85 アラムの博物館見学
あの宇宙船もそうだが、この展示フロアにあるものは【ワイズオウル】学長のコウゾウが率いるアース考古学の惑星リバイブ探索チームによって発見されたものが多いらしい。
アラムが同行した遠征隊が発掘した、アースからやってきた謎のカプセルも展示されていた。これはもちろんヨシノが入っていたものだ。学長がヨシノの外側だけを博物館に寄贈したのだ。
カプセルの他にも、この場所に展示されているアースの遺物のほとんどは彼の行った遠征で発見されたものだ。
しかしあの薄い青色の箱をアラムは見た事がなかった。恐らく自分が参加するより前の遠征で発見されたものなのだろう。それが何なのか気になりつつも、アラムはリオンの後を追いかけた。
彼らは人混みをかき分けながら、発掘品の展示ゾーンから右の通路を進む。先にあるのは【リトルアースゾーン】と名付けられたVR体験施設だ。ここでは超小型アンドロイドの視点になって、アースに存在したいくつかの環境下を自由に歩き回る事が出来るらしかった。
これらのアースに関する情報や資料も【ワイズオウル超高等学院】から提供されたものであり、それらをカゲツ率いる【メカニカルフォックス】の精鋭達によってバーチャル世界に再現したものになる。
部屋のほとんどを埋め尽くす筐体に映し出されている広大なバーチャルマップの上では、他の来場者達が操縦する小さなアンドロイドがちょこちょこと走り回っているのが見える。
「これこれ、こういうのだよ、俺が見たかったのは! 惑星リバイブにも面白いものあるじゃんか、ワクワクすんなぁ! 」
「確かにこれはすごいな! しかしアースは広いな、こうやってみるとアースは海と砂漠が多いんだな! 」
「ああ、他にも雪山とかジャングルとか綺麗な湖とか、アラムが見た事ない景色がいっぱいあるぜ」
「ヨシノの桜が観れるスポットとかもあるのかなー! くぅー、早く俺も乗りたい! 」
広大なマップの周りをぐるぐると歩き回りながら、景色を指差して盛り上がる2人にジュノが恐る恐る声をかける。
「あのー。2人とも、これ乗るでありますですか? これ確か予約制でありますですよ。今からだと流石に厳しいのでは……」
2人はジュノの発言に、慌てて展示室中を見渡す。小さなアンドロイドを操作するための、壁に備え付けられたカプセルはどれも人が入っている。
展示室内の壁掛けのディスプレイには一週間待ちの文字が表示されている。2人は何度も目を擦りディスプレイを見直すが、何度確認してもその数字が変わることはなかった。
「ここまできてそりゃないだろ……」
「まぁ、仕方ないだろ。俺達はマップ眺めるだけで満足するしかない。ひとまず残りのエリアも見に行ってみよう」
残った2つのエリアのうち、一つはデータ資料館だった。学長が使っているような電子資料が棚にぎっしりと並べられており、【ワイズオウル超高等学院】でも読んだことのない資料も幾つか存在した。
最後の一つはアースで暮らしていた自分達の祖先の衣食住をリバイブの技術で再現したエリアだった。アースには自然界にゼルのような万能なものはなかったが、それでも自然を利用した技術や自然を改良し育てて自分達の生活に活かしていたらしかった。
ここにはフードコートもあり、アース食の風味を再現したゼルの食事も幾つか味わうことができた。この星に受け継がれ浸透しているもの以外にも、独特な味や匂いのする奇天烈な料理が幾つもあったらしい。
「うぉっ、苦っ!! このピーマーンとかいう食べ物、苦すぎる! こんなもの食べてたのかよ、俺らの祖先は」
「そうでありますですか? 意外といけるでありますですよ。こっちのゴーヤーァもいけるでありますです」
「お、ほんとか? …って苦っ、苦いじゃんか! 苦いもの大好きなのか、アースの人達は!? …ってあれ、リオンどこ行った? 」
辺りを見渡すが人混みの中にリオンの姿は見当たらない。苦味を堪えながらアラムはジュノと顔を見合わせ、他のエリアへと走り始めた。




