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2 ミナンデル・ダンジョン

 薄暗い大きな洞窟を進む。この第8階層は、かなりの高位層なのだろう。ほかに冒険者はいない。ヴォルクとオペルから映像が送られてきた。何かが蠢いている。その時、ケケケケケケと何かがけたたましく鳴いた。


『大口か。鎌が飛んでくるんだったな。』

 鎌は、どこからともなく、音もなく飛んでくる。しかし、僕は、予知の兜で察知が出来る。そしてガーゴイルの魔玉があるので、飛んでくる鎌の姿をとらえることもできるのだ。


『来る。来る。』

 僕は、両手に持った斧を振るって、飛んで来る鎌を次々と払い落とした。カキーン、カキーンと金属音がする。そして、探知をして大口のいる場所を確認すると、今度は魔弓でケンタウロスの矢をつがえ、天井目掛けてそれを射た。

 すると、バシッと矢が何かに当たり、口だけの魔物が落下する。だがすぐに姿は消え、鎌がドロップした。

 『飛び道具は、案外便利だな。』ケンタウロスの矢は、狙いを外さない。


 僕は鎌を拾ってポケットに入れた。矢も回収する。その後も大口を何体か倒し、鎌の数も増えた。たくさん並べてダンジョン博物館の展示品にすれば賑わいそうだ。


 しばらく行くと、じめっとした空気が周りを漂う。これは、アメフラシだな。濡れると面倒なので、僕は、魔牛革で作った雨具を急いで被った。使う機会はあまりなかったが、軽くて頑丈なのだ。

 『降りそうだな。』僕の兜が予知をする。

 その前に。僕は、先手必勝とばかりに、天井の至る所に、ミスリル手裏剣を放った。


 すると、ナメクジを巨大化したような紫色のアメフラシが、天井から何体もぼとぼとと落ちて来た。

 『雨じゃなくて、自分が降って来たね。あまり、気持ちのいいものじゃないな。濡れなくてよかったよ。』

 僕は、ドロップアイテムの溶解液の塊を拾い、収納した。

 さて、次は何かな。


 河童か。オペルが空からの映像を送ってくる。グロテスクな緑色をしたその魔物は、何体も固まり、僕が来るのを待ち構えている。

 『河童は、皿が命だったな。』

 僕は、こちらから勢いよく河童たちの中に突っ込んでいき、片っ端から斧で頭の皿を叩き割る。すると河童たちは、きれいに消滅し、そこには、頭の皿が20個ドロップした。皿は叩き割ったが、ドロップしたのは新品だ。ダンジョンも気を利かせるね。


 20体もいたのに、結構、あっけなかったな。しかしこの皿って、何に使うんだろう。

 鑑定してみると、載せた食べ物に毒が入っていると皿の色が変わるとあった。なるほど、王族と貴族向けだね。ありがたく頂いておくよ。

 その後も、河童は、群れをなして襲ってきたが、ことごとくその頭の皿をパキンパキンと叩き割った。 


 さらに奥に進む。すると、妖気を放つ大きな岩が鎮座していた。

 気配を探ってみると、毒気が漂う。それが、キツネの形になり、僕を襲う。

『殺生石か。玉藻前たまものまえだな。』

 防毒の術式をインストールしているので、僕に毒は効かない。僕は、アメフラシの溶解液を、石に目掛けて、投げつけた。

 じゅわと音を立てる。

『溶けている。もっと投げよう。』

 ありったけの溶解液を投げつける。すると、じゅわ、じゃわっと音を立てて石は徐々に溶けていく。キツネの形をした毒気が次第に小さくなり、苦しそうにもがいている。

「トドメだ!」と僕は、溶けて小さくなった石に斧を叩きこんだ。


 石は、バシッと音を立てて2つに割れ、その姿を消した。そしてその後には、長さ30cmくらいの楕円形で紫色の石がドロップした。

 なんだろうと鑑定すると、毒を放ち、また、毒を消すとある。毒にも薬にもなるってことか。何かに使えそうだな。僕は、それをポケットに収納し、先に進む。

 そこには、2股の猫たちに囲まれた犬神が鎮座していた。


 ここの犬と猫は、喧嘩しないのかな。呑気なことを考えていたら、ギヤー、ギヤーと次々に猫パンチが飛んできた。すんでのところで、それを躱す。

 『アブナ』引っ掻かれるところだったよ。猫は動きが速いね。

 だが襲ってくる猫は、次々に斧で股切りにした。するとウギャン、ウギャンと一声鳴いて姿を消す。こうして、全部の猫を仕留めた。次は、お犬様だ。

『おやっ、姿がない!』

 探知で気配を探ると、後ろだ! ガウッと牙をむいて襲い掛かってくる。僕は、振り帰りざまに、犬神目掛けて斧を振るった。


 するとキャインと声がして、犬神は真っ二つに割れる。そしてドロップアイテムは、犬神の着ていた衣だった。

 『今度は、何だろう? 』

 それは、着ると姿を消せるという隠れ蓑ならぬ隠れ衣であった。


 ようやくボス部屋だ。さあ、早速入ろう。何がいるかな。

 そこには、10mはありそうな巨大なミズチがいた。少し小ぶりのミズチ3体を引き連れている。

 ミズチは、水蛇の妖怪で水の精霊だ。

 『蛇だから、切断するしかないかな。』

 試しに従者の体をスパッと切断したが、たちまちのうちに再生する。やっぱり蛇は再生するね。生命力が強い。頭を切って焼くしかないか。それとも口から切り裂くか。

 ミズチは、鎌首をもたげ、口を大きく開いて、ちょろちょろと二股の舌を出す。

 僕は、その口を狙い、羽毛マントで舞いながら、3体の口に斧を突っ込んで、頭を両断した。次は、ボスミズチだ。


 でかい。ドシンドシンと、のたうちまわる。僕を巻き殺そうと様子を窺う。僕は、大きな火炎球を作り、ボスの頭に投げた。

 ジュワッと音がして火が消えた。『確かに、水の精霊には火は効かないよね。』

 考えが至らなかった。やっぱり、切断するしかないな。切り口は焼くとしてもね。


 ミズチの攻撃を、羽毛マントで飛び回りながら避ける。頭に気を取られると、尾が飛んでくる。それでも、少しずつ切り刻みながら、二股の舌を切り離し、その巨大な口に両手の斧を叩きこんだ。

「グワーーー」と耳をつんざくようなうめき声。

 僕は、口の中の斧の切り口に、火炎球を放り込んだ。ボムという爆発音とともに、ボスミズチの頭は、内側から吹き飛んだ。

 やったね。ドロップしたのは、大きな蛇皮だった。


「さあ、お宝は何かな?」と宝箱を開けると、そこには、真っ青に輝く直径30cmくらいの球体があった。

 これは何かな、と鑑定をすると、手を置くと清水がとめどなく流れ出すとある。さすがに水の精霊だ。

 『水に苦労しないというのはありがたいね。』

 それをポケットに入れて、ダンジョンから外に出た。


 外に出るともう夕方だ。冬の日は陰りが早い。

 丁度目立たない暗さになったので、僕は、郊外に出てファーフナーに跨り、次の設置場所のアブラスコに向かった。ギルドマスターには、テレパフォンで「ダンジョンから帰還したので、アブラスコに向かいます。」とだけ伝えておいた。

 ギルドマスターからも「了解しました。」の一言だけだったよ。お互い、知らない方がいいこともあるからね。

 


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