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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
30/370

30 惑星リバイブを支える資源

 キオンが変化させた高温の空気によって、徐々に氷が溶けて厚みを失っていく。ヨシノとリオンは既にドームの外側に到着していた。


「よし……いい感じ……そろそろ割れるよ! アラムとユーシアはここからできるだけ離れて! 」


 リオンが壁の向こう側から勢いよく突進すると、薄くなった氷の壁に大きなヒビが入る。氷の壁は一気に崩壊し、ドームの壁に大きな穴が開いた。勢いよくドームの外に流れ出る空気に思わず身体が持っていかれそうになる。

 ヨシノとリオンが外から中へと走り込んでくる。スイとヒョウガはうまく連携をとって、手早く氷を形成していく。穴が塞がるほどの大きな氷の壁が形成される。2人は空気漏れがないことを丁寧に確認するとアラムの方を見て頷く。


「もう大丈夫です。穴は隙間なく塞がりました」

「あァ……とりあえず、一件落着だぜェ」



「二人ともありがとうな! ユーシアとキオンも、駆けつけてくれて本当に助かったぜ」


アラムはそれぞれに駆け寄ってお礼を言うと、今度はリオンとヨシノの方へ向かう。リオンは警戒してアラムの方を睨んでいたが、アラムは気に留める様子もなく笑顔で二人に叫ぶ。


「二人とも、お帰り! 」


 笑顔でヨシノとリオンを力いっぱい抱き締める。リオンは予想外の行動に驚き、満面の笑みでアラムに抱きつくヨシノを少しの間眺めていたが、やがて我に返ったようにアラムの手を払い除ける。


「止めろ! 子どもみたいに扱うな」

「なんだよ……俺は敵じゃないんだってば」  


「……ヨシノのことは信じてるから、お前とは戦わないでおいてやるよ。でもまだお前のこと、信用してるわけじゃないからな」


 アラムに対して敵意を剥き出しにするリオンに、アラムは笑顔を崩さずに頷く。リオンの相変わらずの態度の悪さが癇に障ったのか、キオンがアラムに突っかかるように叫びだす。


「アンタねぇ、色々と大穴開けて壊しといてその態度? アタイ達がどんだけ苦労し……て……」



言葉の途中でキオンは膝をつき、そのまま地面へと倒れ込んだ。ユーシアとスイが慌てて駆け寄りキオンの身体を抱き上げる。


「キオン! 大丈夫ッスか!? ……身体が熱くなってるッス、一体どうして……」

「……空調の対応が早すぎたんだ。アースを基準に造られた能力だもんな。

 ドームの空調がすぐに規定の温度に調整しようと稼働してしまうから、アースで能力を使う時よりもキオンの身体には何倍も負荷がかかっていたのかもしれない。……かなり無理してたんだな」


 ユーシアの言った通り、キオンの身体はかなり熱くなっていた。ヒョウガ達が研究室の2階にあるベッドにキオンを運び込む。キオンは身体が身体を襲う高温と苦痛にうなされ始めた。ゼル製のベッドで温度調整をしてみるが良い効果は期待できそうもない。


「……くそ、駄目か。こんなときに」


 シェンザーとの連絡がとれない。アラムの知る限り、惑星リバイブで唯一アーサーに詳しい科学者だ。アラムにはアーサーの科学的な知識がない。彼と連絡がとれなければ、キオンにどんな問題が起きているのかはわからない。

 ヒョウガとスイが先程同様に氷を生成して、キオンの身体を冷やしているがあまり効果はない。ユーシアは熱くなったキオンの手を握りながら心配そうに見つめている。


「キオン、大丈夫ッスか? 」

「ユーシア……火傷するよ。早く……手を離して……」


「離さないッスよ……これくらいしか、自分にはしてあげられないッスから。でも……絶対に助けるッス」


 キオンは嬉しそうな顔をして目を閉じる。どうやら眠ったようだ。アラムやヨシノが何度連絡してもシェンザーからの応答はない。

 どうすればいいか分からないまま立ち尽くしていると、遅れてリオンがやってくる。沈黙しているアラムたちの隙間をくぐり抜けてキオンの元へやってくると、サイバーゴーグルを装着し、キオンの内部の状態を解析する。

 

「……装置の故障が数ヶ所あるな。部品さえあれば、直せるよ」

「リオン……手を貸してくれるのか? 」



「この子もアーサーなんだろ? 同じ目的を持つ仲間なら、最後のアーサーであるこの俺が動かないわけにはいかないでしょ。幸いアーサー修理の基礎知識はあの大馬鹿な博士に叩き込まれてる」


 そう言って細かなパーツの形状や素材を解析していく。アラムたちはキオンを治せるということに安堵し喜んでいたが、リオンの注文を聞いているうちにアラム達の表情が曇る。


「……そんな精密で珍しいパーツ、ワイズオウル地区では手に入らないぞ……せめてファクトリーフォックスみたいな工業特区に行かなきゃ駄目だ」


「まじか……今から注文したとして、届くまでにどれぐらいかかるもんなんだ? 」

「この注文どおりに特注でパーツを造るとしたら……最短でも一ヶ月はかかると思う」



「駄目だ、それじゃあ間に合わない」

「くそっ、どうする事もできないのか? 」


アラムは悔しそうに拳を壁に叩きつける。皆が沈黙して項垂れる中、ヒョウガがある事を思いつき声をあげる。


「いや……まだ方法はあるぜェ。仮の部品を修繕用ゼルで作るなら、一ヶ月は故障せずに済むんじゃねえかァ? リオンなら素材さえあれば、細かな部品だって作れるだろ? 」


「ああ、まあ」


「修繕用ゼル……確か小さい予備なら研究室に置いてあったはずだ! 」


 ヒョウガの言葉を聞いて、アラムは研究室の方へと走っていく。ヒョウガとリオンも後について一回へと降りる。

 研究室にある机の引き出しの中から、透明の袋を取り出す。中にはブロック状に切り取られた、ぶよぶよとした物質が一つ入れられていた。リオンには、その色や見た目に何やら見覚えがあった。肌触りを確かめてみることで、その感情が確信に変わる。


「これさ……ドームの外で大量に浮いてたやつでしょ。リバイブの地面から染み出していた」


「そうか……外で天然のゼルを見たのか」

「あれ、ゼルって名前なのか。でもこんな柔らかい素材じゃあ、小さくて精密な部品は作れない」


「確かに、ゼルはこのまんまじゃ使えない。だったら、これならどうだ? 」


 リオンの反論を聞いて、アラムは引き出しから別のゼルを取り出して手渡す。リオンは渡されたゼルが、今まで見たゼルとは明らかに異なる性質を持っていることに驚きを隠せなかった。


「……さっきのに比べてすごく硬い、色味もなんだか、鉄っぽいし」

「そう、それはゼルから生成した鉄だ」


「ゼルから……生成? どういうことだ」

「ゼルは惑星リバイブを支える重要な資源だ。その唯一無二の特徴は、遺伝子構造がプログラミングによって無限に書き換えられること。鍛え上げられた鉄のように硬く、流れる水のように滑らかに、また人間のように知性をもった存在に……まさしく、自由自在。

 この惑星では食料や建造物、そして医療に至るまで、生活のあらゆるところにゼルが活かされた技術が使われているんだ」

 

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