90 未来のために
「それではまだ皆様お揃いではありませんが、これから地区代表会議を始めさせていただきます。今回は特例でそれぞれの代表者様には次世代の地区代表候補を連れてきていただいておりますが、自己紹介はまた後程各々でよろしくお願いします。それでは早速ですがお手元の資料をご覧ください。最初の議題は……」
【キャピタルドーム】の地区代表オサの指示に従い、それぞれ地区代表は目の前の資料に目を通しながら話を始める。アラムとリオンもこの部屋に流れる独特の空気感を肌で感じながら静かに地区代表たちの姿を見つめる。
食料やゼルの生産に関する議題、人口増加に伴う新たなドーム及び居住区の建設について、他惑星との外交や貿易……といった話が地区代表達によって話し合われていく。
ときに冷静に、ときに熱を込めて代表達がそれぞれの意見を交わす姿はアラムにはとても迫力があるように思えた。額に滴る汗を拭いながらも議論をしている学長の姿はアラムには今まで見たことがないほどの気迫だった。彼等が地区代表として惑星リバイブの未来を真剣に考えよりよい暮らしへと人々を導くためにとても真剣なのだということを、頭ではわかっていたつもりだったのだが改めて感じた。
学長だけではない、フゥを連れ去ったことで根っからの悪人だと思っていたゲインや自分より小柄で幼く見えるジュノさえも、この惑星の未来のためにどうすべきかを考え自分より歳上の大人達を相手に臆することなく言葉を発しているのだ。
アラムはここにきてあらためて思い知る。ここにいる人々はこの国のために色々なことを考えて、準備して、そしてようやくこの場所に立っているのだということを。地区代表という立場の重さを。
「……道楽息子か。俺にはお似合いの呼び名かもな」
「何だよ、急に」
急に落ち込み下を向くアラムを、リオンは怪訝な顔で見つめている。リオンがアラムを励まそうと何か言おうとしたが、タイミング悪くそれを遮るようにしてオサの声が響く。
「はい、指定の時間が来ましたので今日の話し合いはここで一度終わりにさせてもらいます。皆様ご存じの通り、ここからは次世代の地区代表候補のためにこの会議の場を譲ることになっています。我々の話し合いの続きは明日に延期しますので各々もう一度考えをまとめていらして下さい。
それでは次世代の地区代表候補の皆さんは前列の席へ座って下さい」
学長は立ち上がるとアラムとリオンを前に座らせる。
「【ワイズオウル】からはこの2人を……息子アラムとその補佐リオンだ」
次にカゲツが立ち上がり、ジュノの頭を撫でてから後ろの席へドカッと音を立てて座る。
「【メカニカルフォックス】からは、もちろんこのジュノだ。既に地区代表ではあるがゆくゆくはワシの後を継いで正式にドームの地区代表になる男よ」
続いてエンノスケが立ち上がり、後ろにいたフガクに合図をして席を入れ替わる。フガクは頭の後ろで手を組みニヤニヤしながら前列の席へと座る。
「【パラダイスモンキー】からは、このフガクを。こいつはまぁ、見た目はあれだが……まぁ今日のところは大目に見てくれ」
「やあやあやあ、よろしく皆さん。俺の名はフガクってんだ。いい会議にしようじゃないか! 」
場違いなほどに大騒ぎするフガクを前にしてエンノスケは頭を抱えてため息を吐く。大笑いしていたフガクを別の声が静止する。
「君、この神聖な場で騒ぐのは止めたまえ。不愉快だ」
「おお、そうか? すまんすまん」
左手をフガクの方へ真っ直ぐに伸ばしながら静止した黒髪の少年はフガクが黙ったのを確認するとオサの誘導で前列へと座った。
「【キャピタルドーム】からはこの少年、ジャッジを推薦する。何よりもこの惑星リバイブの未来を想う熱い少年だ。よろしく頼む」
「僕はジャッジだ。未来の地区代表候補の皆、必ずこの惑星をよりよいものにしていこう。以上だ」
【ストームイーグル】のゲインは地区代表候補を連れてきてはいなかった。数ヶ月ほど前に前任の地区代表と交代したばかりだからだ。【スペースゲート】の地区代表は現在惑星リバイブにいないため惑星間通信で参加するらしい。最初に気になっていたモニターはどうやらこのためのものだったらしい。
「申し訳ないです。どうやらまだ通信は繋がらないようで……少し会議には遅れることになりそうです」
「了解しました、ワタリ様」
すまなそうに謝る【スペースゲート】の地区代表ワタリに対してジャッジは立ち上がって深く頭を下げると、静かに椅子に座り直して前を向く。
「それでは、この場は僕ジャッジが仕切らせてもらう」




