魔獣
今日は特別授業らしい。
教室の女子生徒たちが色めき立っているのは、きっと今日の授業でギルナ国のカイ王子が特別講師として授業してくださるからだろう。
王子が所有するドラゴンに乗せてくれるらしい。
わたしは王子には興味がないがドラゴンに乗れるのは楽しみだ。
◆
校庭に生徒たちが集められ、そこにドラゴンを連れた王子が現れた。
きゃあきゃあと女子生徒たちから黄色い歓声があがる。
黒光りする漆黒の鱗に覆われたたくましい体に深紅の目、縦に細い猫のような瞳、鋭い爪…
かっこいい…
ドラゴンの姿にほうっとため息がこぼれる。
と、ドラゴンとわたしの目が合う
するとドラゴンがわたしのもとに近寄ってきて、撫でてほしいと言わんばかりにすり寄ってきた。
わたしが撫でてあげるとクルルル…っと喉を鳴らした。
「おや、珍しいこの子、キュルは人見知りなんだが」
王子が珍しそうに言う。
ドラゴンはキュルという名前のようだ。
「…覚…悟……」
一瞬だった。
低い唸り声が聞こえたかと思うと、次に斬撃が王子を襲う。
護衛の者たちが慌てて守ろうとするが、間に合わない。
もうダメだと思ったその時、斬撃をとめた者がいた。
アイシャだ。
無詠唱で次々に魔法を繰り出し、王子を襲った獣、魔獣を捕らえた。
「クッ」
魔獣は負けを悟ったらしい。
「覚えておけ…魔獣の王は…お怒りだ…」
黒いもやとなって王子を襲った魔獣は姿を消した。
「お怪我は?」
「大丈夫だ。ありがとう。君の名前は?」
「わたしはアイシャ」
王子とアイシャのやり取り。
このことで王子はすっかりアイシャを好きになってしまったらしい。
「その…助けてもらったお礼に君を城で行われる晩餐会に招待したいんだが…」
「でも…ひとりで参加するのはさすがに…気が引けます。せっかくなのでクラスの皆も」
アイシャは王子の気持ちに全く気がついていないようだ。
「あ、あぁ わかった。クラスの皆さんをご招待しよう」
わっと歓声があがる。
次の日の夜、わたしのクラス全員、晩餐会に参加できることになった。