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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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24 アースを復活させるには?

「おお……ここが、俺達の拠点! アーサーの専門研究所か! 思っていたより広いぜ! 」


 学長からアラムたちに割り当てられた研究所は【ワイズオウル地区】のドーム南側の端にある大きなホールのある建物だった。表向きには古代アースの研究所として認可を得ているらしく、玄関には【古代アース研究 特別研究棟】と書かれた表札がかけてある。

 建物は二階建てで、一階は5つの部屋に分かれている。中央に全面強化ガラス張りの大広間があり、その部屋を取り囲むように色々な機材が置かれた4つの部屋がある。


「なるほど、あの中央の広い部屋で行われている実験を全方位から観察しながらそれぞれの部屋で研究が出来るようになってるのか。なぁヒョウガ、どうしてこんないい条件が揃った建物が誰にも使われずに空いてるんだ? 」


「ほらァ、ここ駅の反対側で、しかもドームの端にあるだろォ? どうやら交通の便の悪さから、研究者達が嫌がっているらしいゼェ。まぁここの研究者はほとんどが教員を掛け持ちしているか、外部からの指導者だからなァ。必然的に駅に近い場所から埋まっていくらしいぜェ」


「なるほど、まぁ何にしてもラッキーだな」


 ちなみに二階は一つの大部屋になっており、アラムの要望で寝泊まりができる生活スペースが完備されている。これから協力するアーサーも増えるかもしれないし、長期的になにか研究をする場合でも不自由ない生活がここで出来れば便利だと考えたのだ。

 ユーシアは早速、ヨシノ、キオン、スイを連れて研究所内を探索しているようで、大広間の中を走り回っている様子が外の部屋から見える。はしゃぐ皆を眺めながら、アラムはヒョウガに聞いてみたかったことを質問することにした。


「なぁ、ヒョウガ。アーサー達はアースの復活が目的の一つなんだよな? 具体的にアースの復活って一体どうするつもりなんだ? 」


「アラムの旦那はアーサーがそれぞれ博士に託されたアースの記憶を護っているってのは知ってるんだよなァ」

「ああ、確かヒョウガは【氷河】と【氷雪気候】の記憶だったよな。で、そのアースの記憶を護るために、それぞれ自分の記憶から連想された固有の能力を持ってる」


「ああ、戦うための能力であり記憶を護るための防衛本能。アーサーの特殊能力ってのは、アースの記憶を部分的に再現して身に宿すもンだァ。

 そしてもう一つ、俺たちに備わっている大事な能力がある。俺たちアーサーはそれぞれの環境を再現する機能を備えてるんだゼェ。こう言うの、確かテラフォーミングって言うんだったっけなァ」 


「まじか! ってことはさ、ヒョウガも自分が護ってるアースの環境を創り出せるってことなのか!? ……見たい、見たいぜそれ! やってくれ、早くっ! あの大広間で! 」


「ちょ、いや! それはできねえんだよォ、アラムの旦那ァ! 」


 突然はしゃぎだすアラムにヒョウガは取り乱して、全力で首を振る。アラムはじれったそうに全力で駄々をこね始め、ヒョウガのスーツの襟を掴んで前後に激しく揺さぶりだす。


「えええ!! 頼むよ、勿体ぶんなって! 何でできねえんだよ!? 」


「いやいやいや……ちゃんと、ちゃんと理由があるんだよォ! 一旦、止めてくれェ! 」


アラムは揺さぶるのを止めて、純粋な瞳でヒョウガの方を見つめる。ヒョウガは気まずい雰囲気の中、地面にあぐらをかいて座り込む。アラムもすぐに正座をして話を聞く体制になる。ヒョウガも真剣なアラムの様子を見て、真面目に語り始める。 


「いいかァ? アーサーがアースの記憶を再現するためにはな、惑星が本来持ってる惑星自身のエネルギーを借りなきゃならないんだよォ。それは大自然を育む力、生命エネルギーとでも呼べるものだァ。俺達の中に蓄えてるエネルギーだけじゃ、土地の環境を変えるには全く足りないからなァ。

 でもよォ、ここは人間が安心・安全に生活するために開発したドームの中だろ? 惑星から隔離されたこの場所では、どうしたって無理なんだよォ。環境を変えるための惑星のエネルギーは、このドームの中には届かねェ」

「まじかよ……それじゃ……」


 アラムは絶望的な状況に、そのまま床に倒れ込んでしまった。この惑星リバイブは地上に十分な大気がない。かつてのアースのように生命が生存可能な環境の領域をハビタブルゾーンと呼ぶが、少なくともこの星はそうではない。サンディナのような例外もあるが、現在生き残っているアースの人類の多くは新天地にハビタブルゾーンを選ばなかった民族のみだ。

 生命にとって暮らすことが出来ないほどの惑星を選んでもなお種族を生かせるだけの科学力を有していたことも一つの要因だが、未知の生命体や環境による脅威に対応できずに全滅した種族も少なくなかったのだ。人類を本当の大自然から隔離すること、定められた檻の中でその輪廻を繰り返し続けること。それは人類が選んだ種の存続の術だったのだ。

 絶望に打ちひしがれていたアラムだったが、その苦しみを振り払うようにして頬を3回叩く。気合いを入れ直すように立ち上がり、自分に言い聞かせるように呟く。


「いや……元々お前達アーサーが復活させるべきなのは、アースなんだ。この星じゃない。俺がすべきことは……早くお前らの仲間を集めて、アースへと無事に送り届けること。アーサー達がその使命を成し遂げた時、俺の夢が叶う時だ。……決めた、決めたぞ。俺もお前らと一緒にアースへ向かう」

 アラムは決意を新たに、座ったままぽかんとこちらを見ているヒョウガに手を差し伸べる。ヒョウガはやがて嬉しそうに微笑み、アラムの手を掴み立ち上がる。

 突然、アラムの携帯電話がけたたましく鳴り響く。 


「はい、こちらアラム……ああ、ああ。……そうか、ついにあれが届いたか……!! 俺のホームじゃなく、古代アース研究所の方まで運んでくれよ、今から位置情報を送るぜ! ……ああ、よろしく! 」






 研究所の大広間に運び込まれたのは、人間が一人入りそうなサイズの大きな横長の置物だった。土埃にまみれたその置物は、表面に緻密な模様が彫られており自然に出来た物ではないことが見て分かる。

 研究所にいる面々の中で、これが一体何なのかわからなかったのはユーシアだけであった。


「アラムさん……何ッスか、これ? 古い……石の塊? 」

「……そうか、ユーシアはこれを初めて見るんだな。これは……アースから発射された小型のロケットなんだ。ここにいるアーサー達はこの小さなカプセルに乗ってこの惑星リバイブへと到達したんだ」


 ユーシアはアラムの言葉に目を丸くして驚く。アーサー達はどこか懐かしむような目でそれを見つめながら頷く。今目の前にあるのははるか彼方から飛来した、古代アース人の手によって造られた超小型の宇宙航行機なのだ。

 アラムは近づいて隅々を観察し、土埃を払いながらカプセル全体に刻まれた紋様を解読し始める。


「……これは【ギガ・アクウィーラ】で販売されてたんだ。この間ちょっとした用事で訪れた時にちらっと目に入ってな、店主のゲインに交渉して通常価格の5倍で話をつけて即決購入した。背に腹は代えられないからな」

「5、5倍!? いったい幾らしたんッスか? 」


 アラムはゆっくりとユーシアに近づき耳元で静かに囁く。その値段を聞いたユーシアは余りの金額に足元がふらつき、その場に倒れ込んだ。スイとキオンが慌てて駆け寄り貧血気味のユーシアを両側から抱え上げる。

 睨むキオンの視線を他所に、アラムは指で紋様をなぞりながら呟く。


「リオン……最後のアーサー」

 




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