、そこまで言われちゃ。だったら私の要件だけ手短に伝えるネ。その後にゆっくり話し合ってくれたらイイヨ」
ガルアリクは笑い涙を拭き取りながら、笑顔で言い放った。
「惑星リバイブにあるEarth-erシステム、キミら知ってるんだよネ? あれサ、近いうちに全部もらいにいくネ」




