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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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21 スイとキオン

「どうするって……どうする? ヒョウガ」

「まぁ、ひとまずはあれ飲ませた方がいいんじゃないすかねェ」


「お、そうだな。 それがいい」


 そう言うとアラムはヨシノの蜜飴の小袋に前もって入れておいた、飲むタイプの翻訳プログラムを2つ取り出す。これは科学者シェンザーがアーサー研究の中で開発した、アーサーたちが使うモールス信号を翻訳して音声化するためのプログラムだ。アラムは翻訳プログラムをユーシアに手渡すかが、ユーシアは突然渡された謎の錠剤を見て不信感を募らせる。


「何なんッスか!? その危なそうな薬は……危険な目に合わせるなら、自分が相手になるッスよ」


「ちょ、ユーシア!? 誤解、それはほんと誤解だから! ……わかった、ならこっちの身体に塗るタイプはどうだ? 」

「身体に塗る、って……こんな若い女の子に何しようとしてるッスか!? 危険ッス! 絶対にこの子は渡さないッスよ!」


「ち、違っ……っておいヒョウガ! お前まで何でドン引きしてんだよっ! ……ああ、もうキリがねぇ! 」 


 そう言ってアラムは念の為いつも持ち歩いていふヨシノの花弁を取り出す。左の手のひらにヨシノの花弁をそっと乗せると、少女とフォックスに向けてヨシノの花弁を右手の親指でたたくようにしてモールス信号を発信する。



『安心してくれ、これは危険なものじゃない。俺の信頼する友だちが作ったモールス信号を音声化する翻訳プログラムだ。

 そのプログラムを飲めば、二人を助けてくれたそこのユーシアともちゃんと会話が出来るようになる。安全面は俺が保証するが、それでも飲むのが怖いというのなら無理強いはしない』


 ユーシアは何か始めたアラムに警戒して視線を外さない。アラムが発した信号は花弁を介して少女とフォックスに伝わったようで、顔を見合わせるとユーシアの手から一つずつ奪い取る。


「あっ、それは……」

ユーシアの静止も聞かずに、一気に飲み込む。しばらくして二人は声を発する。 


「あ……すごい、ほんとに喋れる」

「へぇー、こりゃあ便利じゃん」


「しゃ、喋ったッス! ふたりとも怪我はないッスか? 」

「大丈夫だよ。さっきはありがとう、優しいお兄ちゃん」 


 そう言って青い髪の少女はユーシアに抱きつく。ユーシアもホッとした様子で抱きしめ返した。白い生物も二人の周りをクルクルとあるき回っている。ヒョウガは皆の様子を見て笑顔になると、暖かい部屋で待たせてあるヨシノを迎えにいってくれた。

 少ししてから、安心した少女はずっと傍で待っていたアラムに向かって自己紹介をはじめた。




「私は【スイ】。【水】や【湿度】に関係する記憶を護るアーサーです。 そしてこっちは……」

「ああ、アタイはキオン。【気温】や【温度】を護るアーサーさ……あらよっと」


 そう言ってキオンは小さな身体でぐるっと宙返りをする。たちまちその姿は一回りも二回りも大きくなり、スイと同じくらいの人型の姿に变化した。その光景にアラムとユーシアは驚く。


「うおっ……! フォックスが人間変身したぞ!一体どんな仕組みなんだ? 」

「へへっ……キツネは人間に化けるってね。どうよ? 」


 胸を張るキオンにアラムとユーシアは惜しみない拍手を送る。スイも二人に合わせて笑顔で拍手をしている。

 楽しそうなところにヒョウガがヨシノを連れて戻ってくる。ヨシノはまだ少し寒そうだったが、アラムに抱きつくと安心したように叫ぶ。


「良かったぁーー! ヨシノ、心配だったの! 」

「ごめんな、長い間待たせちゃって。……ほら、ヨシノはあの二人のこと知ってるか? スイとキオンって言うんだって」


「うん、知ってるよ! ……おーい! ふたりとも、久しぶり! 」


「あれ、もしかしてヨシノ!? 久しぶりじゃん! 」

「うわーーーん、ヨシノーー!! 」


 スイは泣きながらヨシノに抱きつく。ヨシノは優しく微笑みながらスイの青い髪を撫でている。 

 スイの足下から水が溢れ出す。どうやら感情が昂ると水の能力が制御できなくなるらしかった。キオンがまたかと言わんばかりに能力を発揮し、徐々に水浸しだった地面が凍っていく。アラムはそれを見て、納得する。


「……この氷はキオンが造ったものだったのか。じゃあ、向こうのプールが凍ったのも? 」

「ん? ああ……それもアタイだね。ちょっと準備運動がてら、凍らしちゃったね」


「あれ、元に戻すことも出来るのか? 」

「まぁ……気温を上げていけばどうにかなると思うけどさ」

 

「それが聞けただけで安心したよ……さ、とりあえず皆で後片付けしようぜ。 今ので増えた氷をちゃんと片付けなきゃな……」




 砕けた氷の破片はプールの方へと運び、凍ったプールの水と共にキオンによる気温上昇のお陰で無事、水に戻すことができた。競技場は【ダイハンド・ガントレット】が地面を殴り砕いた瓦礫も散乱していたのだが、こちらは先日頂いてきた【ベンディングシステム】を上手くコントロールすることで、出来る限り平らに均しながら上手く補修することができた。

 気絶したまま放置されていたハルバートは一度ヒョウガが学長室へ連れて行くことになり、意識が戻ってから学長が直接今回の件について話をするらしい。

「……よし、完璧だな。とりあえず俺達も学長室に向かおうか。ユーシア、お前にもちゃんと全て話そう」

  


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