43 裏切り?
「ねぇ、リオン……あのアーサーの事は何も分からないままだけど、とりあえず【ミザルの湯】に残ってるゼルは僕らの手の中だ。これで一応は、僕らの任務は成功したんだ。胸を張ろうよ」
「ああ……そうだな」
貯水タンクに空いた穴を塞ぎ水漏れがないかの確認もした上で、シェンザーとリオンは地下の貯水施設から地上へと戻ってきた。シェンザーは先程遭遇した気怠げな謎のアーサーの姿を一応探してみるが、やはり地上にその姿は見当たらない。
やはりあの穴か、同じように作られた穴からどこかへ行ってしまったのだろうか。あの穴がどこに繋がっているのか気になるところだが、今はそれどころではない。穴のことはすべて終わってからミスズに報告し、調査してもらうことにした。
「皆、大丈夫かな……。これからどうしようか? ここに残るか、皆を探すか……」
「ああ……」
「さっきからどうしたの、リオン? ずっと上の空だけど……」
シェンザーはリオンの様子が気になり、リオンに問いただす。リオンは【ミザルの湯】の屋上の方を見つめながらシェンザーに質問する。
「なぁ、科学者。サバクと最初に出会ったときあいつは屋上の方からきたんだよな」
「うん。だからフゥが捕まっているのもサバクの本拠地もきっと屋上だと思う」
それを聞いてリオンはまた何かを考え始めたかと思うと、何かを思い立ったようにリオンに向かって話しかける。
「一つ頼みがあるんだ……いいか? 」
館内の中央、大階段の付近にユーシアは潜り込んでいた。確かアラムから聞いた話ではフゥが連れ去られた現場はこの付近のはずだ。何かヒントがあるかもしれないと思ったのだ。
入口の方からやってくる誰かの足音を聞いてユーシアは慌てて物陰に隠れる。日に焼けた肌に白髪の男が、あたりを見渡しながら館内へと入ってくる。
「フード……ないな」
きっと、あれがサバクなのだろうと直感した。そっと顔を出してその姿を覗き込む。目にした予想外の光景に、ユーシアは思わず叫びそうになる。サバクの手から伸びた包帯がヨシノを拘束していたのだ。
(あれはヨシノ……!? まさか……アラムさんはどうなったッスか!? )
ユーシアの脳裏に最悪の光景が浮かぶが、悪い想像を振り払うように頭を振るとサバクの方を観察し始める。サバクはヨシノを拘束してはいるものの、危害を加える様子はない。
サバクはずっと何かを探していたようだったが、少し悲しそうな顔をして諦めたようにトボトボと階段を登っていく。ヨシノを連れて階段を上っていくサバクに、階段下から何者かが声をかけた。
「もしかしてこれか? お前が探してんの」
ユーシアは声のする方を覗く。そこに立っていたのはシェンザーと共に行動をしているはずのリオンだった。リオンの手には緑色のフードのような者が握られていた。
「それ、ずっと探してた……! ありがと……お前はもしかしてアーサー? 」
サバクはリオンの方へと駆け寄り、緑のフードを手に取る。ヨシノがリオンに訴えるように叫ぶ。
「リオン、助けて……! アラムが、アラムが……! 」
「サバク。俺もお前と一緒に行くよ」
「え……リオン? なんで……なんで……」
リオンが裏切りサバクと手を組んだ。ユーシアはその場にしゃがみこんで頭を抱えた。アーサーとしての判断だというのだろうか、ユーシアには目の前で起こっている出来事が信じられなかった。
力なくうなだれるヨシノを連れて、サバクとリオンは階段を登っていった。ユーシアは突入して助け出すことも考えたが、今はアラムの身に何が起きたか確かめる方が先だ。ユーシアはアラムを探しに外へと向かった。
「あ……アラムさん!? 大丈夫ッスか、アラムさん!? 」
ユーシアは入口付近に倒れていたアラムに駆け寄り、砂に沈んで埋もれかけていたアラムの身体を引っこ抜く。気を失ってはいるが死んでいないようだった。
ユーシアはアラムを背負って歩き出した。リオンが裏切ったのだとすれば……今度はシェンザーのほうが心配だ。ユーシアはゆっくりと歩き出した。




