16 誰がプールを凍らせた?
「さぁ、早く! 異変があったのはプールの方ッス! 」
ユーシアは3人を急かすようにして競技場の中へ入っていく。ヨシノとヒョウガは震えるアラムを引っ張るようにして中へと入っていった。
「ややややべ、寒い……! ユユユ、ユーシアはなんで平気なんだ? 」
「サンディナは砂漠に覆われた灼熱の星ッスけど夜は近くの恒星の光が当たらなくなる時間帯は一気に寒くなるんッスよ。だからわりと寒いのは慣れてるッス……ここまで寒いのは初めてッスけどね」
「ユーシア、すごいの。ヨシノも……ちょっと寒いの」
ヒョウガは寒がるヨシノに、自分の服を肩からかける。
「ヨシノォ……こっからはもっと寒くなる。この辺で待ってな」
「うん。ヒョウガ、ありがとうなの」
空調設備を操作して暖かくした部屋にヨシノを残して、ユーシアとヒョウガは部屋から出たがらないアラムを引っ張ってプールのほうへ向かった。
プールはどうやら完全に凍ってしまっているらしい。ヒョウガはどこからか取り出した槍をプールに向かって突き立てる。アラムはヒョウガの方へ近づいて、ユーシアに聞かれないようにこっそりと話しかける。
「こりゃあ、底まで凍ってるぜ。不思議なもんだ」
「お前らの仲間で、そういう能力を持ってるやつは……」
「アラムの旦那、そいつぁオレの専門だ。オレが護る記憶は【氷河】、そして【氷雪気候】。 これだけ水を凍らせる事ができるのはオレだけ……のはずだぜェ」
ユーシアが悩む二人の方へ近づいてくる。
「あの……これってもしかして、アーサーってやつの仕業ッスか? 」
「あー……やっぱりお前だったのか、盗み聞きしてたの」
「それは……! その……ごめんなさいッス。でも、誰にも言ったりしないッスよ」
「……まぁ、お前の処分は学長が下す。まずは目の前の謎を解き明かそう」
アラムはそう言って、震えながらもプールの上に降り立つ。氷からも発せられるひんやりとした冷気を感じながら、徐々に興奮が抑えられなくなっている。
「すげえ……すげえな、これ! こんなでっかいプールの水が氷の塊になってるなんて! ヒョウガ、ユーシア。お前らもはやく来いよ! 結構ツルツル滑るから気をつけろよ! 」
氷の上は、白いモヤがかかり見通しが聞かない。アラムは何度も飛び跳ねてみるが、ヒビすら入る気配がない。プールサイドからヒョウガとユーシアが飛び降りてくる。二人の身体はアラムに衝突し、アラムは前のめりに吹っ飛んで、氷の上に顔面から着地する。
「お……お前らなぁ……! 」
「すいません、アラムの旦那! 」
「す、すいませんッス……あれ? モヤの中で何か動いたッス! ヒョウガさん、行ってみるッスよ! 」
「ヒャッハァーー! 面白え! プールを凍らせた犯人の正体、暴いてやるぜェ! 」
ヒョウガとユーシアは倒れたままのアラムを踏み越えて、モヤの中へと走って消えていった。アラムは二人への報復を誓いながらも、まずはこの状況を推理することにした。犯人の方は二人に任せても問題ないだろう。
「まあ、あいつに聞いてみるのが早いかな」
ユーシアは白いもやの中で、ヒョウがとはぐれてしまっていた。どこを見渡しても人影は全く見えない。
「……ヒョウガさん、どこにいるッスか!? 」
ヒョウガの声が返ってくる。
「俺ァここだ! 」
「ここって、どこッスか? わかんないッスよ! 」
叫ぶ二人の間の抜けたやりとりに、遠くからアラムが口を挟む。
「ああー、とりあえずプールから出ようぜ。このままじゃ何もわかんねえ」
ユーシアは入り口の方へ戻ろうと振り返るが、何かの気配を感じて立ち止まる。小さな足音、わずかに足元に伝わる振動。
「なんッスか……これ。 ……生き物?」
ユーシアの足元にいたのは、白い毛に覆われた四足歩行の生き物であった。




