49 砂漠にて、桜舞う
「くっそ……おいサバク、いつまで逃げ続ける気なんだよ! いい加減にしやがれ! 」
アラムは不可解なサバクの行動に苛立ちながら【桜芽刀】を振るい続けるが、その切っ先はどうしてもあと一歩というところで届かない。やはり砂の足場に慣れているサバクにはどうしても有利だ。サバクは足場の悪い砂漠の上を軽やかに飛び回りながら、次々にゼルの球体から小刀を生成してはアラムへと投げ続ける。
アラムも【桜芽刀】のブーストによって、踏ん張りのきかない砂の足場でもかなりの速度で詰め寄ってはいる。それでもサバクには一歩及ばず空を切り、ただ砂を叩きつけるだけだった。
突然、戦況が動いた。虚しく舞い上がる砂煙の中でようやくサバクが立ち止まる。今度は球体から引き抜く砂は小刀ではなく、長い剣のように生成されていく。足場の砂がどんどん吸い込まれていき、やがてサバクの足下にあった砂や、コーティングのために手にあったゼルはすべてサバクの握った剣の周りに吸収されていく。アラムは肩で息をしながらも、嬉しそうに言い放つ。
「ハァ、ハァ……かっこいいじゃないか、その剣。サバク、お前もとうとうやる気になったか。」
「うん……そろそろ、時間切れでしょ? この勝負、サバクの勝ち」
サバクは不気味に笑いながら一気に間合いを詰めて、剣を振りかざす。アラムもブーストによる加速で間合いを詰めながら応戦する。互いの刃がぶつかりあったとき、サバクの表情が明らかに変化する。つばぜり合いの最中、アラムはその変化を見逃さなかった。サバクに向かって大声で叫ぶ。
「……なんで効果がきれないんだって顔してるな。お前、時間を稼いで【ミダレザクラ】の効果切れを狙ってたんだろ」
サバクはアラムの呼びかけには答えない。いや、答えるほど余裕がなかった。
サバクは一つ大きな勘違いをしていた。アラムはまだ【刻印・ミダレザクラ】の能力を使っていない。サバクは知らなかったのだ。【桜芽刀】のブースト加速による一撃と、その最中に舞い散る桜の花びらの立体映像が、ヨシノが舞い散らすアースの桜の花びらにとても良く似ているということを。
「後で謝らなきゃな。使い物にならない技術どころか、アーサーさえも出し抜く最高の技術だぜ……今までの攻撃は、ヨシノの能力を参考にして最高の科学者が創り上げたこの刀の力だ。そんでもって……ここからはアーサーと人間、その力が合わさった新しい強さだ! 」
そう言ってアラムは飴玉を口に含み、一気に噛み砕き飲み込む。アラムとヨシノが呼応するように光り、アラムの身体には桃色の紋様が浮かび上がる。
舞い散るヨシノの花びらが【桜芽刀】が魅せる桜の花びらと混ざり合うように舞い、【ミザルの湯】の敷地を包み込み始める。
「さぁ、いくぜ。これが……惑星の未来をも変える大きな力だ! 」
「う……うわあああああっ! 」
【桜芽刀】のブースト加速、そして【ミダレザクラ】による純粋な身体強化によってぶつかり合っていたサバクの剣を砕き、そのままサバクの右腕を斬る。続けてアラムはブーストで飛び上がると、渾身の蹴りでサバクの身体を吹き飛ばした。
サバクは抗う術もなく吹き飛ばされて建物の壁へと強く衝突する。振動で屋上を埋めるほどだった砂が塊になって雪崩落ちてくる。大量の砂はサバクを覆い隠すようにして大地に積もっていく。その光景を見てアラム達は少しの間立ち尽くしていたが、事の重大さに気づき慌てだした。リオンが早足でアラムに近寄り後頭部を思いっきりひっぱたく。
「痛ってぇ! 」
「この……バカ考古学者! やりすぎだろ、力加減って言葉知らないのか! 」
「す、すまん……みんなとりあえずサバクを探すぞ! 」




