13 ユーシアの目的
【ワイズオウル超高等学院】の本校舎は敷地内中央にそびえ立っている大きな建物で、その外装はアースの古文書にあったレンガ造りの建物を模して造られている。高く伸びる円柱に近い形状の建物の上部には、これまた古文書に記載されていたアースのステンドグラスと呼ばれるものを応用して作られた色鮮やかなガラスの巨大な球を装飾してある。その派手な外見はリバイブの民の間でも大変人気で、観光目的でこの地に足を踏み入れる者も少なくないという。
「全く、いつ見ても趣味悪いぜ。古代アースの崇高な技術を観光客の見世物にするために使いやがってよ」
「そ、そうッスか? 自分は、凄く綺麗だと思うッスけどね……」
アラムは少し機嫌が悪く、愚痴をこぼしながらスタスタと本校舎に向かって歩いていく。ハルバートの言っていたアラムの噂はやはり学生たちに浸透しているらしく、通りすがりの人々はコソコソと話しながら冷ややかな視線をアラムたちに浴びせかける。アラムは深く溜息を吐いて、空気を変えるためにユーシアに質問をする。
「それで、ユーシアはどうしてこの学院に留学を? 」
「それは……サンディナを救う方法を見つけるためッス。食料難や貧困を改善するために、まずは知識が必要ッス。
まずはここで1から色んなことを学んで、その後は惑星マキアに留学して星を救うための科学技術を探すつもりッス」
惑星マキア。アースの戦争から逃げ延びた民の中でも、最も高度な科学力を有している星である。ちなみに、先日手に入れた【ベンディングシステム】もマキアの科学者たちの手で開発されたものがリバイブへと流通している。
「すごいな……お前の方が、充分ヒーローじゃないか」
「そ…そんな、まだまだ自分は何も成し遂げてないッスよ! 先程のお二人みたいに虐げられる誰かを護れる、そんな偉大な姿こそがヒーローッスよ! ほんとに、ほんとに憧れるッス! 」
「いや、そんな大げさな……」
あまりにキラキラした目で顔を覗き込んでくるユーシアに、アラムは困ったように頬をかきながら目を逸らす。ヨシノも急に褒められて、恥ずかしそうに照れている。
「俺もヒーローになりたいッス。皆を救う最強のヒーロー。それが、自分の目標ッス」
燃えるユーシアを見て、アラムは思わずニヤニヤしながらその頭を撫でる。
「いいぞ! お前ならなれるよ、絶対」
「ほんとッスか! うおおおおお、頑張るッス! 」
輝くステンドグラスの球は、近くで見ればその神秘的な輝きが増して見える。ヨシノとユーシアが揃って校舎を見上げていると、アラムは近くにいた警備員に声を掛ける。
「どうも~、こんちは〜」
「あなたは……アラム殿!? これはこれは、お久しぶりです。どのようなご要件でしょう」
「ちょーっと学長に大事な用事があってさ……学長室にいるんだろ?」
「いらっしゃると思いますが……」
「了解、おじゃまするね」
警備員の肩をポンと叩き、館内へと入っていく。ユーシアとヨシノも、頭を深く下げる警備員の横を慌てて通り抜ける。
「学長に用事って……アラムさん、一体何者なんスか? 」
「俺か? そうだな……謎多き考古学者、だな。かっこいい響きだ」
確か学長室は一階奥にあったはずだ。学生達が授業を受けるのは2階より上の階なので、ここでユーシアとはお別れだ。
「なぁ、ユーシア。さっきの……ハルバートだっけ? あいつがお前に対してしてること、学長に報告しとこうか? 」
「ああ……いえいえ。大丈夫ッスよ。あんなの、文字通り痛くも痒くもないッスから。ハルバート君とは、これから良いライバルになると思うんッス」
「そうか……わかった。ありがとな、ユーシア。面白い話をいろいろ聞けてよかったよ。しっかり頑張って、サンディナを救うヒーローになれ!」
「は……はいッス! ありがとうございましたッス! 」
深く頭を下げているユーシアに手を振ると、アラムとヨシノはゆっくりと学長室の方へと歩いていく。ユーシアは頭を上げて二人が歩いていくのを確認すると、こっそり二人の後をつけていく。
アラムとヨシノは背後からつけてくるユーシアに気づかないまま、学長室の扉をノックし中へと入っていく。
「学長の予定を割いて話ができる人物なんて、そうそういないッスよね。これは……もっとすごい話が聞けるかもしれないッス! 」
どうやら、学長室には見張り役がいないらしい。不思議ではあったが、この状況ではむしろ好都合だ。
ユーシアは周囲に誰もいないことを確認して、扉越しに聞き耳を立てる。そこで行われていた話は、ユーシアが想像もしていなかった内容だった。




