35 揃う仲間たち
「なるほど……外から見てもわかるな。どこもかしこも砂だらけだ、これじゃあ当分営業再開はできそうにないな」
「すごいッス……本当に、サンディナの大地によく似ているッスね。懐かしさすら覚えるレベルッスよ、これは。あぁ……一刻も早くあの地面を駆け回りたいッス」
シェンザーの話を聞いて、アラムとユーシアはヨシノとリオンを連れて【ミザルの湯】へと足を運んでいた。シェンザーから聞いていた話よりも、砂は増え続けているらしい。門の外へもかなりの量の砂が溢れ出してきていた。
今回はキオンとスイ、それに学長秘書の任務があるヒョウガは研究所の方で待機してもらう事にした。キオンが調子を崩していた事も勿論理由の一つだが、シェンザーの話によればアーサー同士はどうやら【接続】という機能を発揮することで、彼らが護るアースの記憶を組み合わせた能力を発動できるらしい。
未知なるアースの大自然の力はアラムにとってはとても気になるところではあったのだが、今回の目的はフゥの奪還とサバクを止めることだ。自分達に想定ができない未知の現象に常に対応できるとは限らない。わざわざ向こうの有利な状況を作る訳にはいかないだろう。
「……それで、何で俺とヨシノは連れてきたわけ?こんな遠いところまで……」
ヨシノに襟を捕まれて、無理やり引っ張られるようにして着いてきたリオンが不満そうに呟く。アラムは苦笑いしながら申し訳なさそうに言う。
「いやー、ヨシノが着いてくるって言うこと聞かなくってな。今まで以上に危ないことはちゃんと伝えたんだけど……まぁ、俺もヨシノがいなきゃ戦えないのは間違いないわけだし。リオン、お前は俺の事信用してないって言ってたけど、ヨシノのことはちゃんと守ってくれんだろ? 」
「当たり前だろ。考古学者、お前なんかには任せておけない。俺が必ず守り抜く」
「そりゃあ心強いぜ、俺も安心して戦える」
アラムはそう返事しながら、好奇心が抑えられずに目の前まで流れ出ている砂の上に立ってみる。靴は自身の重みで少し砂の中へと沈みこむ。ドームでは味わうことのできない不思議な感覚に酔いしれながらも、この足場の状態が中に広がっているのだとしたらかなり動きにくそうだと冷静に考える。
「おーーい! アラム、久しぶり! 」
声の方を振り向くと、シェンザーと見知らぬ女性がこちらへ走ってくるのが見えた。アラムは大きく手を振る。ヨシノに至っては飛び跳ねながら手を振っている。リオンはその様子を後ろから面白くなさそうに見つめながら、ユーシアに耳打ちする。
「なあなあ、あいつ誰なの? 妙に親しげだけど」
「え、えっと……確かアラムさんのアーサー研究の仲間とか言ってたッスね。自分も会うのは初めてッスけど……」
「ふーん、なるほど? 」
アラムの味方ならば信用できない、そういった表情である。睨んでいるリオンを他所に、アラムとヨシノはシェンザーとそれぞれ握手を交わす。
「二人とも、来てくれてありがとう。二人がいれば怖い物無しだ」
「いやあ、こんな短期間に2度も捕まるもんなんだな……まぁ、フゥを助けるのは2回目だしな。今回もなんとかしようぜ」
「ヨシノも、頑張るの! 」
「そうだ、二人のことも紹介するぜ。こっちのフード被った白髪がユーシア。俺の助手だ。サンディナの産まれだから砂の地面にも慣れてる。心強い味方だ。
こっちの苛ついてるゴーグル少年はリオン。こいつもアーサーだ」
「君たちがユーシアに、リオンか! アラムから話は聞いたよ。来てくれてありがとう! 君たち最高だ! 」
「どうも、初めましてッス! いやー、何だか偉い科学者の人って聞いてたッスからね。怖い人だったらどうしようかと思ってたッスよ! 」
「……ふん」
そっけない態度をとるリオンの頭をヨシノが怒ってぽかぽかと叩いている。わいわいと騒ぐ様子を外から見ていたナリタがシェンザーの方へ近寄る。
「あのぉー……私にも紹介して欲しいんですけども? 」
「あ、ごめんなさい……彼らは僕と同じ、ドーム内で起こっている異変について調査するために創設された特殊チームなんだ。
皆、この人は【ミザルの湯】の管理を担当しているミスズだ。僕らの力になってくれると思う」
皆は口々に挨拶を言う。早速ヨシノはミスズと打ち解けて仲良くなっている。ミスズの事はシェンザーから電話で聞いていた。彼女はこのパラダイスモンキーの地区代表の秘書の一人らしい。
シェンザーは、ミスズにはアーサーについて何も話していないので、彼女は今回の事件に関して何も事情を知らないままだ。一般市民を巻き込むわけにはいかない。当然の措置である。
アラムとシェンザーは、ミスズには何かあったときすぐにケービロイドを動かしてもらえるように観光案内所の方で待機してもらうように話した。彼女も少し不満そうではあったが、シェンザーの説得に納得はしてくれたようだった。
「さて……それじゃあ突入しようか」




