53 アラムが見つけた秘策
「……あ、いた! アラム、こんなところで何してるのさ! 」
いなくなったアラムを探しにそれぞれ敷地内を散り散りに探し始めて数分経った頃、シェンザーが【ミザルの湯】館内1階のロビーに設置されたベンチに座って足をぶらぶらさせていたアラムを見つけて叫ぶ。アラムがいつも携帯している電子ノートをにやにやしながら操作しており、その様子は砂だらけの館内の惨状には到底似つかわしくない。
シェンザーはさすがに怒りをあらわにしながらアラムに近づく。アラムは顔を上げ、ムスッとした顔で近づいてくるシェンザーを見つけたちまち引きつったような表情になる。
「あのー……シェンザーさん? なんでそんなに怒って……」
「なんでじゃないよ! ヨシノやリオンの呼びかけも無視して、どんだけ皆に心配かけたと思ってんのさ! 」
「そ、それはごめん。全く気づかなかった」
「もう……まずはみんなのところへ戻るよ。あとでヨシノにきっちり怒ってもらうからね」
「アラム……ほんとにわかってる? 勝手にどっか行っちゃ駄目なの! 皆心配したの! 」
「すいません……ほんと、もう許してください……」
ヨシノが腕組みをしながら説教を始めてかれこれ数時間が経とうとしている。アラムは砂の地面に頭をめり込ませるように何度も土下座を繰り返している。シェンザーとミスズがヨシノを宥めているが、それでもまだヨシノの怒りは収まりそうになかった。リオンはサバクの拘束を解き、横に並んで座りながらその様子を黙って見ている。サバクは自由になった腕を少し振り回すと怒られているアラムの方を向いてボソリと呟く。
「サバクが……代わりに裁く? 」
「ちょ……突然物騒なこと言うなよ。もう暴れんの禁止だかんな」
「ん……わかったよ」
アラムが何度も頭を下げ、さらには蜜飴をもらってようやくヨシノも機嫌を直した。ヨシノの公開説教タイムが終わるとリオンとシェンザーはまたサバクの調整を再開していた。営業再開に向けて色々なところへ連絡をとっていたミスズも、肩を落としながら戻ってくる。
「やっぱり貯水タンクの修繕とお湯の調達にはすごく時間がかかるみたいですぅ……私、ここの管理を任されて初めてなんですよ、こんなピンチ。一体どうすればいいんですかぁ……」
力なく座り込んで涙を流すミスズにヨシノやフゥが駆け寄って励ます。リオンたちの作業を邪魔しないように砂の上で静かに寝転んでいたアラムは、そんなミスズを見て思い出したように跳ね起きる。
「……思い出した! ミスズ、俺良いアイデア思いついたんだよ! 【ミザルの湯】が復旧するまで営業できる方法を! 」
「ほ……本当ですか? でも……漏れずに残ったお湯は全部合わせてもタンク1つ分もないんですよぉ。それなのに……」
彼女がこれまで培った経験則では、営業ができるまでにこの状況を改善する方法など思いつかない。落ち込むミスズにアラムは自分の携帯を見せつけて笑う。
「それでも大丈夫! 解決するヒントはアースにあったんだ。関係者の人たちに詳しく説明するから一旦皆で区役所に行こうぜ」




