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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
101/370

101 孤高のアーサー

「うらああああっ! 待てこら、いい加減逃げ回ってるんじゃねえよ! 」


 サバンナを疾走する影が二つ、砂埃を上げながら休む事なくどこまでも走り続ける。片方は角の生えた獣で、もう一つの影から逃げるように時々後ろを振り返りながら全速力で走り続けている。


 その生物を追いかけているのはテラフォーミングによりこのサバンナの環境を作り出したアーサー、サバンナだ。他のアーサーとは違い四足歩行で走るサバンナのいきいきとした表情で走るその姿を、ドウクツは遠くから視界に捉えた。


「おーい、ちょっと止まって! 」


 走りたくないドウクツは大声でサバンナに呼びかける。サバンナは走る速度を上げて獣の前へ回り込み立ちはだかると、両手に装備した鉄の爪を展開すると目獣に飛びかかり一撃で息の根を止める。倒した獣を抱えながら、今度は笑顔でドウクツの方へと戻ってきた。

 

「おう、確かちょくちょく俺んとこにくるアーサーのやつだっけ。あの話なら、何度も言ったけどお断りだぞ。俺はお前らとは組まん……土産があるなら勿論貰うけどな! 」

「あー……まぁ、そういうだろうと思ってたよ」



 ドウクツはそう言いながら小さなカプセルをいくつか投げ渡す。サバンナは嬉しそうにそれを受け取るとまるで宝物を眺める子供のように、それをドームの照明に照らしながら恍惚とした表情で眺める。

 ドウクツはサバンナが肩に背負った獣を眺める。アースで暮らしていたガゼルという生き物によく似ているその生物は、サバンナの的確な一撃によって喉元を裂かれている。これはドウクツが彼に渡した土産によって作られたものだ。


「それ、どうするの? 」

「……ああ、この獣か? もちろん今日の朝飯だ、これから隠れ家に持ち帰って食うんだよ。こいつらも、ここのゼルで出来た身体だから俺たちが食っても問題ない。無味無臭なゼルを食ったってなんか満足しねぇしよ、ほんとお前の仲間がくれたプログラムは最高すぎだぜ! 」


 そういってガゼルを持ち上げながら豪快に笑うサバンナの前で、ドウクツは自身のエネルギー不足を感じながらおずおずとつぶやく。


「あのー、俺も一緒に食べていい? ここまで何も食べてないし」

「ああ!? マジかよ……まぁお客様だしお土産ももらったし、仕方ねえな。着いてこいよ、俺の寝床へ招待するぜ」


 


 サバンナの寝床はこのドームの中にある、とても小さな丘を削りくり抜いて作ったあまり広くない穴の中だった。地面には、ゼルの獣から剥ぎ取った毛皮を使って作られた絨毯が敷かれてありとても座り心地がいい。中は薄暗いがちょうどドームの照明の光が入るようにくり抜かれた窓もあった。


「さてと、それじゃあとっとと食おうぜ」

「えっ……どうやって食べるの? これ」


「どうやってってお前……このまんまかぶりつく以外にあるか? 」

「いや、なんか調理とかさ……動物の肉を食うなんて俺、したことないからこのまんまだとちょっと怖い」


 


「はあ!? まーったく、しょうがねえ奴だな。アーサーってのはこんなにワガママで軟弱な奴ばっかなのか? 調理って言われてもな……とりあえず人間の住処を襲って調達するしかねぇかな」


 サバンナはそう言って獣を抱えて立ち上がると、全力疾走のための準備運動を始める。ドウクツはあまりの空腹で倒れそうなので、この際サバンナがちょっと暴れて人間に被害を与える事には目を瞑ることにした。ふかふかの毛皮の絨毯の上で寝転がってドウクツは小さく呟く。



「おれが作った洞窟が地面の下に何本もあるよ。入口の場所、教えようか? 」


「あぁ? いや、大丈夫だぜ。この場所に1番近い人間の居場所は分かってる、まっすぐ走れば1時間程度だ」


 そう言うと、サバンナは毛皮から作った布を使って自分の顔を覆う。服装も、より目立たない色の毛皮を纏う。入り口の前でしゃがみ込んで地面に手をつくと、そのままドームの照明の下へと走り出し、すぐにその姿は見えなくなった。






「うおぉーーーっ、広いな! ここが【メカニカルフォックス】の牧場区!! 招待してくれてありがとうな、ジュノ! 」

「ほんと、すーっごく広いの! ヨシノ、早く中に入りたいの! 」


 牧場区のゼルファーム管理ビル【翡翠社】の屋上から、人が入らないように作られた長い柵の向こうに広大なアースの陸地を眺めながらひとしきり叫んだアラムとヨシノは、笑顔で振り向くとそれぞれジュノの手を握りぶんぶんと振り回す。リオンは到着してからずっと騒いでいるアラムのおでこに鋼鉄のチョップを入れると、アラムは大袈裟に転倒しながら痛みに辺りを転がり回る。



「痛っっってぇぇ! 何するんだよ、リオン!? 」

「さっきから騒ぎ過ぎなんだよ! 忘れてないだろうな、俺たちがここに呼ばれた理由を」

 

「そりゃあもちろん。奥地にいる、かもしれないアーサーの捜索だろ? 」


 地区代表会議が終わったその日のうちに、アラムとリオンは学長の指示でジュノに同行して【メカニカルフォックス】へとやってきたのだ。ジュノの話によれば、この荒れ果てて露出した岩肌だらけの大地の向こう側にアースの自然によく似た光景が確認されたらしい。


 それがアーサーの所業なのかはわからないし、少なくともその地に入り込んだ職員がいるわけではないため本当にアーサーが存在しているのかも定かではない。だが、もしもアーサーがいたのならアラムはどうにか説得して味方になってもらうつもりだった。


「それでは、この【翡翠社】を案内するでありますです。さあ、早く行きましょう! 」

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