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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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87 探し回る

 博物館の見学を終えた二人は駅や博物館の付近をスタート地点として建物の隙間などを覗きながらドームを一周ぐるりと回る。しかし事前の情報通りいくら探してみてもドームの黒い床に露出した地面などはなく、ドウクツの作った穴らしきものもまるで見当たらない。

  地下室のありそうな建物や入口などに忍び込んで調べていくこともリオンは考えたのだが、アラムはそれを大慌てで却下した。さすがに地区代表の息子としてこの場所にきている自分の立場では迂闊なことはできない。結局、2人は発見の可能性が低い方法をとるしかなかったのだ。


 今度は人通りの多い駅前の方ではなく、この場所より少しドームの中心地の方へ向かう。まずは一度中央を囲むように造られた大きな壁の外周を歩いてみることにした。壁の直下にはお店や建物がほとんどなく、人混みもあまり壁には近付いていないためスムーズに地面を調べることはできたのだが、ここもやはり結果は同じだった。

 疲れ果てた2人は壁にもたれかかりながら地べたへと座り込む。先に口を開いたのはアラムだった。


「……なぁ、やっぱり思い過ごしだったのかもな。さすがに他とは違って厳重そうだし、ここに入る方法なんかないんじゃないか? 」

「そうだな。とりあえず、代表会議で伝えればいいだろ。【ミザルの湯】に空いた謎の大穴のこと。

 アーサーのことは隠して、あくまで原因不明の地面の陥没ってことにすりゃいい。それで各ドームに注意喚起と再度の点検を要求する」


 他にいい手立てもない。アラムもリオンの意見には異論がないようで深く頷く。しかしとりあえずアラムは出来ることはやっておきたいらしく、一度壁の内側も見て回りながら、アラムたちが泊まる別荘の方へと戻ることにした。




 2人は立ち上がってとぼとぼと一番近くにあった壁の入り口の方へと向かう。壁の内側に入ろうとした時、壁に備えつけられていたスピーカーからガイド音声が鳴り響き、2人が立っていた黒い地面が一部点灯し始めた。音声に従って近くを歩いていた人々が点灯している道を避けるように動き始めたので、アラムとリオンもそれに倣い光る地面から少し離れたところへ走って移動する。


 2人は人混みの中から光る地面の方を覗き込む。やがてその道の上をやってきたのは白いケービロイドの隊列だった。彼等はその光る地面に誘導されるようにして勢いよく壁の中へと入っていった。リオンはその隊列が負傷した人間や苦しんでいる人間を運んでいるのを見逃さなかった。

 



「この壁の中全部が大きな病院だったのか」 

「ちょっと待って、確か昔習ったような……どうやらそうらしいな。惑星リバイブにある唯一の大型治療施設【ホスピタルウォール】だ。リバイブで出た怪我人や病人は必ずここへ集められるんだ。 


 壁の周りにいくつも入口があったろ? あの入口の両脇に扉があって、特別なプログラムを施された白いケービロイドたちに解析された怪我人や重病患者はその症状や深刻さによって振り分けられる。そしてケービロイドの報告を受けた【ホスピタルウォール】の通信室は、ドーム独自の機能である光る床によって彼らを誘導し、それぞれの治療に必要な入り口へと運ばれていくってわけさ」



 白いケービロイドの隊列が怪我人を連れたまま扉の中へと消えていくと地面の誘導ランプが消える。そうすると道を空けていた人々はまるで何事もなかったかのように歩き出した。

 得意気な顔で授業で使っていた端末資料を掲げているアラムとは裏腹にリオンは下を向いたまま、感情を抑えるように静かに話しかける。

 

「ってことはよぉ、アラム。……壁の外側はどの入口にでも誘導できるように通り道になる地面が光るような仕掛けになってるんだな? 」


「ん? ケービロイド達は普段はこのドームの警備のために散開してるから、壁の外側だけじゃなくこのドームの地面は全部誘導のために……」


 そこまでいってアラムはリオンのこちらを睨むような視線に気づき滝のように汗が流れ始める。リオンは視線を外さないまま詰め寄ってくると、アラムの顔面に強烈なチョップを叩き込む。


「ぎゃあっ!! り、リオンてめぇ何すんだよ! 」

「お前、その仕組みがあるならドームの地面に穴なんかある訳ないじゃん! そんな大事な事授業で習ってんなら先言えよお前! ってか二度と忘れんな、ばか! 」


 「いやー、ほんと申し訳ない。でもまぁよかったよね、後は地面ばっか見てなくても純粋に観光できるしさ。よかったよかった、ハハッ! 」


 得したと言わんばかりに声を上げて笑うアラムを見てリオンはがっくりと肩を落とす。アラムは壁にもたれかかると、続けて喋り出す。


「一つ思ったんだけどさ、【ミザルの湯】の地下室に空いた穴は確かゼルの含まれている温泉をまるごと盗むためだったんだよな。となると、そのゼルを使って何をしようとしてるかが分かれば自然と次の穴の場所も予想できるんじゃないかな。あ、もっとゼルが必要って可能性もあり得るか」


 アラムのいうことは最もだ。しかしアーサーに関する多くの記憶が封じられているリオンでは、その答えに辿り着くことは到底できない。

 しかし、きっと惑星リバイブの人間にとって脅威になる思想である確率は高いだろうとリオンは考えていた。ドウクツが戦争を起こした人間という種族を嫌っていたからだ。彼が賛同し手を貸すということは、つまりそういうことなのかもしれない。

 迫り来る危険を予感し、リオンはアラムに再度確認する。


「なぁ、やっぱりまだアーサーの事は公表しないつもりなのか? 」


「そうだな……やっぱり今はまだ言わない方がいいと思う。大丈夫だって、心配しなくたって【ホーム】の話は明日のうちに俺が説得できる方法を考えておくよ。とにかく今日のところは見学だ、早く中に行こうぜ」



 そういうとアラムは【ホスピタルウォール】の中へ向かって歩き出した。リオンも黙ったまま、その後に続いて中へと歩いていく。

 地区代表会議が行われる惑星庁、ドーム内の情報を制御し発信する放送局、惑星リバイブで産まれたすべての国民の遺伝子を冷凍保管する遺伝子バンクなどの建物を外から見学すると、2人はひとまず別荘へと戻った。



 

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