100 革命の雄叫び
オサと学長が【ホーム】奪還と職員たちの救出を画策している頃、当の【ホーム】を制圧した革命軍の主要メンバーたちは地区代表会議に出席した一般兵……の装備を拝借していたアスカを取り囲んでいた。
「聞いたか、皆んな。3日後に臨時編成のトレインがこの【ホーム】へとやってくるぞ」
「夢みたいだよ! 本当に外の世界へ行けるんだね! 」
「よかったのぅ、ゼク」
ミツリンとゼクが大喜びではしゃいでいるのをアスカは少しの間眺めていたが、やがて2人を急かしながらまた屋上へと向かう。【ホーム】にいるみんながこの地区代表会議を経て決定されるアスカたちの作戦を心待ちにしているからだ。
アスカは先日のように屋上に立つとまた、下にある囚人達の集落に向かって高らかに大声を響かせる。
『やあやあ、革命軍の同志たちよ! こんな時間だが、まだ起きているのなら俺の話を聞いてくれ! 』
人々がビルの方を見上げるとそこには叫ぶアスカとその斜め後ろにゼク、さらに奥にはフードを被った4人の人影が立っている。呼びかけに応えるようにビルの下へ続々と集まってきたのは、この【ホーム】に捕らえられた犯罪者の烙印を押された者たちと、先祖代々この【ホーム】に隔離されている危険因子とみなされた者たちだ。
彼等は皆、ここにいる理由もその目的も様々だ。しかし、今はアスカの下に集まり【ホーム】からの脱出という同じ目的を持つ同志であった。
『トレインがやってくるのは3日後だ。今にして思えば、俺がここへと連行されてきたのは全てこの日の為にあった。俺たちの目的は様々だ。復讐を望む者、大切な人との再会を望む者、そして……外の世界への憧れを抱く者』
そう言って、アスカは後ろに立っているゼクに目配せをする。ゼクは頬を赤くしながらアスカの言葉に何度も頷く。ゼクと出会ってからほぼ1年、この日の為の途方もない準備をケービロイドや職員の監視を掻い潜りながら重ねてきた。その努力ももうすぐ実り、そしてリバイブの歴史が変わるのだ。そう、自分たちの手によって。
アスカはゼクに微笑むと少しの間目を閉じて、深く息を吸い込む。そして気合の入った大声で同志たちへ呼びかける。
『我らが同志たちよ、心の準備はいいかっ! 我々が抱き続けた全ての夢は、本当に3日後に叶う。
いいか、俺たちなら何だってできる! 恐れずに立ち向かうんだ、自分を縛りつけてきた、呪うべき運命に! 』
ウオオオオォォォォォォォォッ!!
アスカッ! アスカッ! アスカッ!
【ホーム】全体が揺れ動くほどの歓声と拍手が、ビリビリと皆の身体を痺れるほどに揺らし、響く。
アスカは少しの間皆に向かって手を振り続けていたが、やがて何かを思い出したように背後にいたフードの老人、アーサーの一人であるミツリンに声をかける。
「じっちゃん、そういえばドウクツはいつ帰ってくるんだっけ? あいつが戻ってこないと、アーサーの方の話も進まないんじゃなかったっけ? 」
「そうじゃな……もうすぐ帰ってくると思うがのぅ。最近見つけた仲間のサバンナを説得しにいくと言っていたのだが……あの子はアーサー達の中でも特殊な考え方をする奴じゃ。ここへ連れてくるのに、手こずっておるのかもしれんのぅ。
まぁいつものように手土産も持っていかせてあるしのぅ、今回こそは……って、アスカ。どうしたんじゃ、その表情は? 」
ミツリンは切なそうな、悲しそうな状況で自分を見つめてくるアスカに驚き、近くに腰掛けながら質問する。アスカも自分がそんな顔をしていた事に驚きながらも、本音を隠さずにハッキリと言った。
「いや……じっちゃん達と一緒にいられるのもあとちょっとだと思うと、やっぱり寂しいなーと思ってさ」
「嬉しい事を言ってくれるわい。それならのう、アスカ。ワシらと一緒に着いてくるかのぅ? 我々と共に、アースへ」
「んー、そうだな……考えとくよ」
【メカニカルフォックス】の牧場区は、ドーム内のおよそ6割と居住区だったドーム外側エリアの半周を利用したゼルの生産施設である。牧場区の部分は他のドームとは違い、地面から浮かび上がってくるゼルの球体をドーム内へと取り込む為に床がなく地面が露出している。
牧場区の端にある元居住区画、あまり人の寄りつかないステーションの反対側に位置する地面に突然穴が開き、中からドウクツがひょっこりと顔を出す。すっかりとサバンナのテラフォーミングによって景色が変貌を遂げたドーム内を眺めながら、ドウクツは頭を抱えながらしゃがみ込む。
「もう……こんなにエネルギーを消費するなんて。早くあいつを連れて帰って、ゆっくり寝よう」




