表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶のEarth-er  作者: だーぎー
32/370

32 砂に埋もれたオアシスにて

 遡ること、3日前ーー。 



 アラム、ヨシノと別れてから、シェンザーとフゥは普段通りの日常へと戻っていた。彼の本来の仕事は研究者ではなく開発者だ。シェンザーが過去にアーサーからヒントを得て設計したケービロイドの修繕やその他機械系統の修理の依頼で生活をしていた。そうやってストームイーグル地区のあちこちで修理の依頼をこなしながら、アラムから預かった蜜飴の研究やアーサー研究のチームに入るための引っ越しの準備を進めていた。

 




「……【寒くなったせいでプールが氷になった】のなら、例えばアースの【気温】の記憶を護るアーサーとか」


 研究中にアラムから連絡が入ったと思えば、彼らはすでに他の地区でもう別のアーサーと遭遇してしまったらしかった。シェンザーの心の奥底から羨ましいという気持ちが沸々と湧き上がってくるが、アラムと一緒にいることになるならいつか会えるだろうと自分を納得させる。通信を切ると、思い切り伸びをしてから深い溜め息を吐く。


「……ふぅー。いいなぁー、羨ましいなぁー」

「……ん~? 呼んだ? 」


「……ああ、ごめん。フゥのこと呼んだわけじゃないよ。でも……聞いてよ。アラム、もう新しいアーサーを見つけちゃったんだって。僕だって早くアーサー研究を再開したいのにさ」


 シェンザーは不満そうに呟く。その様子を見たフゥはやれやれとでも言いたげに、首を振っている。シェンザーの恨めしそうな視線を受けて、フゥは苦笑いしながら提案する。


「……そういえば、ヨシノが大好きな飴玉の研究と、アラムのために考えた武器の開発ももうすぐ完成するんでしょ? 折角だったら、研究を早く終わらせて届けに行ってみようよ。引っ越しの下見も兼ねてさ」


「……! そ、そうだよね! いい提案だよ、フゥ。君のそういうとこ、本当に最高だ! 」


 早速というふうに、飴玉を入れた小さな袋を白衣のポケットから取り出して、開発作業用の部屋に置いてあったアラムのために作りかけていた専用武器を手に取る。蜜飴の研究と並行して、アラムのためにこっそり作っておいた武器だ。


「【桜牙刀】もようやく試作品ができた。さぁフウ、早く研究を終わらせてアラムのところへ……というか、アーサー達のところへ行こう! 」  






 中心部北側にあるストームイーグル地区から電車に乗って南外側のワイズオウル地区に向かうためには、中心部南側にある娯楽観光地区パラダイスモンキーを通ることになる。

 2日ほどで急いで研究を終わらせ、大急ぎでシェンザーとフゥはアラムたちのところへ向かっている。しかし、本来なら通り過ぎてしまうはずのこの地区でたまらずシェンザーとフゥは降車する。どうしても電車内で流れていたアナウンスが気になってしまったのだ。



『本日、パラダイスモンキーの大型入浴施設【ミザル】は緊急事態によるメンテナンスのため、営業を中止させていただきます。何卒ご理解頂けますようお願い申し上げます』 


 アナウンスと共に車内流れている映像は衝撃的なものだった。露天風呂が砂で満たされてしまっていた。辺り一面が砂に覆われたその景色はさながら映像で見た友好関係にある惑星、サンディナの景色にそっくりだった。これでは砂を全部退けてしまうまで浴槽は使えないだろう。

 フゥとシェンザーは顔を見合わせる。二人の意見は一致していた。これはどう考えても、アーサーの仕業だ、と。






 娯楽地区パラダイスモンキーは大きく3つのエリアに分かれている。右側に構える建物は、ゼル科学によって産み出された色々な効能の温泉につかることのできる大型入浴施設【ミザルの湯】。

 中央には老若男女問わず遊ぶことが出来る、アースの古文書から得た情報を模倣して作り上げられた大型遊園地【イワザルパーク】。

 左側には成人限定の娯楽施設、自身の勘や判断、経験によるスリルある戦いがウリのカジノ【キカザルの館】。


「……すごいなぁ、ここ。楽しそうなとこばっかりだねー」

「そっか、フゥはここくるの初めてだったよね。でも確か、古文書の情報を再現した部分も多いって聞いたよ。アースにもあったんでしょ? フゥはアースにいた時、行ったことはなかったの?」 


「そうだなぁ……アーサーが開発された頃って、もう戦争が始まってだいぶ経ってたはずだからなぁ。皆、遊んでる余裕なんかなかったと思うよ」

「そっか……だったら、【ミザル】の問題が解決したら色々遊びに行こっか。ここは楽しいところばっかりだよ」

「……ほんと? 楽しみだなぁ! 」

 シェンザーの提案にフゥは嬉しそうに駆け出す。シェンザーはその光景を微笑ましく思いながら、まずはパラダイスモンキーの観光案内所へと向かった。

 



 【ミザル】の玄関口は当然封鎖されており、観光客の姿はない。砂の出どころがどこかは分からないが、封鎖された柵の外まで砂が流れ出ている。

 配備されているケービロイドは新型だ。シェンザーのグリーンカードが有効な機種ではなかった。無茶な方法をとることはできそうにない。

 観光案内所の職員に対しては、ケービロイド開発に携わった者の証であるグリーンカードは有効だった。職員に特別な許可をもらい、閉鎖中の【ミザル】へと足を踏み入れる。

 

「なんかー、空気が乾いてるね」

「空調設備が間に合わないほどの勢いで、空気が乾燥してるってことだね。それになんだか、汗も止まらない」


 敷地内の温度がかなり上がっているようだった。入場口付近には温泉の湯の滝が流れているはずなのだが、どこかで流れがせきとめられているらしく乾ききっていた。

 数歩歩けば、足が砂の中に沈んでいく。靴の中に砂が入り込み、シェンザーは慌てて靴を脱ぎ振り回す。


「この足場の中を歩くのかぁ……かなり大変だな」

「そうだねー、とりあえずもうちょっと進んでみようよ」


 歩き出そうとする二人の前に、突然砂が盛り上がってくる。中から白い布でぐるぐる巻きにされた人型の生物が起き上がってくる。続けて2体、同じ人型の生物が現れる。

 3体の生物は侵入してきた敵を迎え撃つために現れたようで、奇妙な唸り声を上げながら二人に距離を詰めてくる。フゥは慌てているシェンザーを守るように立つ。


「あれはヨシノと同じだね。ミイラを模して作られた【トモダチ】の能力」

「……ってことは間違いないね。ここにいるのはアーサーだ」


  3人のミイラは奇妙な唸り声を上げながら、フゥとシェンザーに飛びかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ