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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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68 父と息子の取り引き

「久しぶりだな、アラム。よく来てくれた。まぁ……とりあえずそこに座ってくれ」


 アラムは【ワイズオウル】地区へと帰り着いた次の日、【ワイズオウル超高等学院】の学長室へと呼び出されていた。アラムとリオンが中に入るといつものように学長コウゾウが座っており、秘書であり【氷河】の記憶を護るアーサー、ヒョウガがすぐ側に立っていた。

 アラムは促された通りに、いつものソファへと腰掛ける。ヒョウガが地区代表会議に関する書類を持って目の前のテーブルへと並べていく。


「こちら、地区代表の定例会議参加に関する注意事項と守秘義務に関する書類です。一度目を通して問題がなければサインをお願いします」

「あれ? ヒョウガ……だよな。口調が丁寧なだけで全然イメージが違うな」


 ヒョウガは時々アーサー達に会いに研究所にやってくるのだが、そういう時は荒い口調の自然体モードなので丁寧な口調で喋るヒョウガに会うのは久々だ。アラムは改めて彼の柔軟な適応能力に関心した。


「代表会議の書類……ってことは、俺も参加していいってことだよな? その会議に」

「うむ。今回は特例として参加が許可された。というか……私が息子を参加させたいと言ったら他の代表達もそれぞれ時期代表候補を連れてくるという流れになってな」


 アラムは驚きのあまり、書類に落としていた視線を学長に向けその申し訳なそうな顔を凝視したまま硬直した。


「ちょ……ちょっと待て。俺はそんなものになる気はないぞ。俺の今の目標はアース復活であって、この惑星リバイブに縛りつけられちゃ復活の瞬間をこの目で見届けられないだろ」


「それはわかっている。ただ、お前の無理難題を通すために私も苦労しているのだよ。今回だけでも地区代表の息子として、それらしい振る舞いをしてくれ。それがお前の夢の為だ」


 現在の地区代表に加えて、次の世代の地区代表候補たちが集結する。惑星リバイブの未来を担う若者たちがどんな人間なのかはわからないが、確かに自分の印象が悪ければ提案も受け入れてもらいにくくなる。

 予定とは少し違うが、サバクを連れ戻すためには四の五の言っていられない。アラムは観念したように肩を落としヒョウガに言った。


「くそっ……ヒョウガ。俺に1からマナーを教えてくれ」 

「いいですけど……1つ質問が。アラムの目的が砂漠のアーサー・サバクの奪還であるのならば貴方が現地に向かい、連れ戻せば良いのでは? 」


 ヒョウガはアラムの前に腰をかがめて静かに提案するが、学長が声を上げて否定する。


「駄目だ、リバイブの法律ではあの【牢獄】から何人たりとも他のドームへと連れ出すことは許されていない。悪人は流刑、それ以上でもそれ以下でもない。ルールを変えない限りは外へ出ることは許されない。この惑星全てを敵に回してしまっては、そもそもアーサーたちの目的さえも達成できないだろう。皆を納得させること、そうでなければ外に出る方法はない」 


 アラムは頭を抱えながらも、やるしかないと覚悟を決めてヒョウガの方を見つめる。ヒョウガも真剣な面持ちでアラムの向かいに座り、講義を始めた。

 今まで黙って彼らのやり取りを見ていたリオンはそっと立ち上がり学長の隣へ歩いていき、こっそりと話しかけた。



「よくやるね、あんたの息子も」

「君は、確かリオンだったね……最後のアーサーという、他のアーサー達とは違う特別なアーサー」 

 

 リオンは学長の言葉には全く興味がなかったらしく、返答もせずに満面の笑顔で言った。


「ねえ、俺も連れて行ってね。代表会議には参加できなくても、他のアーサーの手掛かりを探したりもしたいからさ」

「全く……息子がもう一人増えたような気分だよ」

 





 一方、【ミザルの湯】のシェンザーとユーシアは敷地内の点検と整備をしながら巡回していた。週に一度、休館日にはこうやってシェンザーとリオンが巡回していたのだが今日はリオンがいないのでユーシアが共に行動していた。


 スイやキオン、フゥはというと整備直後の【ブーストボード】に興じていた。普段の営業中はこの【ブーストボード】のブースは大混雑しているため、彼らに遊ぶ隙などない。だからこそ点検を兼ねた試運転ができるこのチャンスは大いに遊び尽くすことにしているのだ。


「いっつもこんなに時間をかけて念入りに点検しているんッスね。やっぱりすごい人ッスね、シェンザーさんは」


「いやいや、ユーシアだってすごいじゃない。君の身体能力、僕には羨ましいけどな。

 それに点検も大分楽になったんだよ。今日なんか職員の人達が分担して敷地内を走り回っているから、最初の頃リオンと2人でやっていた点検の2割くらい」


「ひぇえ……これだけやって2割なんッスか。もう恐ろしいッスよ、お二人とも」


 二人は会話しながらオアシスの水質点検と砂風呂の温度管理、汚れた砂の排出機構の点検を手早く終わらせていく。

 全てが終わった頃、時刻は12時頃になっていた。オアシスの付近に二人並んで座り昼食をとっていると、目の前で異変が起きる。


「……ねえ、ユーシア。あの人誰? 」



 

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