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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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41 ユーシアの切り札


「逃げ回ってても埒が明かないッスね……やってみるッスか」


 同じ頃、ユーシアはサバクの【トモダチ】を引きつけながら、誘導するように【ミザルの湯】敷地内を走り続けていた。サンディナで産まれ育ったユーシアにとって、砂の足場を走り続けること自体はそれほど難しいことではなかった。


 しかしユーシアには同行するアーサーがいない。囮役として彼が動くために、この砂の地面で彼と同じように動けるアーサーがいないためだ。ユーシアの正義感の強い性格と仲間たちと連絡が取れない不安から、それぞれ戦っている仲間たちの安否が気になりはじめていた。


「早くこいつらを倒して皆の所にいかないとッスね……」


ユーシアは建物の壁を上手く利用して高く跳躍すると、【トモダチ】の軍勢の頭上を飛び越える。最後尾にいた一体の頭の包帯を掴みながら着地しその頭を地面に叩きつける。 

 地面に叩きつけた勢いで、ユーシアが掴んだ包帯が緩くなり解けていく。顔に直接ドームの照明の眩しい光が当たり、サバクの【トモダチ】は顔を覆って苦しそうに地面を転がりはじめる。やがて【トモダチ】は砂のようにボロボロと崩れ去ってしまった。


「なるほど、ぐるぐる巻きなのは光に弱いからなんッスね! 数が多くても弱点が分かればこっちのものッス」


 そういうとユーシアはポケットから何か取り出す。それはユーシアがここへ来る前にリオンから受け取った、遺伝子情報を書き換えることで即席の武器になるように作ったゼルの塊である。これはキオンとスイからそれぞれ受け取ったものだ。









「……絶対にアタイたちも着いてくよ! 」

「い、今は無理ッスよ! あれだけ頑張って倒れてすぐなんだから、今は休んでおくッス! 」


「嫌だ、嫌だ嫌だ! アタイも着いてい……ゔぅっ! 」

「ほら、まだ本調子じゃないッス! 今はゆっくり休まなきゃ……」


 出発前に、目覚めたばかりのキオンが今回の騒動を知ってどうしても着いていきたいと大騒ぎしたのだ。ユーシアとスイはなだめようとしたが、一向に言うことを聞く気配はなかった。そこへリオンがキオンの検査のために入ってきた。


「さっきからうるさいな……その身体で着いていくなんて、お前でも無謀だってわかるでしょ。それなのに、どうして着いてこうとするんだ? 」


「だって……心配じゃないか。アタイだって、なにかユーシアの力にならなきゃ……助けてもらってばっかりじゃアーサーとしても、ユーシアの友だちとしてもだめだめなんだよ」


「キオン……そんな風に考えていたッスか」


 ユーシアは思わぬ返答に、勢いよくキオンを抱きしめる。スイも近寄ってきてキオンの頭を何度も撫でる。照れながら目を逸らすキオンに向かって、リオンは楽しい玩具を見つけた少年のように話しかけた。


「だったらさ、一つ面白いこと思いついたんだよね。 キオンとスイの持ってるアースの記憶をこいつにプログラミングしてみたいんだけど」


 そう言ってリオンは小さなゼルの塊を取り出した。キオンの足りないパーツを生み出すのに使ったものの余りである。


「キオン、お前の持ってる能力をこのゼルに書き込めば、一度だけユーシアのピンチに力を貸すことができる。予備はいくつかあるから、何パターンか作ることもできるぜ! 」

「リオン、あんたって奴は……いい事思いつくじゃないか! 」


 リオンの優しさにキオンは思わず涙を拭う。しかしユーシアは気づいていた。キオンの為ではなく面白い実験が出来るのを喜んでいるだけだと。勿論、それはここでは言わないほうがいい。

 キオンとリオンはがしっと腕を組み、早速研究にとりかかった。





「さぁ、早速試してみるッスよ! キオン……君の力を、借りるッス」


 ユーシアは先程サバクの【トモダチ】から解いた包帯を掴み、全速力で走り出す。ユーシアを止めようと向かってくる【トモダチ】の隙間をすり抜けながら、上手く包帯を使って縛り上げていく。全員がこんがらがって立ち上がれなくなったところに、ユーシアはキオンの【気温上昇】のゼルを放り込む。


「キオンは【気温】の記憶を護るアーサーッス。これからゼルを中心にどんどん気温は上がって行くッス。……その包帯の発火温度まで気温が上昇したら、どうなるッスかね? なーんて、君たちに言ってもわからないッスよね」



 ユーシアはそう言って、その場からどんどん離れていく。遠くから眺めると、包帯によって動けなくなった【トモダチ】はそれでもユーシアの方を見ながらもがき続けていた。ユーシアが放り込んだゼルは、やがてその姿を薄緑色の気体へと変化させ、何倍にも膨れ上がりかなりの範囲に充満する。

 やがてゼル周囲の気温が包帯の発火温度まで到達する。かなり遠くに離れたはずのユーシアにさえもその熱は届き、サンディナの暑さに慣れていた彼でも額から流れる汗が止まらなくなる。陽炎が揺れる薄緑の空間の中で、彼らは燃え盛る包帯の炎にその身を包まれてやがて砂へと還っていった。


「……ゼルってのは、こんな使い方もできるッスね。心強いけどおそろしいッス。

 さて……ゼルがなくなったし、これ以上【トモダチ】が増えると面倒ッス……まずはシェンザー達の手伝いッスね。二人は一体どこに行ったッスかね? 」





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