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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
22/370

22 それぞれの正義

「失礼します、学長」

「アラムよ、ヒョウガから話は聞いている。そっちの君がユーシアで……二人が新しいアーサーだね」


 アラムとユーシア、そしてヨシノにキオン、スイが後片付けを終えて学長室に戻ってくる。ハルバートは学長室にはおらず、ヒョウガが言うにはまだ目を覚ましてはいないらしかった。

 学長は終始にこやかに他愛のない話を続けていた。キオンやスイも、ヨシノやヒョウガたちが楽しげに学長と会話しているのをみて少し安心しているようだった。しかしユーシアは我慢できずに学長に質問する。


「あの……ハルバート君はどうなるッスかね」


「うむ、どうしたものか……まだその判断を決め兼ねている。惑星リバイブの法律はとても極端だからな……」

 

 学長は途端に顔をしかめる。この惑星はゼル技術の登場によって技術的な進歩だけでなく食料問題や医療問題に至るまでが大きく進歩した。そのために短期間で人々の価値観や判断の基準が少し歪に変わってしまったのだ。だからこそ、罪を裁く姿勢が少し極端になってしまっている。


「私はね、本来人の正義とは確固たる学びの上で語られるべきものだと考えている。アースの古文書でも記述がある通り、我々の祖先も正義を導く者たちはそれ相応の学習を積んでいるのだ。

 しかし、この星の基準が大きく変わってしまったのなら我々は学び直さねばならない。彼をどうするかはもう一度彼と話し合ってから決めるつもりだ。議員として裁くべきか、教育者として護るべきかをね」





 ハルバートが目覚めたのはそれからおよそ3日ほど経った後だった。報せを受けてアラムたちが学長室へ入るとちょうどハルバートにどのような処分を下すか話し合っている最中だった。ユーシアは黙ってハルバートの方へ近づく。


「くそ……またお前かよ」

「……ハルバート。 大丈夫ッスか? 顔の怪我は」 

 ハルバートは悪態をつき、ユーシアの言葉を無視して目を逸らす。学長がユーシアに尋ねる。  


「ユーシア君。アラムやヒョウガから聞いた話だと、君は彼にいじめられていたそうだね。今回の事件もその延長で発生したのだと。それは本当かな? 」


 学長からの質問にユーシアは即答する。


「いえ、全くいじめられてないッスよ! 」

「……なに? 」 


「だから、いじめられてなんかないッスよ! 殴ったり蹴ったりとかも、一度も効いてないし、自分としては成績を争う良きライバルって感じッスよ。一度も負けたことないッスけど」


 恐らくユーシアとしては先日の話を受けて問題が怒らないように庇っているつもりなのだろうが、ハルバートにとっては舐められているようにも聞こえなくはないだろう。拳を震わせるハルバートを見てアラム達は頭を抱える。

 ユーシアの話を聞いてドルクムもどうしたものかと、話を続ける。


「うーむ……とりあえず、ハルバート君。君はどうして彼にそんな事をしたのかな」



「……悔しかったんです。サンディナみたいな貧乏惑星から来た田舎者が……堂々とこの学校で学んでいることが」

「それは、どうして? 」


「自分の努力が……この学校の高等部へ入学するためにどれだけ頑張ってきたか、その全てが馬鹿にされているような、そんな気分になったから……気に食わなかった」


 そこまで言ってハルバートは黙ってしまった。その様子を見て学長はヒョウガに指示を出す。ヒョウガは近くにあった端末を一台手に取ると、ハルバートの机の上に置いた。学長もハルバートの向かいのソファに座って、共に端末を見ながら説明を始める。


「サンディナという惑星は、リバイブやその他の惑星に比べると科学力も惑星の生活環境もまだまだ発展途上だ。それはあの星に到達した人間たちが、自分たちが惑星に影響を与えることを良しとしなかったからだ。

 サンディナは、そのほとんどが砂に覆われた惑星ではあるものの、その環境に適応した生態系も確認されている。人間のために星の在り方を変えるのではなく、人間がなんとか星に適応するために今の生き方を選んできたのだ」

「………」


「しかし、今の状態で民全てを護ることが厳しくなっている。サンディナからやってくる学生たちは、皆それぞれ『妥協点』を探しているのだ。惑星も、生態系も、人間も。その全てを護り、生かすための『妥協点』を。

 決して彼らは遊びでこの惑星に学びに来ている訳ではない。君と変わらぬ熱意と、民の期待を背負っているのだ。それが彼の正義なのだ」


 ハルバートは黙ってその資料と映像を見ていた。学長は話を続ける。


「君が本当に彼と戦いたいのなら、君には惑星留学を勧めよう。私の権限でサンディナ、マキア、ハイドラドの3惑星へなら渡航許可を出す事が出来る。彼と同じ土俵で戦い、結果を出せばいい。

 競技場の方は、二度とこんな事件が起こらないよう【ダイハンド・ガントレット】を没収させてもらう。これはこちらで分解体し処分させてもらう」

「はい、わかりました……おい、ユーシア」


「成績も、腕っぷしも、功績も……能力全てがお前より優れているってことを今度は実力でハッキリさせてやるからな。見てろよ、田舎者」

「……楽しみにしてるッス! 」


 敵意剥き出しのまま去っていくハルバートに対して、ユーシアは心からの笑顔で手を振る。アラムは学長の近くに行き耳打ちする。


「いいのかよ……こんな軽い罰で? 」


「わからぬ……しかしこれもまた『妥協点』だ。問題が起こる環境は排除した。二人はどちらも優秀な生徒なのだ。一度の過ちで、彼らの可能性の芽を摘むのは教育者の在り方として私は正しくないと判断したまでだ。特にユーシア君も厳罰を望んでいるわけではないのでな」





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