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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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03 フゥを助ける作戦会議

 3人は地区の中心にある広場へとやってきた。ストームイーグル地区は多くの商業施設が建ち並ぶ商業区だが、この中心の広場から蜘蛛の巣状に道が造られているため、ほとんどの訪問客はどの店に行くにもここを一度通るのだ。そのため、この広場には常に多くの人で溢れかえっている。


 近くの屋台で買った半透明のフランクフルトをかじりながら三人は目的地に向かって歩く。ちなみにこのフランクフルトという料理はアースの宇宙船によって運ばれてきた古文書から解読されたレシピを基に再現されたアース風の料理だ。


「んっま〜〜! ヨシノ、これ好き! 」

「確かに、このうまさはシビれるな」

「食事もいいけど、作戦会議だよ。もう一度この端末を見て」


3人はフランクフルトをかじりながら、シェンザーの持っていた端末を囲んでのぞき込む。フゥを指し示す赤い点がちょうど彼らが歩いていた道を真っ直ぐに進んだところ点滅していた。


「まぁ、ここまでくればもう地図で見なくても見えるよね。正面にある一際でっかいデパート」

「ああ。あの建物のどこかに、フゥってアーサーがいるんだよな。ヨシノは知ってるのか? その、フゥのこと」 


「んー、知ってるよ。アースにいた頃はね、よく一緒に遊んでたもん」

「そうなのか。どんな子なんだ? 」


「あのね。ちょっとだけのんびりさんだよ、フゥは」

「ハハハッ、そうかも。たしかにフゥって結構マイペースだよね」


 シェンザーはヨシノの発言にお腹を抱えて笑っている。アラムはフゥというアーサーはヨシノと仲が良い事を知ってすこし安心していた。アラム自身も、ヨシノ以外のアーサーにはまだ1人しか会ったことがない。もし危険なやつだった場合はどうしようかと心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。


 ヨシノも一緒に笑っていたが、突然何かを思い出したような、そしてどこか昔を懐かしむような表情になる。



「でもフゥが一緒にいるとね、いつもよりすーーーっごく奇麗だよ。 すごく奇麗に花びらがとんでいくの。 アラムにも見せたいなぁ」


  ヨシノが両目をキラキラと光らせながら両手を空へと振り回して熱弁する。アラムは先ほどの強烈な風でヨシノの花びらが綺麗に飛ぶイメージが湧かず半信半疑だったが、それほどまでにヨシノが言い切るならばさすがに興味が湧いてくる。


「……そんなに奇麗なのか? それは早く見てみたいぜ、その為にもフゥを助け出さなきゃな」


「うん! 」


 ヨシノはニコニコしながら答える。仲間に会えることがとても嬉しいのだろう。アラムは思わず笑顔になりヨシノの頭を嬉しそうに撫で回す。シェンザーは2人の微笑ましい様子を眺めながらも、これから始まる危険な奪還計画の話を冷静に続ける。


「それじゃあ、あの建物の話に戻るよ。建物の名前は【ギガ・アクウィーラ】。この地区最大のデパートだよ。【アクウィーラ】を運営するゲインって男は、このストームイーグル商業区の代表議員だ。表向きは良い人ぶってるけど、その本性は欲と金に取り憑かれた極悪人って噂さ。」


「ヨシノ、難しい言葉わかんない……」

「つまりフゥを誘拐したのはこの地区のボスってことだ。……って、それ思ってたよりやばくないか? 」




 3人は【ギガ・アクウィーラ】の館内へと入る。商業施設であるため開館時間のうちは簡単に中に入ることができる。その代わり建物のあちこちに、開発されてからその性能の高さが話題の警備用アンドロイド、【ケービロイド】がうろついている。

 三人は買い物客に紛れながら館内の様子を伺う。ヨシノは商品の多くがかなり珍しいようで、目をキラキラさせながら辺りを見渡している。


「なぁ、さっきの地図じゃどこにいるかわかんないだろ。あてはあるのか、シェンザー? 」

「ああ。恐らくだけど、あの風の勢いはなかなか強かったでしょ? そこから考えるに、もし建物の中にフゥがいたんじゃ館内のお客、店員、商品にも被害が出ると思うんだ」


「でも、そんな様子はないぞ? ということは……そうか、屋上か」


「そう。でもこの店の上層階は【ギガ•アクウィーラ】の本社になっていて、当然関係者以外は立ち入り禁止になっているのさ。でも、屋上に入るためにはどうしてもその本社を通り抜けなきゃならない」

「おい、一体どうするんだよ? 」


 悩むアラムの隣にヨシノが駆け寄ってきて、手を挙げて叫ぶ。


「ヨシノ、いい案があるよ! 」

「いいね、教えてくれるかい? 」


ヨシノは満面の笑みで二人をチョイチョイと呼び寄せる。アラムとシェンザーは静かにヨシノに顔を寄せる。ヨシノは小さな声で、自信ありげに二人にささやいた。


「誰にも捕まらないように! 上まで駆け上がるの! 」


しばしの沈黙。ヨシノは胸を張って誇らしげである。呆然とするアラム。シェンザーはゆっくりとヨシノに近づき、ポンと肩をたたく。 


「いいね、それ採用」 

「ふぁっ!? まじ!?」


予想外の展開にアラムは困惑し、シェンザーに問いかける。

「あまりの衝撃に変な声出たわ……さすがにそれは無理だろ。こんな人の多い場所であの数のケービロイド相手に戦えないぜ。皆パニックになる」


「ああ。それは大丈夫、一旦僕に任せて。いい作戦があるんだ」








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