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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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65 リバイブの歌姫

「おい……おいおいおい! 本当に知らないのかよお前ら! どこからともなくある日突然現れてから、惑星リバイブでその名前を聞かない日は無いと言っても過言じゃないぞ。それが全く耳に入らないなんてことあるか!? 」


 大げさなほど驚き砂の地面に倒れ込むアラムに、シェンザーとユーシアは何をそんなに驚いているのかとでも言いたげな顔で頷く。 


「そんなこと言われてもな……仕事のこととか、フゥやアーサーのことばっかりだったし」

「自分も、最近リバイブ留学に来たばっかりッスからね。それで、どんな人なんッスか? 」


 アラムは仕方ないと溜息を吐き説明を始める。ミスズもどうやら歌姫のファンらしく、色々な映像資料などを小さな端末で二人の方へ見せる。

 

「いいか。歌姫サーズ・デイはどこからかこの惑星リバイブに現れ、たった数分の路上ライブで一晩にして全てのドームにその名が知れ渡ったんだ。

 彼女の歌声は美しく透き通り、それでいて力強く俺たちの心を震わせ響かせるのさ。聞く人々を片っ端から魅了する、まさに魔力だよ。誰もが認める惑星リバイブ唯一無二の美声だぜ。

 サーズ・デイの楽曲もなんだかこの惑星にはあまり類を見ない感じなんだ。古めかしさというか懐かしさというか、それでいてとても斬新で新鮮なんだよ」


「これが彼女の前回のコンサート映像ですよぉ。パパが彼女の才能に惚れ込んで、無理を言って月に1度だけ【パラダイスモンキー】役所地下の大ホールで彼女のコンサートが開催されるんですぅ。ホント、素敵なんですから。お二人もすぐにファンになると思いますぅ! 」


 アラムとミスズの熱量からサーズ・デイの凄さがなんとなくわかる気がした。シェンザーもユーシアもアラムの口からアース以外の話なんて全く聞いたことがなかったので、単純アース馬鹿のアラムがここまでの愛を見せる歌姫にとても興味が湧いてきていた。

 アラムは砂の上に寝転びにやにやと手に持ったチケットを眺めていたが、チケットの隅に書かれていた一文を見て慌てて飛び起きる。そして携帯電話のメモに書いてあったサバク奪還作戦のページを凝視していたが、ある項目を見つけるとたちまちアラムの顔は絶望の色に染まっていく。


「おい、嘘だろ……! チケットに書かれてるこのコンサートの日付……地区代表会議と丸かぶりじゃねえか!! 」


 そのまま地面に膝をつきがっくりと項垂れる。

 


「そうなのか。じゃあアラムは観に行けないね」

「止めてくれ、シェンザー……! そんな冷静に残酷な事実を突きつけるな! アースではお前みたいなやつを鬼と言うんだぞ」


 アラムは涙ぐみながら、微笑むシェンザーの両肩を掴み砂嵐が起こりそうなほど激しく揺さぶる。シェンザーは抵抗せずにニコニコしている。かと思えば、アラムは突然何かを思いついたように笑顔になる。

  

「あ! もしかすると……コンサート見てから会議でも間に合うんじゃねえか!? よし、やっぱりコンサート見てから帰……」


「何を大騒ぎしてるのかと思えば。アホか、お前は。とっとと帰るよ……暴れるならヨシノに怒ってもらうから」

 

 いつの間にか背後から近づいていたリオンがアラムの襟首を掴む。ヨシノとリオンはいち早く荷物をまとめて研究所へ帰る準備をしていたようだ。


「とりあえず、俺たち次のトレインで研究所に向かうよ」

「うん、皆気をつけてね。僕も授業があるから、ここの管理の引き継ぎをしたら一度合流するよ」


 軽く挨拶を済ませると、リオンはアラムの手からチケットを引き抜く。アラムの悲痛な声を背に受け、ミスズに近寄るとそのチケットを固く握らせる。 


「これ、代わりに行きなよ。使わないのも勿体無いしさ」 


「え、えと……いいんですかね」

「いいよ、大丈夫。迷惑かけたのは俺達アーサーの方だしさ……それじゃ、またな」


 ミスズはリオンの背後で崩れ落ちるアラムに気を遣うようにちらちらと目を向ける。サバクが迷惑をかけたことに責任を感じているのか、リオンなりの不器用な気遣いだろう。

 嫌がるアラムを引っ張るようにしてリオンとヨシノは歩き出す。シェンザーとユーシアはゲートの向こうに二人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

 



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