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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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34 接続するアースの記憶

「フゥ! くそっ……フゥ! 」


 フゥを拘束したサバクの包帯は、どういう原理なのか自分の意志で手足のようにに動かせるらしかった。自由自在に動き回り砂の中から伸びてきた包帯は砂の中からその全貌を現すと真っ直ぐサバクの下へと縮み戻っていく。


「くそっ、放してよ! ……むぐっ」



 サバクはフゥの身体を引き寄せる。フゥは包帯で手足だけでなく口も塞がれてしまう。

 シェンザーはどうにかしてフゥを取り返そうと必死で坂道を駆け上がろうとするが、どうしても崩れ落ちる砂の上を登ることができない。途中で踏ん張りがきかなくなって、砂埃を巻き上げながら1階まで転がり落ちてしまう。

 サバクは身動きがとれないフゥの方を見つめる。フゥは抵抗しようとして少しの間藻掻いていたが、サバクが目を合わせて何かを呟くといきなり全身の力が抜けたように動かなくなってしまった。二人の身体を囲むようにフゥの風が一瞬吹き、砂が弾け飛ぶ。サバクのフードが風になびくと共に、電子音声が鳴り響く。


『2機のアーサーの接続を完了。……、フゥのプログラムを解析。サバクに翻訳プログラムをインストール。……環境を更新します、【砂嵐】発生までおよそ10秒』


 アーサー同士の【接続】機能。シェンザーの研究では明らかにならなかった未知の機能だ。フゥと接続することでフゥの中にあるデータにアクセス・ダウンロードしたらしい。

 階段の上からなにか奇妙な、恐ろしい唸り声のような音が聞こえる。シェンザーは何が起こったかをサバクに問いかける。


「翻訳プログラムをインストールしたんなら、喋れるようになったんだよね? フゥをどうするつもりなの、これから何が起きようとしてるの」


「あのアーサーは……アースを復活させる仲間。サバクが護る。人間は……アースを滅ぼした、敵。全員……サバクが裁く」


 サバクは砂の坂道の上に降り立つ。サバクの足場には砂の中から突き出した大きな岩が突然現れる。サバクは体制を低くして突風に備える。


「吹き飛べ、人間。……【断罪の砂嵐】」


 屋上から乾いた砂を巻き上げて、強烈な風が階段を吹き下ろしてくる。いや、それはシェンザーが知る「風」とは全く違うものだった。まるで砂の壁とでも表現すべきだろうか、土色に染まった空気の塊がまるで自分を押しつぶそうとしているかのように降り注ぎ、迫る。


「なんだこれ……うああああっ! 」


 シェンザーは逃げる暇もなく、砂嵐に飲み込まれる。顔を覆って無理やり目を開いてフゥの居場所を確認しようとするが、辺り一面は黄土色に染まっており、いま自分が何処にいるのかも区別できないほどだった。

 無防備な顔や身体に、小さな砂が勢いよく当たり続ける。さらに、斜め上から吹き続けている強烈な風に、一瞬でも気を抜けば身体ごと吹き飛ばされてしまう。人生で初めて肌で感じた大自然の猛威と恐怖にジェンザーはその場にしゃがみこんでしまう。

 何かが近づく足音がする。薄く目を開けて見ると、サバクが目の前に立っている。フゥの姿は見当たらない。アーサーを護ろうとしていたことを考えると、恐らくどこか砂嵐に巻き込まれない場所へと運ばれたのだろう。


「フゥを……返してよ」


「お前、もう帰れ。アーサーにとって、人間人間は敵。もちろん、アースにとっても」


 サバクは容赦なくシェンザーを入り口の方へ蹴り飛ばす。同時に勢いを増した砂嵐に踏ん張りがきかなくなったシェンザーは吹き飛ばされてしまった。砂の上を風に逆らわず転がり続け、壁に背中から激突して意識を失ってしまった。やがて風に運ばれてきた砂がシェンザーに積もり始める。

 サバクは黄土色に染まった景色の中へとシェンザーが消えていくのを確認すると、依然として勢いを失わない砂風に逆らって屋上の方へと消えていった。シェンザーは自分の身体が降り注ぐ砂の中に埋まっていくのを感じながら、眠るように意識を失った。





「……あ、目を覚ました感じですね。おはようございますぅ。あなた、2日くらい目を覚まさなかったんですよ」


 シェンザーは横になったまま薄っすらと目を開ける。部屋中を見回すが、見たことのない場所だ。もう一度眠ろうと目を閉じたが、脳裏にフゥが何者かによって捕らえられた記憶が浮かぶ。


「……フゥ。そうだ、フゥを助けに……痛っ! 」


勢いよく身体を起こして、目の前で顔を覗き込んでいた女性と頭がぶつかる。


「ちょっ……痛ぁい! 何するんですかぁー! 気をつけてくださいよっ! 」


「ご……ごめんなさい。えっと……どちら様ですか? ここは一体……」


「私は娯楽特区パラダイスモンキーの区長秘書、そして【ミザルの湯】の経営・管理担当のミスズです。ここは観光案内所の中にある救護室なんですよ。 

 えーっと、どうやら館内の異常事態の解決に向かって頂いたんですよね……でもぉー、大失敗みたいですねぇ。ケービロイドからの通報で私が見回りに行った時には、あなたもう、身体の半分ぐらい砂の中に埋まってたんですよぉ? 」


 ミスズは眼鏡を拭きながら呟く。シェンザーはその言い方に少しムッとしたが、それどころではない。慌てて服を着替えると外へ向かって飛び出す。


「ちょっと待って……待って下さいよ」


 慌てて飛び出してきたミスズは【ミザルの湯】へと向かおうとするシェンザーの手を掴んで引き止める。


「……いやいや、なんか無謀なことしようとしてません? 貴方一人で戻っても、どうにもならないでしょ。こんな前代未聞の異常事態を一個人でどうにかしようとするのは無理ですよぉ。ましてや怪我人さんを一人で危険な場所へ行かせるわけには行きませーん」


「でも、僕の大事な仲間が拐われてるんだ。早く助けに行かなきゃ……そうだ、仲間……」


シェンザーは何かに気づいたように白衣のポケットを探る。取り出したのは携帯電話だった。


「僕一人じゃなきゃいいんだよね。今から専門家たちを呼ぶから……それなら大丈夫でしょ? 」


 そう言って携帯電話を開く。シェンザーが気絶している間に、アラムからはかなりの量の着信があったらしい。慌ててアラムに電話を掛ける。思っていたよりも早く、アラムは電話に出てくれた。


『……おい、シェンザー。心配してたんだぞ、何かあったのか? 』


「それが、実はさ……フゥが捕まっちゃったんだよね……」

『……え、また? 』

 

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