45 作戦会議
『アースを滅ぼしたのは……人間。悪い事をしたから……サバクが裁く。それもきっと……アースを救うこと』
アラムの携帯電話から聞こえているのは、真剣な口調でリオンと語り合うサバクの声だ。シェンザーとユーシア、アラム、そして【ミザルの湯】管理人のミスズは神妙な面持ちで机の上の携帯電話を取り囲み、サバクの話に聞き入っていた。
『なるほど、それがお前の人間嫌いの理由か……とりあえず、俺も疲れたからそろそろ寝るよ。おやすみ』
これはリオンの声だ。その言葉を最後に、しばらくして通話は終了した。4人は顔を見合わせて息をつく。最初に声を上げたのはミスズだ。
「……なんか未だに信じられない話ですねぇ。古代アースからやってきた機械人間アーサーだなんて」
「機械人間か。面白い表現をするな、君は。確かにただの機械では表現できない、アーサー達も俺たちと変わらない心みたいなものを持ってるような気がするもんな」
ミスズの言葉にアラムは深く同意して頷く。ミスズも共感してもらって嬉しいのか、笑顔で何度も頷いている。フゥが机の上の携帯電話をアラムに手渡して話を戻す。
「とりあえず……リオンが提案してきた潜入作戦のお陰でサバクの能力がちょっとだけ見えてきたよね。サバクの【トモダチ】の能力はヨシノと同じ、外部から何らかの方法で得たエネルギーを利用して作られているということ。ヨシノの場合は蜜飴、そしてサバクの場合はあのフードだった訳だね」
「ああ……あの砂嵐や砂漠の記憶から再現される能力は【ミザルの湯】の温泉に含まれるゼルから生み出されているから止められないだろうけど、【トモダチ】を封じられるのは大きいな。包帯はどうだろうな……戦った時は確か動いてたな」
「ということは、包帯は別の方法でどうにか封じる必要があるんだね。どちらにせよフードは奪うべきだよ」
「確かにそうかもしれないッスね……でもどうすればいいんスかね? フードを奪うにしても、あの能力が邪魔をして行けないし……リオンにお願いしてみるッスか? 」
「いや……それは駄目だ! 」
珍しく声を荒げて、ユーシアの言葉を強く否定するシェンザーに3人は驚きの余り言葉を失った。少しの間沈黙が訪れたが、皆の顔色を伺いながらアラムが尋ねる。
「駄目って……どういう事だよ、ジェンザー」
「……リオンがこの作戦を決行したときに言っていたんだ。アースの未来を決める、アーサー達の意志を統一し最終決定をする役割がリオンにはあるんだって。彼は中立な立場で、アーサー達が思い描く在るべき姿のアースを見定めなければならない。アースを滅亡させた原因、人間のいないアースを望んだサバクの意志と……僕ら人間と友好関係を結び、手を取り合い創り出すアースを望んだヨシノやフゥ、そして僕ら。これはアーサー同士の選んだ未来を賭けた意志のぶつけ合いなんだと思う」
最後のアーサー。リオンが入っていたカプセルに刻まれていた言葉がアラムの脳裏に浮かぶ。そして、最初に出会った日のフゥの言葉……アースの再興のための選択。
つまりアーサーの目的とは単にアースの復活という使命ではない。同じ過ちを繰り返さないため、復活したアースが二度と同じ運命を辿らないように、最善の形で未来へ導くための答えを探すことなのだ。
……だとしたら、俺はどうすべきだ?
アラムの中に小さな疑念が産まれる。自分が求めたアースとは、一体何なのか。自分の祖先の故郷が見たいのか? それとも、何者の手にも荒らされることのない純粋な大自然なのか? 自分が求める答えとは?
固まって考えこむアラムを心配するようにユーシアが顔を覗き込む。
「大丈夫ッスか? やっぱりさっきの戦闘のダメージがまだ残っているんじゃ……」
ユーシアの声にアラムは息を呑み、我に返る。皆の心配そうな視線が自分に集まっていることに気付き、アラムは慌てて立ち上がると元気そうに振る舞う。
「お、おう。俺は全然大丈夫だぜ。そんな事より、まずは明日の事を考えなきゃな」
「それはそうッスけど……ねぇ、シェンザーさん」
「そうだよ、無理をしちゃいけないよ。リオンのお陰で二人が元気でいることもわかってるし、まずは怪我を直してからでもいいよ」
二人は口々にアラムのことを気遣うが、アラムは微笑みながら拳を掲げた。
「いや、出来るだけ早く準備して3人を救出しよう。救出のヒントはリオンがいくつもくれた。これから皆に作戦を伝える」
「え!? もうなにか思いついたの? 」
シェンザーは目を輝かせてアラムの方を見つめる。まるで【アクウィーラ】に乗り込んだあの日の興奮が蘇ってくるようで、シェンザーは心躍っていた。ミスズとユーシアもアラムの方を見つめる。
「ああ……今から皆に作戦を伝える。この作戦のキーになるのはお前だ、ミスズ」
「なるほどぉ……って、私!? なんで!? 」




