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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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23 ユーシアの信念


「さぁ、これからが本題だな……ユーシア君。我々は今、話を盗み聞きしていた人物を探しているところだったんだが……アラムから話は聞いているよ」


 笑顔で手を振っていたユーシアは、びくっと肩を震わせ引きつった笑顔で学長の方を振り返る。学長は怒っているともいないともとれるような表情をしていて、しかし明らかに部屋の空気が変わったのをユーシアは感じた。アラムもストローハットで顔を隠しており、アーサー達も固唾をのんで二人のことを見守っている。

 


「そ……そうだったッスね」


 ユーシアは自分の顔をぱしっと叩くと、学長に向かって頭を下げる。この場はどうしても嘘や取り繕った言葉では切り抜けられないことを悟った。ユーシア自身の中に生まれていた想いをそのまま伝えることしかできないのだと。


「盗み聞きをしたことは申し訳ないと思ってるッス……本当にごめんなさいッス。でも自分は……もうその能力の一端を見てしまったッス。

 自分はサンディナを救うヒーローになることが夢ッス。そのためにこの惑星に留学して、色んなことを勉強してきたッス。

 キオンとスイから聞いたッス、皆に備わっている能力は惑星を再興するための能力だって。彼らの力を自分のために利用したい訳じゃないッス、でも彼らと共にアースの研究をすればきっと……きっとサンディナの未来を変える何かを掴める。そんな気がするッス。

 お願いします、どうか自分を……アーサーの研究チームに加えて欲しいッス」


ユーシアの願いも虚しく、学長は首を振る。


「……アーサーの研究は惑星間の関係にどのような影響を産むかわからない。予測のできない危険を伴うからこそ、アーサーの研究は極秘なのだ。危険を伴う実験に親交のある惑星から来た大事な生徒の一人を巻き込むなど、私からは許可できないのだ。わかってくれ。

 さあ、君が連れているアーサーを我々に引き渡してくれ」


 理事長の懸念は最もだった。今回起こった事件のように、アーサーがこの惑星のルールに則って行動している訳ではない。彼らがもし危険な行為で市民に被害を与えた場合、留学生の彼がアーサーと共にいたら惑星間の国際問題に発展することも考えられるのだ。彼らの存在を極秘裏に扱う理由の一つは、そういった理由に近い。

 さらに言えば、他の惑星がこの技術を利用しようとしたり、戦争をしてでも奪おうとする可能性も考えられる。そういった危険な研究に生徒を巻き込むつもりも学長には毛頭なかった。


 ユーシアが諦めかけて俯いてしまったのを見て、スイとキオンがユーシアの手を握りながらユーシアの横に並ぶ。そしてキオンが学長に向かって威勢良く叫ぶ。 


「言っとくけどね。アタイとスイはユーシアに着いていくから。助けてくれたのもユーシアだし、アーサーにも目的があってここにいる。ユーシアがいないんだったら、ここに留まってあんたらの大層な実験につきあう筋合いはないからね」


 アラムと学長、ヒョウガはその言葉を聞いて動揺を隠せない。


「それはいかん……アーサーの情報はまだ世間的には公表されていない。君たちに勝手な行動をされる訳にはいかない」

「そうだぜ……特にスイの能力は感情に左右されるぐらい不安定なんだ。人前で能力を使っちゃったら、言い訳が出来ないぜ? 誰に何をされるか」

「そうだゼェ……そんな二人を連れているユーシアがサンディナ出身なんだ、下手をすれば惑星間の問題やテロ行為だと捉えられるかもしれねぇゼェ? 」


まくし立てるアラムと学長、そして秘書モードが解けてしまったヒョウガの勢いにスイとキオン、ユーシアは少し驚く。

 重苦しい空気が部屋に漂う。少しして学長室の沈黙を破ったのは、ここまで泣きそうな顔でユーシアの後ろに隠れていたスイであった。 


「私は……ユーシアといれば大丈夫だって思うよ。さっきだって、守ってくれたもん。それに……私だって、ユーシアを護れるよ」


そう言うと、スイの足元からは彼等を包むようにして水が吹き出し始める。キオンはスイの強気な発言にしばらく呆気にとられていたが、やがて笑いをこぼしながら同調する。 


「そう……そうだよ。スイの言う通り! ユーシアと一緒なら、アタイだって戦えるよ。……【キツネビ】!」


 そう言ってキオンも戦闘態勢に入る。両方の掌に火の玉が生まれ、揺らぎのない火柱が上がる。

 ヒョウガが学長を守るように二人の前に立ちはだかる。キオンが【キツネビ】を投げつけるが、ヒョウガはそれを払い除けながら凍らせていく。


「ふ……ふたりとも止めるッスよ! 」

「ヒョウガもだ、拳を下ろしなさい」


 ユーシアと学長が静止をかける。睨み合う両者の姿を見てヨシノはあたふたとしている。

 アラムは腕を組んで悩んでいる様子だったが、ユーシアの前に立ち目線を合わせるとユーシアに問う。


「俺はキオンとスイのおかげで、生きてきて初めて『寒い』という感覚を体感した。俺はもっとアースのことを知りたいし、いろんな事を肌で感じたい。

 正直、こんなことになるとは思ってなかったが……来いよ、俺達のチームに」


「い……いいんスか? 」

「ああ。いいよな、学長」


「し、しかしだな……アラム」

「ああ、リスクがあるのは分かってる。でも、まぁ……こいつにはちゃんと、正義がある。信用できると思うぜ」 


 学長は悩んでいるようだったが、仕方ないと一言つぶやきヒョウガに合図をする。ヒョウガは頷き、アラムの手に一枚のカードキーを渡した。ユーシアにも同様にカードキーを渡す。 


「アラム、ユーシア。そしてアーサー諸君。君達をアース研究専門特殊チームとして正式に認めよう。研究室については仮段階だが、目処が立った。ヒョウガに案内させるから全員着いて行きなさい」

「えっ!? あれからまだ3日だぞ……もう研究所を準備してくれたのか? 」


「ああ、せっかくだから新しい仲間と様子を見て来るといい。これからは皆アース復活のためのチームだ」


 キオンとスイは喜びながらユーシアに抱き着く。ユーシアも嬉しそうに二人を抱き締める。ヨシノも嬉しそうにアラムに抱き着いていたが、そのうちスイとキオンと手を繋いで跳び跳ねだす。 


「皆、喜ぶのは一旦後にしろ。まずは研究所を見に行こうぜ! 」




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