67 アラムとヨシノの過去
「ちょうど俺たちがチームから外されることが決まった頃は燃料、食料の補充や移動車両の整備なんかで一度工業特区【メカニカルフォックス】に立ち寄る時期だったんだ。その時に俺ら2人は積荷と一緒に降ろされる予定になった。
アスカが作戦を実行したのはドームへの到着直前……アスカは誰にも気づかれないようにこっそりとあの日発掘されたカプセルが保管されている部屋へと侵入し、カプセルの外壁に刻まれた暗号を解き始めた。研究者たちはモールス信号を使いこなせないからカプセルを開けることは不可能、中身を取り出してまた閉めておけば二度と開くことはない。それがアスカの計画だった。
俺は部屋からそいつが出ていくのを確認すると学長室へ行ったんだ、あいつの悪事を止めるために。暗号解読からあのカプセルが開くまでどれだけの時間がかかるのかが勝負の分かれ目だった。
俺と学長は護衛用のケービロイドを一機連れて保管室に急いだ。アスカは既にヨシノを抱きかかえていた。リオンの時と同じで、カプセルが開いた直後は眠っていたけどな。
アスカもケービロイドの登場は予定外だった。というか、俺がこんな行動に出ると予想もしていなかったらしい。それからのアスカは呆気ないほど簡単に捕らえられた。俺がドームで降ろされた日、あいつは流刑になった。……もしかしたらサバクとは向こうで会うかもしれないな」
リオンの目には、アラムがそのアスカという人物を憎んでいるようにも懐かしんでいるようにも見えた。
「……それで、ヨシノはどうなったんだよ。起きたときは一緒だったのか? 」
不思議な表情のまま静かになってしまったアラムに痺れを切らして尋ねる。リオンの本題はヨシノとの出会いの話だ。アラムもそれに気づいたらしく笑いながら平謝りすると、ベッドに寝転がり話を続ける。
「ヨシノは俺と一緒に学長に連れられて【ワイズオウル】へと戻ってきた。モールス信号の話ももう一度ちゃんと聞いてくれて、そこで初めて俺はヒョウガに合わされて話をしたんだ。その時はまだヨシノは眠ったまま。アーサーの存在、その能力と護っている記憶、その役割……ヒョウガはそれを俺に教えてくれた。
俺とヒョウガのやり取りを見て、学長はヨシノのことを俺に任せてくれることになった。研究チームに連れ帰るよりも成果が上がりそうだったからだ。
ヨシノが目覚めたのは俺が授業に復帰してから数日経った頃だ。ヨシノも最初は怯えていたが、徐々に自分のことやアースのことを教えてくれるようになった。
ヨシノの桜吹雪を初めて見たときは本当に感動したよ。それまでは授業や書物でしか見たことがなかったから、こんな美しいものがアースには溢れていたんだって思うとどうしてもそこに行ってみたくなった。それにヨシノの大好きだった世界を見てみたなった。
まぁ俺がヨシノの手伝いを始めたのはそういう経緯があるってこと。お前らは使命のため、俺は自分自身の夢のためにアースを復活させるんだ。シェンザーやユーシアも、目標はそれぞれ違ってもおなじ目的で繋がっている仲間だ。だからあいつらのことも、アーサーたちも信用できる」
リオンは何故か、ヨシノに頬を叩かれたあの日を思い出していた。アラムは信頼していた友に裏切られ、それでもアースのためと自分に言い聞かせて皆を信じる事を選んだのだ。アラムはそういうやつだ。きっとそのアスカという人間のことも、アラムはまだ信じているのだろう。傷ついた心を納得させる理由を幾つも重ねながら。




