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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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88 決戦の朝

 朝は冷える。アースとは原理が違うがこの感覚は惑星リバイブでも味わえるものだ。特に人の出入りが多く時間帯によって人口密度が大きく変動するようなドームでは、空調による温度変化とは異なる人の温もりによる温度差が生まれるというのがこの朝の冷たさに対するリオンの仮説だ。リオンはその綺麗で寂しい冷たさがそれほど嫌いではなかった。


 今朝はその冷たさが普段よりもリオンの心と身体に沁みる。

 リオンの仮説通りであるならば、現在【キャピタルドーム】の中心を囲む高い壁の内側が冷たいのは地区代表会議が終わるまでの間市民の立ち入りが禁じられているせいだ、ということになる。

 朝と夜の区別や境目がないこの惑星で、リオンにとって時間の流れを感じられるのはこの僅かな温度の動きだけだ。このケービロイドの姿しか見えない隔離された世界を別荘のベランダから眺めながら、静かに見渡す。静寂を破るように寝室の扉がノックされ、アラムがずかずかと中へ入ってくる。


「リオン、おはよう。学長達の準備が終わり次第出発だってさ」

「わかった、すぐに行くよ」


 会議にはリオンも出席することを許された。学長が次世代の地区代表候補の一人として参加の許可を得てくれたらしい。道楽息子アラムの評判の悪さもあってか、他の地区代表達もリオンの参加を拒む事はなかったらしい。




「そういえばさ、アラム。説得する方法はもう思いついた? 」

「んー……まぁね。多分なんとかなると思う」


 欠伸をしながら軽い口調で返答するアラムの態度にリオンは少し苛立ちながら、アラムの前に立ちはだかって詰め寄る。


「おい、多分ってなんだよ。もっとちゃんと考えろよ、今後の為にとても大事な事なんだからさ」

「わーかってるって。とりあえず俺に任せてくれりゃ、なんとかするからさ」

 

 アラムは苛立つリオンの肩をぽんと叩くと自信満々に高笑いしながら別荘の玄関へと向かって歩いていく。リオンはその余裕な態度に少し嫌な予感がしたが、ここまできたのに逃げる訳にもいかない。頭を抱えながらリオンの後を追った。

 

 

 アラムとリオン、ヒョウガに学長はケービロイドの誘導に従って惑星庁の方へと向かっていく。周りを見るとジュノとカゲツ、エンノスケたちもケービロイド達に前後左右を囲まれながら歩いているのが見える。



「お、ジュノだ。あっちは……あれ、ミスズじゃないぞ? 誰だろう、あの人」

「確かに見た事ない奴だな。まぁ、あのドームは一族が運営してるって話だったからミスズの兄貴か親戚って事になるだろうけど。市役所では見かけなかったな」

「確かに言われてみればミスズに似てなくもない……格好がかなり奇抜だけど」


 エンノスケと一緒に歩いている謎の青年は2人の視線に気づいたようで、エンノスケと少し会話をしてからアラム達の方へと歩いてきた。


「おうおう、お前らが噂の! 妹のミスズから色々聞いてんぜ! 」

「ってことは、やっぱりミスズの兄貴か」


「そうそう、そういうこと! 俺の名はフガクってんだ。【キカザルの館】を取り仕切るイカした歌舞伎者とは俺のことだ、よろしくな少年ども」








 同時刻。アラム達のいるドームから惑星の真裏に位置する場所に、他のドームより少し小さなサイズのドームが存在する。そこはこの惑星の人間に【ホーム】と呼ばれる隔離された土地。

 本来ならばそこには全ての罪人が集められているため、常に全ての居住区には数多のケービロイドが徘徊し住人を監視しているのだが、今日だけは違う。ドームの中の至るところにそのケービロイドが一機残らず動かずに転がっている。


 その様子をこっそりと確認しながらあちこちの建物から罪人たちがぞろぞろと出てくる。目の前に広がる光景は彼らにとっては夢のような瞬間だったようで、あちこちで歓声が聞こえ始める。

 その様子をニヤニヤと眺めながら2人の男がこの街で1番高いビルの上から拡声器で喋りかける。

 

「おー、お前らァ。今の間に俺らが指示した部品を片っ端から取り除け。それさえなければこのクソロボット共を幾ら壊したって、ケービロイドの管理者に通報されることはなくなるんだとよ。……だったよな? ゼク」

「そうそうそう、そういうことだよ。通信障害は会議が始まる頃には自動的に切れるようになってるから。革命軍総出で働いておくれよ」


 街中の人々は彼らの声に耳を傾けて聞いていたが、次々とその指示に従い近くのケービロイドを触り始める。その光景を眺めていた男に、ゼクは彼が普段から愛用している拳銃を手渡してその腕を引く。


「君には次の仕事があるよ。はやくはやく、はやく行こうよアスカ! 」

「そう急かさなくてもいいだろ、ゼク。すでにあいつらが占拠してる。時間にさえ間に合えば大丈夫だよ」


 そう言ってアスカはゼクを肩車してビルの真下を眺める。ゼクが合図をするとビルの真下から一本の大木が突然目の前の高さまで生えてくる。アスカはその木からぶら下がっている蔦を掴んで下へスルスルと降りていく。少し下の階の窓枠を掴んで中へ入ると、フードをかぶった4人の人影が2人を迎える。アスカはそれぞれの肩を軽く叩くと廊下の先にある扉を指差して高らかに叫ぶ。


「さぁ、始めようぜ。俺たちの革命を」


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