46 アースのための戦い
リオンは眠ったふりをしたまま、これから自分がどうするべきかを考えていた。アーサー同士争っている場合ではない、しかしサバクのやり方には賛同できない。
ヨシノとフゥも暴れ疲れたのか、抵抗も止め黙ってしまった。サバクは未だ眠ったままだ。リオンはゆっくりと身体を起こそうとするが、砂に手をついた時に鳴った微かな音に反応してサバクが目を覚ます。
「……どうしたの? 」
「ん、いや……ちょっと体制変えようとしただけだよ。砂の上で寝るのなんてアースでも経験したことないからさ。なかなか眠れないんだよ」
「ん……そう。だったらこれ……使っていいよ」
サバクは手元にあった白い大きめの布をリオンの寝ていた辺りに広げる。この【ミザルの湯】で貸し出していた大きめのバスタオルだ。やはり、サバクは悪いやつじゃない。リオンはどうにかして彼を止めたいと思った。
「それじゃ……おやすみ」
「……ああ。おやすみ」
それだけ言って眩しく輝き続けるドームの照明の光を遮るようにフードを被ると、装飾品にもたれかかって座ったままの体制でまた眠り始めた。あんなに小さな音にでも反応する強敵を相手に、二人を連れて逃げる算段が思いつかずにいた。リオンはまた横になってぼーっと天井を眺めようとした。
その時、リオンは異変に気づいた。その小さな異変が何を意味するかを理解するまでにそう時間はかからなかった。リオンは身体を動かさないようにしながらその異変をじっと観察した。
数分かけて全てを理解したリオンはゆっくりと立ち上がり、フゥとヨシノの方へと歩いていく。リオンの足音を感じ取ってサバクが目覚める。
「……今度はなに? 」
「……静かに! サバク……今ここで砂嵐できるか? 」
リオンのただならぬ気迫に、サバクも一気に警戒態勢になる。サバクはゆっくりと目を閉じ寝たふりをしながら返事をする。
「うん……その子とは接続済み。いくよ……【断罪の砂嵐】」
サバクはそう言って【断罪の砂嵐】を発動する。数秒経って辺りに強烈な風が砂を巻き上げ吹き乱れる。砂嵐はサバク達を囲むように渦巻いている。余りの強風にヨシノも目を覚ます。リオンはサバクの方を向いて語り始めた。
「誰かくるぞ、気をつけろ。俺は戦えないからこいつらを連れて離れる」
そう言うとリオンはヨシノとフゥの拘束を解きはじめる。ヨシノは自由になった腕でリオンの頭をぽかぽかと殴り始める。
サバクは暴れるヨシノとフゥがリオンの邪魔をしないように縛り直そうと、両手の包帯を高速で伸ばす。しかし、二人の間にフードを被った何者かが割って入る。その影は素早くしゃがみ込み足場にあった焚き火を投げ上げる。
炎は容赦なくサバクの包帯に燃え移っていく。咄嗟に手から包帯を解き、投げ捨てる。
「皆、大丈夫ッスか? 今のうちに早く行くッス」
サンディナの民族衣装に見を包んだフードの男は、日本の包帯を強く引き寄せて地面を蹴る。サバクは思わぬ不意打ちに踏ん張りが聞かず引っ張られるままに接近する。そのまま勢いに任せてフードの男はサバクの腹部を思い切り殴りつけて吹き飛ばした。
「……いっっったいッス! アーサーが鋼鉄で出来てるの忘れてたッス! 」
痛がりながら砂の上を転がるフードの男にリオンは近づいて声をかける。
「やるじゃないか……いいタイミングだぞ、考古学者の弟子1号」
「む……自分にもちゃんとユーシアって名前があるッスよ! いいかげん覚えて欲しいッス! 」
言い争う二人のもとにサバクは起き上がってくる。その眼はリオンを睨んでおり、今にも襲いかかりそうなほどだ。
「……騙したの? リオン」
リオンは一歩前に出るとサバクに向かって自信満々に言い放つ。
「サバク……俺は最後のアーサー、リオンだ」
「最後の……アーサー? 」
「そうだ、俺は最後のアーサー。アース復活の使命を受けたアーサー達がどのような未来を想像し選択するのか、その最終決定を下すのが俺だ。
俺はすべてのアーサーに中立な立場でいなければならない。お前の選択とこの二人の選択、どちらがアースを導くのか……俺はアースのための戦いを最後まで見届けなければならないんだ」
その言葉を聞いたサバクから、先程までの殺気が嘘のように消えていった。ユーシアの目にはサバク姿がや振る舞いどこか申し訳無さそうにさえ見えた。最後のアーサーがそれ程の立場であることが感じられた。
リオンはまた二人の元へと戻ると、再度サバクに向けて言い放った。
「最後のアーサーの名において、見届けさせてもらうぜ。こんな卑怯なやり方じゃ駄目だ。正々堂々と決着をつけろ、サバク」




