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追憶のEarth-er  作者: だーぎー
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01 風が導く運命の出会い


 惑星リバイブ。遠い故郷の青き星は、全世界を巻き込んだ戦争によって紅く染まり、死んだ。遠い空から逃げ延びた一部の人々は故郷の美しい地表とは遠くかけ離れた石の塊のような世界に降り立った。

 幸い、この惑星には水や食料になるような未知の生物が地下から湧き出していた。彼らは現在に至るまでに幾度も挑戦と失敗を繰り返し、独自の科学と研究によって自分たちが生活可能な6つのドームを確立した。






ツー、ツー、ツッ、ツッ。

ツー、ツッ、ツー、ツー。


 右手の中の小さな桃色の花弁を親指でつつくように少年は静かに呼びかける。少年の呼びかけに呼応するように、一瞬暖かい風が彼の前髪を揺らす。

 高層ビルの上から街を見下ろす。空から注ぐ光を街中のガラスが反射して、まるで大きな宝石のように輝きを放つ。とはいえ金持ちの人間だけが価値を見出すその美しさは、少年にとっては余り興味のないものだった。


ツー、ツー、ツッ、ツッ。

ツー、ツッ、ツー、ツー。


 少年の指先から、花弁を通して信号が伝播する。今度は強く少年の顔をひっぱたくように強風が唸る。少年は思わぬ一撃に顔を覆い隠しながら数歩後ずさりする。初めて感じる未知の感触に目を閉じて酔いしれる。吹き飛ばされたストローハットを拾いながら、顔は喜びを隠せずにいた。

 少年は確信した。明らかに起動している。この街のどこかで。先程とは違い、強風は長く続いた。少年は風が止むまで屋上で立ち尽くしていた。


「いいねぇ、これがストームイーグル名物の【街吹くそよ風】か! シビれるぜ」


『ねえねえ、アラム』


何者かが少年に呼びかける。少女はアラムと呼ばれた少年の横に並んで顔を覗き込んだ。


「もう見つけたのか? さすがだな、ヨシノ」


少女は黙ってうなずく。アラムの顔が不敵な笑みを浮かべる。腰の小袋から小さな飴玉を取り出し、少女の口に放り込む。


『ん〜〜! ヨシノ、これ好き! 』

「でも、食べ過ぎは良くないから一つだけだぞ。さぁ、早速行こうぜ。お前の仲間のところへ」


アラムは桃色の髪をポンポンと撫でると、慌てるようにビルの階段へと走り出す。ヨシノは嬉しさに表情を崩しながらアラムの後を追った。




 【ストームイーグル】は惑星リバイブの人工ドームで唯一の商業特区であり、時間を選ばず多くの人々が訪れる場所だ。近年この地区は「風が吹く街」としても評判であり、どこからか吹く安らぎの風が国民の心を掴んで離さないのだ。


 風は絶え間なく吹いているわけではなく数分おきに一度、それも一秒に満たない短さだった。アラムはある目的のために、この風の発生源を特定しようとしているのだ。


 ヨシノの案内で、見知らぬ土地を駆け抜ける。街全体を見渡せるようにと、中心地を見渡せる高いビルの屋上に登っていたのだがどうやら目的地は郊外にあるらしい。徐々に人影が減っていき、とうとう街の東側にある放棄された住居地区へと辿り着いた。

 「この先、強風域につき立入禁止」の看板が道の真ん中に立っていた。この先に一体どれほどの強風が待ち受けているのだろうか。アラムは思わず息を呑んだ。


 しかし彼の心配とは裏腹に、一向に風が吹くことはなかった。今まで何度も吹いていた風が、ぴたりと止まってしまったのだ。



「ヨシノぉ……本当にここで合ってるのか? 」


 アラムは自信満々に歩き続けるヨシノに対して不審の目を向けた。


『アラム、ヨシノは嘘ついてないよ? 』

「そうだよなぁ……頑張って探すしかないか」


 確かにヨシノが言う通り、彼女の持つ探索能力はかなり優秀なものだった。しかし強風域に指定された地区で風が全く吹かないというのは一体どういうことだろうか。アラムは何やら嫌な予感がした。


 ヨシノが一軒の廃屋の前で立ち止まる。そこには劣化により文字が外れ朽ちた看板が掲げられていた。窓ガラスは割れて散乱しており、歩くたびにジャリジャリと音がする。

 ヨシノは迷うことなく中へ入る。玄関の照明のスイッチを何度か押すが、明かりは案の定点かなかった。やはり電気は通ってないらしい。しかし何か用途不明の機材が並んでおり、それらはどうもこの建物ほど古びてはいないようにも見えた。


 奥へ進むと、地下へと降りる階段があった。ヨシノはアラムの方を向いて階段の先を指差す。 


『この先だよ、はやく』


 暗闇の中地下へと続く階段を降りていく。地下は思っていたより乾燥していた。恐らく風が吹き続けることによって乾いたのだろう。アラムは少し期待が高まった。

 通路の先にあった扉は風のせいか開いたままだった。部屋には当然窓もなく光も全く入らない。壁伝いに恐る恐る部屋へと足を踏み入れる。


 「ゔゔゔぅぅーーーーー」

部屋の奥から人の呻き声がする。床に小さな人影が倒れているのが薄っすらと見える。目と口と手を縛られているらしい。どうにか身体を動かして抜け出そうと藻掻いている。


 無視して部屋中を見回すヨシノを置いてアラムは慌てて駆け寄り縛られた手を解いてやった。 


「おい、大丈夫か? 」


ガムテープを剥がすと、少年は慌てて身体を起こす。


「ハァ……ハァ……どなたか存じませんが、ありがとうございます」


 少年は慌ててお礼だけ言うとアラムたちを放ったまま、部屋を見渡している。机の下やクローゼットなどを順に確認していく。状況がわからないまま呆然と座り込むアラムに、ヨシノが近寄り話しかける。


『アラム、ここにはいない。さっきまで確かに反応があったのに』

「え、あの子どもじゃないのか? じゃああれは誰なんだ? 」


 アラムとヨシノがヒソヒソとやり取りをしていると、その音を聞いて少年がピタリと立ち止まる。二人の方を驚きの表情で振り返ると、駆け足で急接近した。息がかかるほどの距離まで顔を近づけられてアラムは思わずのけぞる。


「今の、モールス信号だよね? 」

「なんでモールス信号のこと知ってるんだ? 」


 モールス信号。【アース】から打ち上げられていた古文書の解読により発見された旧時代の言語形態の一つである。現在これを使いこなせる人間はアラムの知る限りでは他にいなかった。ましてや、その古文書や【失われた時代】の存在そのものも一般市民が知り得る情報ではないはずなのだ。なのに、この謎の少年はその存在を知っていた。


 少年はアラムの質問に答える代わりに机の引き出しから何かを取り出してきた。そしてヨシノの手を取り、それを無理やり握らせた。


「モールス信号で会話するってことは、君もアースから来たアンドロイドなんでしょ? それ、飲んでみて」


 手渡されたのは小さな錠剤のようなものだった。ヨシノはアラムと目を見合わせる。少しの躊躇いはあったが、ヨシノは勢いに任せてそれを飲み込んだ。アラムと少年は固唾をのんで見守るが、特に変化は起こらない。痺れを切らして少年は口を開いた。


 「ねえ、声出してみて」

 「声? ……え、あ」


 ヨシノは喉に手を当てて、まるで何が起こったのか理解出来ないでいた。これにはアラムも驚きを隠せなかった。少年はヨシノの手を取り、万歳をしながら飛び跳ねている。 


 「すごい! すごいよアラム! ヨシノ、言葉が喋れるの! 」

 「なんで、ヨシノが喋れるんだ? 今飲ませたあれはなんだ? 」


「今のは僕が開発したAI専用の自動翻訳プログラムだよ。今のは飲むタイプで他にもオーソドックスな外付けパーツタイプ、内蔵メモリタイプに貼るタイプと塗るタイプも作ってみたよ。すごいでしょ」


 ヨシノが嬉しそうに抱きついてくる。彼女の変化を目の当たりにしてしまっては、この突拍子もない話を信じざるを得ない。


「……お前、一体何者? 」

誇らしげに胸を張る少年は、声高らかに自らの名を名乗る。


「僕はシェンザー。この街の科学者さ」


こんにちは、だーぎーです。

これから小説投稿を始めさせていただきます、まだまだ拙いですがよろしくお願いします。


今週は4日連続で投稿させていただき、

来週からは週に2回ずつの投稿を予定しております。

今後ともよろしくお願いします。


10/1


物語を少し書き足しました。

読み返して自分が語りきれなかった、表現が少し足りなかったと思う部分は少しずつ書き足していきます。

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