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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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26 最後のアーサー・リオン

 誰かの手で鍵をかけられた無数のデータの中から零れ落ちた一滴の記憶。恐ろしく美しい景色を誰かと並んで座り眺めている。隣に座っている誰かは、こちらから表情を伺うことは出来ないが懐かしい声を辺りに響かせる。

「いいかい、リオン。君はこれからアーサー達の中で最も過酷な運命を背負うことになる。君が護るのはーーーー」





 少年は呼吸を乱しながら飛び起きる。勢いで口に含んでいたなにかを飲み込んだようだが、それ以前に自分が置かれた状況に混乱していた。自分が何者なのか、ここが一体どこなのかが思い出せなち。どうやらこの謎のカプセルの中で、自分は眠っていたらしい。


「何だ今の夢、怖っ……てか、ここはどこなんだよ、一体。誰かいますか? 」


 両手が動いている。なぜだか、少年にとっては久々の感覚だった。頭から順に自分の身体を撫でたり、目の前で手のひらを握ったり開いたりしてみる。

 次に部屋中を見渡してみる。天井からは眩しい光が自分を中心に照らしており、部分的に鏡張りになっている。部屋の壁も同じく鏡張りだ。部屋が無音であることが、さらに少年の不安を煽る。


「……なんも思い出せん」


 自分の名前は、恐らくリオンだったと思う。ここがどこなのか、どうしてここにいるのかが全く思い出せない。まるでロックがかかっているかのように、思い出そうとしても意識が弾かれるような感覚に陥る。

 部屋には4つのドアがある。少年はそっと立ち上がり、できるだけ足音をたてないように一つのドアの近くまで行く。ドアノブに手をかけてそっと扉を開く。


「……なんだ、鍵はかかってないのかよ」


 アラム達は全員、この部屋の鍵をチェックしていなかった。建物の入口がオートロックでカードキーを持っていないと中へ入れないとうセキュリティの堅固さから、研究所内の施錠は行っていなかったのだ。

 ドアの向こうには自分がいた大広間の監視室があった。鏡張りだとばかり思っていたが、こちらからは大広間の様子が丸見えだ。恐らくマジックミラーなのだろう、少年は自分が何者かに監視される対象であることを悟った。

 しかしこの監視室には人の姿は見当たらない。部屋の機器を操作すると大広間の監視カメラの様子を部屋のモニターに映し出すことができた。部屋には6名の男女が映っており、彼らによって中央に自分が眠っていた例の古ぼけたカプセルが運び込まれていた。やがて1人の男がカプセルを開き、眠ったままの自分が現れる。男は何かを手にとって、自分の口へと押し込んでいる。


「こいつ……俺に何か飲ませてる。これかよさっき飲み込んだの……怖い。ってか絶対こいつが黒幕じゃん」

  

 自分の身体にどんな変化があったのかはわからない。むしろ、自分の過去が思い出せないのにそれを把握しろという方が難しい。

 男の顔は監視カメラの位置からでは見えないが、ストローハットは特徴的だ。それに、どこかで見覚えがあるような女性が映っている。その桃色の髪を見つめていた時、遠い記憶のロックが一つ解錠されたような感覚に襲われる。


「……ヨシノ。きっと、ヨシノだ」


リオンは押し寄せる記憶の中ではっきりと桃色の髪をした少女を見つけた。

 黒い雲と燃え盛る大地の狭間で、それでも懸命に、絶望に負けそうな仲間のために笑顔を絶やさない1人の少女。

 しかし画面に映る少女は苦しそうにうずくまり、やがてあの黒幕の男に抱えられ、どこかへ連れて行かれてしまった。 


「……そうか、ヨシノもここに捕まってるんだ……早く助け出さないと」


 リオンは隣の部屋へ向かう。そこは研究機材や道具が所狭しと並んでいた。恐らくここは研究室、もしくは開発室にあたる部屋なのだろう。

 リオンは自分の中で疼いている好奇心が止められなかった。何か助け出すヒントになるかもしれないと言い聞かせ、辺りに並んでいる機器を手当り次第手に取っていく。また一つ、記憶のロックが解除される。


「そうだ……このサイバーゴーグル」


 リオンは自分の頭に乗っていた緑のレンズのサイバーゴーグルを装着し、電源を起動する。

 リオンが棚から選んで手に持った機器をゴーグルを通して見る事で、その機器の仕組みの解析を始める。解析結果がゴーグルのディスプレイを流れるように表示されていく。


「……分子を弾く!? なんだよその技術、ワクワクすんなぁ……! 」


 リオンが手に取ったのは、アラムがストームイーグル地区で手に入れた【ベンディングシステム】だった。 

 リオンは試しに、今入ってきた扉とは反対側にある扉に向かってベンディングシステムを起動してみる。

 ベンディングシステムが触れた部分を中心に捻れるようにして丸い穴が開き、続けると穴はどんどん大きくなっていく。やがて扉は縁だけを残して、まるで粘土のように天井や壁や床に張り付いた。扉の向こうはどうやら倉庫になっているらしい。


「ここには、俺の知らない技術がまだまだあるんだな……本っ当に、ワクワクすんなぁ! ……っと、こうしてる場合じゃないな。早くヨシノを探さないと」


 リオンが捻じ曲げられた扉を通ろうとした時、上の階からドスンと何かが落ちる音が響いた。



 

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