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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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102 故郷の感触

「アラムとそのお仲間の皆さんには【メカニカルフォックス】に滞在の間はこの部屋を自由に使っていただいてもらうでありますです! お仲間の方々も真相究明のために協力してくれるということですので、この会議室を急遽宿泊用の大部屋に改造したのでありますです! 

 申し訳ないことにこの【メカニカルフォックス】は地区全体が工業に特化していて宿泊施設がないのでありますです。少し狭いかもしれませんが、ごゆっくりとくつろいで欲しいでありますです」



 どうやらここは普段から会議室として使われている場所らしかった。ジュノが机や椅子を端へと寄せて寝具を人数分準備してくれたらしい。きちんと掃除されている床に置かれた寝具は、この【牧場区】で作られたゼルを用いて、隣の【工業区】にあるとても有名なで工場で作られたものだった。これは惑星リバイブだけでなく他の惑星でもとても評判の良い品で、地区代表のゲインが運営する【メガ•アクゥィーラ】でも品薄のものだった。ジュノも自慢げなところをみると、相当準備には苦労したことが伺える。


「すごいの! とってもふかふかなの〜……」

「……ヨシノ? おーい……」


寝具に飛び込み顔を沈めたまま微動だにしなくなったヨシノを見てアラムは駆け足で近づくと、その身体を少し強めに揺らす。


「……寝ている。 寝ているよ、リオン」

「嘘だろ、早すぎる」

「ダイブしてから1秒も経ってないでありますですよ……」


深い眠りに入ってしまったヨシノは、揺らした位では起きないほどだった。それほどまでに心地よい眠りなら早く味わってみたいものだ。

 アラムは2人にばれないよう、試しにこっそりとヨシノが眠る寝具の端に手を置いてみる。……なるほど。これは、まずい。睡魔の誘惑に心を奪われてしまう前に、アラムは思い切り頭を振り回した。ジュノはアラムの様子を見て眠られてしまってはまずいと感じたのか、早口で話を進めていく。



「と、とりあえず荷物を置いたらオイラに着いてきて欲しいでありますです! まずはお二人にこの地区のお仕事を知ってもらうでありますです! 」

「お……おう、そうだ。そうだったよな! それじゃあ頼むぜジュノ! 」





 一通り館内を歩いて牧場区の職員たちに挨拶をした後、とうとう三人は柵の内側へと足を踏み入れていく。軽々と柵を飛び越えるジュノに続いてアラムとリオンも真似して柵を越えていく。


 さっさと歩き出す2人とは対照的に、アラムは目を潤ませながら目の前に広がる景色に感動して立ち尽くしていた。彼が今降り立った地面は、惑星リバイブに産まれてから一度も踏んだことがなかった本物のリバイブの大地だったからだ。ドームの床ではない、本物の大地。



 今までアラムが生きてきた世界は、全てが人間の手で生み出された世界。それは惑星リバイブにおいて人という種が生きていくために仕方のないことで、誰もがそれを唯一無二の手段だと信じてこの作り物の世界に生きている事を疑うことなどしない。これが最善かつ幸福であることを。


 アラムとてその価値観を否定したいわけではない。それでも靴を突き抜けて足裏に感じとれる硬さ、一歩間違えれば自分の柔らかな肌など簡単に傷ついてしまいそうなほどの岩肌に自分は今立っている。その事実が神秘的でたまらなかった。サバクによってテラフォーミングで再現された砂の上を歩いている時とはまた少し違う、本当の故郷の感触だった。


 我に帰ったように、アラムは2人の背中を追い始める。アースの大地を走り回ってきたであろうリオンや、若くしてこの場所の地区代表に選ばれるほどリバイブの大地に慣れているジュノには簡単に追いつけるものではなかった。


「ちょ、ちょっと……待ってくれぇぇ! 2人とも、置いてかないでくれぇぇ! 」

「遅いぞ、アラム。早く来ないと置いていくぞ」



 ジュノとリオンにどうにか追いついたアラムが息を整えるのを待ってから、ジュノは近くにいた緑のクリアパーツがよく目立つケービロイドを指差して説明を始める。


「あのケービロイドは【メカニカルフォックス】牧場区専用装備でありますです。ゼルという物質はその性質上、地面から滲み出て空中へ球体に分裂して浮かび上がってくるものですが、その滞空時間は3〜6分程度だと言われているでありますです。


 本来、その時間が過ぎてしまうとまた地面に落下してリバイブの中心へと溶け込んでいってしまうでありますです。しかし滞空時間の間にこのケービロイド達が【形状維持プログラム】を専用銃で撃ち込むのでありますです。これでゼルは地面にもう一度溶け込んでしまう事なく、地面の上で球の状態を維持したままこの牧場区で育てられるのでありますです」


「なるほどな、それで疑問が解けたぜ。ドームの外でゼルを見た時は地面に溶けていくのを確認したからな」

「ドームの外で……? あ、あの……ドームの外は酸素がないはずでありますです。アーサーは酸素がないところでも生きていけるのでありますですか? 」



 アラムとリオンは顔を見合わせるが、確かジュノには空気を司るアーサーがいるという話をしていなかったことに気づく。アラムは笑いながらジュノに説明すると、納得した上でその科学に感動したようで大騒ぎし始めた。


「それって、すごい事でありますですよ! その技術を応用すればこの惑星リバイブを丸ごと人類が住める惑星に変えられるかもしれないでありますです! 是非ともその仕組みを解明させてほしいでありますです! 」


「別にそれぐらいはいいんじゃないか? リオン」

「そんなの、記憶を護る本人次第でしょ。俺だっていくら仲間でもこいつらに自分の身体を分析されんのなんか嫌だし。そのアーサーがお前のことを本気で信用すれば、チャンスはあるかもな。

 ま、どっちにしても俺たちと一緒にいる訳じゃないし。アーサー達にとっても酸素供給はライフラインだから、あいつは自分が危険な目に遭わないようにこの惑星のどこかで居場所を隠してる」


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