83 「すげぇぇぇぇぇっ! 」
この博物館に到着する直前までは抵抗する気力もないほどに疲れ切っていたアラムだったが、博物館の敷地に入るやいなや目の前に現れたその光景にたちまち心を奪われる。
「……すげえぇぇぇぇぇっ! なんなんだよこれ! 信じられない量の水がすごい音を立てながら流れ落ちてる! おいおい、なんて迫力なんだよ……リオン、これもアースの景色なのかよ! 」
博物館の外周をぐるりと囲むようにして、自分の身長よりも遥かに高い位置から大きな音を立てて降り注いでは飛沫上げる水の流れ。ホログラムで再現されたものではあるが、それでもアラムは人生で初めてみる巨大な滝の圧倒的な迫力に思わず疲れを忘れて叫ぶ。リオンも腕を組み嬉しそうにその光景を眺めながら冷静に分析している。
「そうだぜ、アースにはこんな景色があった。そういやドームの外に出た時も、この惑星は岩だらけでこういうのなかったな。水も植物も高低差もあんまりないこの惑星じゃ、この博物館でしか見られない光景ってわけか……それにしてもよく出来てるな、なかなかの再現度だぜ。このエリアだけ他より少し涼しいのはより臨場感を出すためか」
「ちょっと、リオン! そういう分析が一番ムード崩すから! 俺らは目の前のすげぇぇぇぇ景色にただすげぇぇぇぇぇって言ってりゃいいんだよっ! 」
「あーあー、うるせえなぁ。アース馬鹿のアラムにはわかんねえよな、科学者の端くれの俺としてはアースの絶景をこのクオリティで再現する技術の凄さにこそ痺れるってもんなんだよ」
門の前で大声で言い争う二人の後ろから聞いたことのある声が聞こえてくる。
「そこのお二人、喧嘩するなら外でお願いしますです。この場所は……って、あれ? お二人は確か……」
二人は声のする方を振り向くと、そこにいたのはトレインで挨拶にきた【メカニカルフォックス】牧場区の地区代表、ジュノの姿だった。
「ジュノじゃないか。もしかしてジュノも……アース好きなのか!? 」
「いや、こいつは【メカニカルフォックス】の地区代表なんだぜ。言うまでもなく科学技術の研究だろ」
二人は相変わらず睨み合いを続けながら、顔やら服やらを掴み合っているジュノは二人を頑張って引き離すと、二人に言い聞かせる。
「2人共、アースの歴史もゼルの科学も両方楽しまなきゃ損でありますです。どちらかを選んで楽しむくらいなら、両方味わえばいいのでありますです。
知らない事を貪欲に追求し、惑星リバイブの未来に活きる新しい何かを生み出す。それがオイラたち地区代表候補のすべきことでありますです」
ジュノの言うことにアラムもリオンも納得したようで、お互い顔を見合わせ驚いたように呟いた。
「おお……このチビ、すごく大人だ」
「確かに、ジュノの言うとおりかもしれないな……
(俺は地区代表になんかなるつもりはないけどね)」
ジュノは館内のパンフレットを取り出すと、さっきまでの威勢の良さが嘘のように恥ずかしがりながら二人の方へやってきた。
「あの、えと……オイラ、博物館の館内図をもらってきたでありますです。だから……二人とも、もしよかったらオイラと一緒に見学してほしいでありますです」




