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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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78 暴走の理由

「な……なんだと…!? なんで歌姫が【ミザルの湯】に!? ずっっっるいぞお前達ばっか! 俺もぉ……会いたかったぁぁぁっ! わぁぁぁぁあぁ」


 移動中のトレイン内で突然大騒ぎし始めたアラムに向かってコウゾウが慌てて注意する。リオンもかなり嫌そうな顔で両耳を塞ぐ。


「こ、こら! 止めなさい、アラム! いくら貸し切り車両と言えど、隣の車両には他の地区代表たちが乗っているんだぞ、恥ずかしいわ! 」

「ご、ごめん学長。ちょっと待って、今話しかけないで……それでなんで歌姫が【ミザルの湯】にいるんだよ!? 」


 睨みつけてくる学長を手で制止しながらアラムは小声で通話を再開する。電話の相手はもちろんシェンザーだ。【ミザルの湯】の運営を完全にスタッフに託したシェンザー達は入れ替わりで【ワイズオウル】へと戻っていたため、数日前にあった一連の出来事を伝えるために連絡してきたのだ。


『いや、あの……歌姫が来たことは一旦置いておいて、僕が話したいのはアーサー達の異変のことなんだよ。リオンに聞いたら何か分からないかなと思ってさ』


 アラムは歌姫の話も聞きたいところを我慢して、震える手で隣りに座って耳を抑えていたリオンにしぶしぶ携帯電話を渡す。

 リオンはいくつか言葉を交わしてからシェンザーの話を聞き始めると少しの間黙り込んで考えてからゆっくり話し始めた。


「多分いたな。確か……人が恐れた自然の力、【自然災害】の記憶を護るアーサーがいたような気がする。でもどんなやつかは分かんない、他のアーサーのことはヨシノのほうが詳しいんだよな……確かアーサーの持ってるアースの記憶に強制接続して自分の中の【自然災害】の記憶を再現するんだ」


『サバクがやってた砂嵐の発生原理と同じって事だよね。じゃあ、あの場所にいた誰か……もしくはドウクツかその仲間か』


「ああ。ただ【自然災害】の記憶は意図的ではなく突発的に発動するんだ」

『突発的って、どういうこと? 』


「そいつは自分の意志で能力を制御している訳じゃない。というか、本人が発動条件を把握していないんだ。距離を縮めるのか、接触しなければならないのか、視認が必要なのか……それ以外の条件があるのか、とかな。

 本人がそれを乱用できてしまうとアーサー達が自分の意志に関係なく暴れ回ることになるからな、それを避けるための措置だと思う」


『そんな危険があるのに、君たちを作った博士はその記憶を持ったアーサーを産み出したのか……。とにかくあの場にいた人たちだけにアーサーの可能性があるって訳でもないんだね』


 「そういうことになるね。それから、さっき言ってたドウクツは関係ないよ。あいつは能力を自分で発動できたから」


『とりあえず近くを探すところからだね。……リオンに連絡してよかったよ。コンサートの日に僕らももう一度【パラダイスモンキー】を調べてみるよ。またなにかわかったら連絡するね』


「ああ、とはいえこれから代表会議が終わるまでの数日間は連絡取れないかもしれないけど」


『そうか……明後日が勝負だね。二人ならきっとサバクを助けられると僕は信じてるよ。それじゃあ、僕も講義があるからいくよ。会議が終わったらまた話そう』


 電話が切れると、リオンは無言で携帯を放り投げる。アラムは慌てて受け止めると、文句を投げかけた。 


「おいおい、危ないなー! 大事なデータも色々入ってるんだからもっと丁重に扱ってくれよ。 ……もしかして、当分ヨシノに会えないから拗ねてんの? 心配しなくても大丈夫だよ、シェンザーやユーシア達も他のアーサーも一緒なんだからさ」 


「ち、違う……そんなわけないだろ! そうじゃなくてよ……なんで到着までにこんな時間かかってんの……。寄り道しすぎだろこのトレイン……もう何時間走ってんだよ全く」


「そりゃ仕方ないでしょー、全てのドームに順に立ち寄って代表全員が乗り込む車両なんだから」


 地区代表会議など特別な招集がある際は、全ての地区を順に回る代表専用の特別車両で代表たちを迎えるのだ。しかし警備体制が通常のトレインよりも厳重である事を除けば何ら他のトレインとは変わりなく、特別なサービスを受けられるというわけでもない。

 

 リオンは最初貸し切り状態のトレインに大満足していた。何しろ毎度ドーム間の移動の際には簡単に押し潰されてしまいそうなほどの混雑だ。リオンも当然それが嫌いだったわけで、ゆったりとくつろいで座れることに大満足だったのだ。


 しかし、リオンはこれほど長時間トレインに乗り続けることを知らなかった。幾度も上下に揺れる度、彼の感覚センサーに少しずつ蓄積された違和感はやがてちょっとした気分の悪さに変わっていた。


「……あれか、乗り物酔いってやつか。いやー、そうか! 大変だなお前も」

「……さっき感覚センサーを一時的に全部オフにしたからマシにはなってきたけど。何か気が紛れることやって」

「そんな機能もあんのか、アーサー! すげえな! 」


 なぜか感激しているアラムの大声も意に介さず、リオンは目を閉じて腕を組みうつむいてしまった。アラムは学長の注意を聞き流しつつリオンの無茶振りをどうすればいいか少し考え込む。やがてアラムはいい案を一つ思いつく。


「……そうだ、せっかくだから俺が6つのドームについて説明してやるよ。リオンは行ったことないドームもあることだし、何より知っておいた方がいいでしょ」




 

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