104 生き残りたきゃ必死になれ
不敵な笑みを浮かべるサバンナの挑発を合図に、集まったケービロイド達は豪雨のような集中砲火を浴びせる。サバンナはそれらを先程のように防御することはせずに、お得意の四足歩行で惑星リバイブの大地を駆け回りながら軽やかにかわしていく。
開いていた距離は徐々に詰められていき、やがて一体のケービロイドが先程のように頭部を簡単に外され外されて殴り飛ばされる。サバンナはそうやって一体ずつ、派手に壊さずに確実に無力化していくつもりらしかった。
しかし牧場区中に散りばめて配置されているケービロイド達は、この戦闘の最中にもジュノの指示によってどんどんこの場所に集結してくる。その数は既に10機になっていて流石のサバンナでもそう簡単には避けきれなくなってきている。
「ったくよぉ、めんどくさいったらありゃしないぜ」
サバンナはそういうと速度を上げて銃弾をかわしながらジュノの前へと詰め寄った。ケービロイド達も主人を撃つ可能性があるからか、困惑したようにその場で固まってしまう。
「く、くるな……くるなでありますです! 」
「はいはい、いいからお前はちょっとどいてろ」
恐怖で動けなくなったジュノを押し退けるように倒すと、片腕を抑えてうずくまっていたアラムの首元を掴みケービロイドの前に盾にするように突き出す。ジュノも流石にまずいと思い、今にも発砲を再開しようとしていたケービロイド達に待機命令を下す。激昂したリオンがサバンナの方を向いて叫ぶ。
「おい! お前何してんだよ! 」
「うるさいな、人質だよ。どうせ俺の目的もお前らの本部だ。大事なお客をもてなすのに飯とか作る調理道具? ってやつを奪わなきゃなんないからよ。怪我人なら面倒くせぇ抵抗もなさそうだしよ、丁度いいだろ?
人間に味方するアーサーよ。お前もこいつが殺されたくなきゃ、少し大人しくしてろ……あ、そうだ」
そう言いながらサバンナは何か思いついたように爪を展開して、何か薬品のカプセルのような物をセットすると近くにあったかなり大きめのゼルの塊に突き刺す。
「せっかくの機会だしな、面白いもん見せてやるよ」
サバンナが爪を抜くとそのゼルは色と姿を変えていく。やがて地面から溢れてくるゼルを取り込んで、その姿はどんどん大きくなっていった。
「こいつは他のアーサーからもらったプログラムの一つで生み出したアースの生物の姿に変わったゼルだ。確かこいつは……そう、クロサイとか言ったかな。プログラム自体は俺好みに少し凶暴な性格に設定されてっからよ、生き残りたきゃ必死になれ。それじゃ」
「まじか! すげええええ! アースの生物がこの目で見れるなんて! 頼む、俺を降ろしてクロサイを触らせてくれええ! 」
「なんだこいつ、急に元気になりやがった!? 」
痛みよりもアースへの欲望が勝ったアラムが少し暴れるがサバンナが右腕をつんつん突くと、衝撃的な痛みにアラムはまた悲鳴をあげてから沈黙し動かなくなった。
サバンナはアラムを背負うと地面にしゃがみ込み一気に大地を蹴る。ケービロイド達はクロサイを商品として育てているゼル個体と認識している為に攻撃用の銃火器を使えないらしく、抑え込むのに精一杯のようだ。サバンナを止めることまでは出来そうにもなかった。加えて、人間とゼル以外の生物が存在しないこの惑星リバイブではこれほど体格差のある敵と戦うことを想定されて作られていない。
何機かのケービロイドがクロサイに突撃され、踏み潰されて粉々に砕け散っていくのが見える。動けずにその惨状を呆然と見つめているジュノを引き起こして、リオンが叫ぶ。
「おい、ジュノ。お前は先にあいつを追って戻れ。俺は土地勘ないから辿り着けるかどうかもわかんないし」
「で、でも……リオンはどうするでありますですか」
「あの暴れん坊を止めてから追いかける」
「……そんなことが出来るでありますですか!? 」
リオンはその質問には答えずクロサイの方へと向かって歩き始める。既に集結したケービロイド達は振り払われ踏み潰され、半数以上が破壊されてしまっている。周りの出荷前のゼルに被害が及ぶ前に、あれを止めなければならないことをジュノも分かっていた。ジュノはリオンの背中を少しの間不安そうに見つめていたがやがて意を決したように、サバンナを追いかけて走り出した。
ジュノが走り出す足音を聞きながらリオンは【ベンディングシステム】を取り出して装着する。
「あの生物を構成しているのはゼルだ。プログラムのセキュリティさえ突破出来ればゼルの状態にリセットできる……後はどうやって動きを止めるかだな。こいつで色々試してみるか」
ドーム内で爆音が響く。ケービロイドが踏み潰され、クロサイの足下で爆発が起こったのだ。幸いにもクロサイに怪我はないようだったが、どうやらその肉体はアースにいる種よりも強靭なものになっているらしかった。 さらに爆発によって削れた地面の下からゼルが勢いよく湧き出て来たのが見える。それをクロサイが食べ始めた。




