60 エンノスケの視察(2)
「これだけいろいろ楽しんでまだ目玉の砂風呂が残ってやがるとはよぉ……アースもサンディナもなかなかやるじゃねえかよ! 」
今のところ盛り上がりの大半はここ【ミザルの湯】で考案されシェンザーによって開発されたた【ブーストボード】なのだが、エンノスケは気づいていないので言わないことにした。とは言えエンノスケの言う通り、サンディナの文化や砂風呂はこれからじっくり堪能してもらうことにしよう。
砂風呂ゾーンは敷地の奥に設置されている。スイたちが産み出した水で溢れんばかりに満たされたオアシスが照明の光に反射し輝きながら、リゾートの奥地へと誘うように人々の心を掴む。自分の重みで少し沈む砂の足場のちょうどよい熱さや踏み心地も惑星リバイブの人々にとっては新感覚の心地よさだ。それを味わうためにわざわざ裸足で歩く職員達も出始めた。
キオンの助けを得て爆発的に気温を上昇させた暑い空気が充満するこの敷地内で、砂風呂エリアは最も暑い。アラムはまたシェンザーを呼び、彼がここに用いた工夫を説明をしてもらう。
「このエリアの地下には僕が作った砂を温泉へと戻す装置が稼働しています。この辺りにある砂は徐々に効能を含んだお湯へと戻っていき一時的にオアシスの水の入れ替えのために冷やされるものと、地下タンクへ戻り蓄えられるものに分かれていくようになっています。
さらに温泉は砂へと染み込んでいきアース同様に温泉の効能が砂風呂にも現れるんです。定期的にこの砂も装置によって入れ替えられるため清潔さも保てます」
「ううむ……なるほど、よく考えられとるな。それで、アラムよ……これも体験できるんだよな? 」
「ええ、もちろん!早速、こちらに着替えてください……皆さんも順番にどうぞ」
エンノスケを筆頭に皆が砂風呂の方へと入っていく。砂の上に寝転び、身体を包み込むように砂を覆い被せていく。
「いいな……身体から汗が止まらないのだがそれが不快ではない。芯まで暖かく……砂の重みさえも心地よい」
砂の中から覗くエンノスケの顔はとても満足そうな表情だった。他の職員たちにもかなり好評だったようだ。
アラム達の誘導で皆オアシスの方へと向かう。砂はあのオアシスで洗い流すのだ。砂風呂やこの敷地の気温で火照った身体に冷たい水が染み渡る。身体から落ちていく砂を眺めて、身も心も清められるような快感に満たされる。
その後職員はそれぞれ敷地内でまだ体験していないアクティビティへと向かい始めた。民族衣装を試して見る者、サンディナの郷土料理を味わう者、家族のための土産を選ぶ者、ブーストボードを体験するために走り出す者……。
「あいつらが仕事を放棄して遊び始めるほどとは……。さすがにこりゃあ、成功の予感しかねぇなぁ。なぁ、小僧よ。面白ぇこと考えるもんだぜ」
「どうも。とはいえ開発や設営のほとんどは皆の力がなけりゃ出来なかったですよ。これは惑星の垣根を越えて力を合わせたからこそできたもの、俺たちの目標であるアース復活への大きな一歩です」
「……アースの復活か。本当に面白いこと考えやがるな」
エンノスケがニヤニヤとしているのはとても意外だった。この惑星に暮らす人間は例外なく、誰もがアースに無関心なのだと思っていたからだ。というか、なんなら危険だとか忘れるべき過去のような扱いをする人間は少なくないのだ。アラムは少し嬉しくなり、エンノスケに微笑み返した。




