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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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14 学長と秘書

 学長室は壁の殆どが古文書のデータを記録したデータ端末で埋め尽くされている。貴重なデータを整理、分別して異なる端末に種類ごとに保存しているらしい。

 中央には大きなテーブルとソファが2つある。学長はワイズオウル地区の代表議員を務めているため普段から惑星リバイブの著名人たちが度々やってくる部屋でもある。

 部屋中を照らすデータ端末の青白い光が、より一層この空間を不気味に感じさせる。部屋の隅の方でで書類データに目を通していた男が立ち上がり横にいた秘書に端末を渡すと、アラムたちにこちらへ来いと合図をする。


「久しぶりだなアラム。ヨシノもよく来てくれた。まぁ、そこに座ってくれ」

「お久しぶりです、学長」


「随分とよそよそしいじゃないか、我が息子よ」

「……おや。道楽息子、の間違いでは? 」


「その件に関しては、本当にすまないな。何せアーサーの研究はまだ世間に公表することはできない。極秘で進める必要があるからな」

「……まぁ、俺もわかっててアーサーの研究してるから」

 

 【ワイズオウル超高等学院】の学長コウゾウは、アラムの実の父親である。コウゾウは惑星リバイブの古代アース研究の第一人者である。様々な惑星へと伝わったアースの文化や風習、また古文書から解読された当時の生活や社会を、AIやリバイブの技術駆使しながら考察し、再現してきた。本校舎のステンドグラスや、ストームイーグル地区でフランクフルトを売っていた屋台などの施設もアース研究から再現されたものだ。

 

「ヨシノについて何かわかったのか? アラム」

「ああ、いくつか進展があったぜ」

「あのね、あのね。ヨシノたちね、フゥと会ったよ! 」


 ヨシノが喋った瞬間、学長と秘書は驚いてヨシノの方を見る。それもそのはずだ、アーサーたちはモールス信号で会話をするようにプログラムされている。事実、最後にヨシノと会ったときには会話などまったく出来なかった。


「ヨシノが……喋った? 一体、何があったんだ? 」

「ああ……ちょうどそれも試そうと思ってたとこなんだよ。こっちこいよ、ヒョウガ」


 そう言って、アラムは長髪の秘書を手招きする。秘書は警戒するように立っていたが、学長が促すように頷くとアラムの方へと近づいてきた。アラムは秘書に小さな錠剤を手渡す。


「ほら、これ。一つ貰ってきたんだ、飲むタイプの自動翻訳プログラム」

「飲むタイ……何を言ってるんだ?」

「学長、いいから黙って見てて」


 ヒョウガは恐る恐る錠剤を飲み込む。そして、全員の視線が集中する中でゆっくりと言葉を発して見せた。


「あ……あ……喋れて……る」

「おお……本当に喋れるようになるとは」


すると、ヒョウガは態度が一変して、雄叫びを上げた。 

 

「ヒャハアァァァっ! いい、こりゃあいいぜぇ! 最高だぜ、コウゾウの旦那!」


 アラムとヨシノはヒョウガの変わりように唖然としていたが、学長は少し涙ぐみながらヒョウガの方へと近づいていき、その手を握った。


「ああ……これでやっとお前と話せるな、ヒョウガ。私は息子のように秀才ではないから、モールス信号をうまく使うことができなかった。いつも身振り手振りでやりとりをすることしか……本当に嬉しいよ」


「俺もだぜ、旦那! こうやって話せるだなんてヨォ! アラムの旦那にもマジ感謝だわ! 」

「お、おう……そりゃなにより」




 一しきり奇声を上げた後、落ち着いたヒョウガは今まで通りの物静かで冷静な秘書モードの立ち振る舞いに戻った。ヒョウガを発掘したのはコウゾウだ。それからはコウゾウと行動を共にするようになり、今の立場は学長秘書だ。粗暴な振る舞いはご法度なのだ。

 そして、アラムはフゥという風の記憶を護るアーサーと、その相棒シェンザーについて話し始める。


 「なるほど、そのシェンザーとかいう科学者は確かにアーサーについて独自に研究を重ねているようだ。その男がアーサー研究を科学的分野から支援してくれる、と」


「そうだ、そのために早急に研究施設を準備してもらいたい」

「うぅむ……さっきも言ったようにこの研究は極秘だ。簡単に研究室を建てるのは……」


「その事も考えた。だから、シェンザーを技術職の教師として雇ってみたらどうだ? 他の惑星の知識にも精通してるみたいだったし、ケービロイドの基礎を作った実績もある。技術も知識も申し分ないだろ」


「なるほど……非常勤講師というわけか。彼の新たな開発・研究のためということならば誤魔化しもきくかもしれないな」

「近いうちに二人を連れてくるよ。面白い奴らだから、学長も気にいると思うぜ」


ガタッ。


扉の向こうから物音がして、全員が扉の方を見る。 


「誰だ? 入っていいぞ」 


学長が扉の外へ呼びかけるが、返事はない。代わりに誰かが慌てて廊下を走って逃げていく音が廊下に響いていた。


「まずいな……聞かれたぜ、アーサーの話」

「うむ……この情報が漏れることは避けねばならない。ヨシノの能力で追うことはできるか? 」


「……確かに【サクラダヨリ】は音を信号に変えて伝播できる。でも校内でそれを使うと、皆にアーサーの存在が気づかれるかもしれない」

「ならば、アラム。今の犯人を突き止めてくれ。何かあってはまずいからな、ヒョウガを連れていけ。シェンザー君の件に関してはそれからだ」


アラムは黙って頷くと、ヨシノとヒョウガを連れて学長室を飛び出していった。

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