63 これからのこと
翌日、エンノスケの指示により【ホーム】へ向かうトレインが娯楽特区【パラダイスモンキー】へと到着した。近年、犯罪者を【ホーム】へ収容する工程のほとんどはその地区に配備されているケービロイド達によって行われており、サバクも例外なくケービロイド達の手によって【ホーム】へと連行されることとなった。
エンノスケはサバクの手に小さなゼルの塊を置くと、たちまち形状が変化していき手錠のような形状になった。手錠をかけられたサバクは俯いたまま、群衆が見守る中を連れられて【ホーム】行きのため特注で作られた黒のトレインに乗せられた。深緑のフードを深く被っており、その表情は全く見えない。
アラムたちは遠くからその光景を眺めていた。ヨシノやリオンを始めとするアーサー達には今朝サバクから説明をしたらしい。皆我慢するように、連れて行かれるサバクを見つめ沈黙していた。
アラムたちやミスズも同じ感情だった。一度はぶつかり合ったし、ミスズに至っては大事なこの場所を荒らされた怒りもあったのだが、それでもこの数日を共に戦った仲間であることは事実だった。
サバクがトレインに乗りこむ直前にこちらを見て微笑んだような気がした。
【ミザルの湯】のサンディナフェアの活気とは対照的に、オアシス付近に陣取り昼食をとるアラムたちは重苦しい空気に包まれていた。ミスズが気を遣うように笑いながら話を始める。
「あ……えと……う、売れ行きはとても好調ですよぉ! 特に砂風呂なんて皆さんにとても人気でぇ……その……」
「う、うん……。凄く良い滑り出しだよね! これならサンディナの魅力も伝わりそうだし良かったよね。僕が学院での授業に出払ってる時も順調に営業できているみたいだし、かなりいい調子だよ」
シェンザーが同調するとユーシアやキオン、スイが頷く。
「ほんと、アタイらもこんなにはしゃいだのは久々だよ。ずっとあってもいいんじゃないかい? この施設は」
「そういう訳にも行きませんよぉ。中の掃除も貯水も進んでますしぃ、余った物品やこの場所の技術をサンディナさんの観光業にお譲りする約束ですもん」
「そうなんだ……確かサンディナって、ユーシアの住んでたところ? 」
「そうッス。こんなに生まれ故郷の文化を楽しんでもらえると嬉しいっスよね!
ミスズさん、サンディナを代表してお礼を言わせていただきますッス。お陰でサンディナの皆の生活も少しでも豊かになるかもしれないッス」
「そんな、お礼なら私達のほうがいわせてくださいよぉ! 皆さんのお陰で出来たことですし、何よりアラムさんのアイデアのおかげじゃないですかぁ! 」
そう言うと皆はアラムの方を向く。アラムは俯き黙ったまま、屋台で購入したサンディナの郷土料理を口に運んでいた。返答をしないアラムに皆黙り込んでしまう。流石にその態度が気に入らなかったのかリオンがアラムの胸ぐらをつかむ。
「ちょっ、突然なんだお前……料理落っことすところだったじゃねえか」
「あのなぁ……辛いのはみんな同じなんだよ! サバクのことお前だけいつまで引きずってるつもりだ、このバカ考古学者」
ユーシア達が慌てて仲裁に入るが、リオンは誰かが抑えておかなければいつでもアラムに飛びかかりそうなほどの剣幕だ。
「いや……辛くない、と言ったら嘘になるけどさ。今は考えてたんだよ、これからのこと」
「なに……? 何の話だよ」
「いやだからさ、サバク奪還の作戦だよ」
アラムのその言葉を聞いてヨシノが嬉しそうに立ち上がる。
「本当なの? アラム。ヨシノ、何でも手伝うの! 」
「いや……今回は俺の出番だから大丈夫だよ。まぁ、そう簡単なことじゃないんだけどさ」
「一体どういう事ッスか? 説明お願いしますッス! 」
皆の視線がアラムに注目する。アラムはリオンに掴まれて乱れた服を簡単に手直し、座ってまた料理を頬張りながら喋りはじめる。
「サバクの話を聞いたとき、エンノスケさんがミスズに言ってた地区代表会議ってあるだろ? あれ、うちの親父と秘書であるヒョウガも参加することになるはずだ。そこに俺も同席できるように交渉してみようと思う」




