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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
33/370

33 サバクの裁き

 

 飛びかかってくるミイラ達に向かって、フゥは両手を振り下ろす。

 

 「山はないけど……【山颪】! 」


 強烈な風が、3体のミイラを砂の地面に叩きつけるように吹き下ろす。その風はミイラの身体が半分砂に埋まるくらい勢いが強く、舞い上がった砂にシェンザーも思わず顔を覆う。ミイラ達は身動きがとれず、砂から抜け出そうと藻掻いているが上手く行かないようだ。

 ミイラ達の上を飛び越えて、シェンザーとフゥは更に奥へと向かう。念の為、フゥが風で上から砂を追加で被せておいた。飛び出してきた時よりもかなり深く埋まっている、しばらくは出てこられないだろう。


 

 もがくミイラの手を背にして、二人は更に【ミザルの湯】の奥へと進んでいく。大浴場の館内の床も砂で埋め尽くされており、誰が見てもこの状況では当分温泉としての機能は果たせそうもなかった。

 

「すごいな……これだけの砂を産み出せるなんて。サバクはアーサーの中でも特別なのかい? 」

「んー……確かサバクはテラフォーミングができるアーサーのはずだよ。だけどテラフォーミングは僕らの【アースの記憶】を基に備わっている能力と違って、惑星の力を借りないとエネルギーが足りないはずなんだ。このドームの中じゃ惑星の力は借りられないはずなんだけどな。不思議だー」


 フゥが砂を吹き飛ばしながら、道を切り開いていく。砂の地面はとても歩きにくかったし、何より自分たちの位置が分かりにくい砂の景色の中で自分たちが通った道筋が目視できる。砂の中から露出した浴場の床を見つめながら、遠いアースの記憶の一端が今現実のものとして目の前に現れているのだと実感させられる。アース学に詳しい方ではないシェンザーもこの時ばかりはアラムのわくわくする気持ちがわかったような気がした。


「フゥ、とりあえず屋上に出てみようか。確か一番大きな露天風呂があるんだ」

「わかったー。とりあえず階段を探せばいいんだね」


 【ミザルの湯】の館内図はインターネットで閲覧することができる。その館内図によれば、ドームの約3割を占める敷地の殆どを利用して作られたこの本館の屋上にはアースの古文書を参考に作られた庭園と大浴場があるらしかった。

 フゥの合図でシェンザーは足を止める。指差す方には、以前見たことのあるカプセルが展示してあった。カプセルは開いており、あそこからサバクが現れたのだろう。


「ねえねえ、シェンザー。屋上にサバクがいるの? 」

「わからないけれど……フゥは風を吹かせる時は研究所の屋上に行くだろ。多分アーサーの能力って、環境に左右するものだから狭い場所とか室内で使うのに向いてないんだ。

 さっきの……ミイラだっけ? あれが監視役だとしたら僕達の侵入には気づいてるはずだ。もし迎え撃つつもりなら、効能の違う温泉ごとに細かく区切られた館内よりは大きな敷地に境がない屋上かなって」


 目の前に大階段が見えてくる。フロア中央にある大階段は途中でやめる左右に分かれて上へと伸びており、吹き抜けになった屋上から砂が流れ落ちて来ている。そのせいで、階段は崩れやすい砂の坂道になっていた。ここを登っていくのはかなり難しそうだ。試しにシェンザーは駆け上がろうとしてみるが、次の一歩を踏み出す前に足下の砂が崩れ落ちて下まで戻されてしまう。

 転んだシェンザーとフゥは砂の上に座り込んで屋上を見上げる。上の階から深緑色のフードを被った少年が、先程のミイラが巻いていたものと同じ包帯を使って屋上からぶら下がったまま姿を現す。


「あいつがサバクか。警戒されていちゃ翻訳プログラムを取りつけることは出来ないなぁ……フゥ、通訳お願い」

「オッケー、任せて。ええと……『お前ら人間? ここに何しに来た? 』だって」  


  

 やはりあの少年がアースの【砂漠】の記憶を護るアーサー、サバクらしい。フゥがモールス信号を利用して呼びかける。その呼びかけにサバクは驚いた表情をしたが、フゥが同じアーサーであることが分かって少し警戒を解いた。


「大丈夫そうだ、多分悪いやつじゃないと思う」

「わかった。なら、まずは僕達のことと皆が困ってることを説明してここから立ち退いてもらおう」

「任せて」


 フゥはまたサバクにモールス信号で説得を始める。フゥの話に微笑みながら頷いていたサバクだったが、突然先程までの敵意ある眼をシェンザーにむけ始める。シェンザーはフゥに耳打ちする。


 「フゥー……なんかあいつ怖いよ。何て言ってる? 」

「えーっとね……サ、バ、ク、は……裁く。人間全て……敵? 」


上の階から伸びた包帯にぶら下がったまま、もう片方の手に巻いてあった包帯を伸ばして足元の砂に潜らせる。

 二人は足場を警戒するが、砂の中から包帯が加速してシェンザーに迫る。フゥは風の勢いで自分の身体を飛ばしシェンザーを真横へ押す。身代わりになったフゥの身体は地面を潜って伸びてきた包帯にたちまち拘束されてしまった。



 

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