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13 答申

 マリエラの口から出たのは、次の内容だった。

 ダンジョンの異変は、ギルドが常に警戒し把握している。異変があれば、直ちに帝国の担当部にテレパフォンで伝えればよい。

 そして担当部は、連絡を受け次第、転移魔法陣で、精鋭部隊をそのダンジョンに送り、ダンジョン魔法陣を通して魔物が溢れて来るのを待ち構える。

 その間、ギルドでは、ダンジョン魔法陣の場所にバリアーを張り、精鋭部隊が到着するまで、被害を最小限にする。

 日頃は、精鋭部隊は、魔物用武器を用意し、訓練を行い、年1回は、各ダンジョンで合同訓練を行う。

『いいじゃないか。いけそうだ。あとは、僕が装備を売るだけだよ。』


「よい考えだと思うが、テレパフォンと転移魔法陣が必要だ。バリアーの発生器や魔物用の武器もいる。」とイオラント皇子。皇子も僕の作ったテレパフォンのことは知っている。

「すべて、ご準備はさせていただきます。ですが、ミスリルや魔物の角も必要となりますので、相応の予算は必要となります。」と僕。

『調達コストは、労力だけだけどね。』と思うが、もちろん口には出さない。


「いかほどになりますか。」と皇子。

「例えば、先日の12階層攻略で騎士の方々にお貸しした武具は、1式大金貨50枚(5,000万円)となります。転移魔法陣などは、それとは別となります。1か所当たり大金貨100枚は掛かりましょう。」と僕。

『転移魔法陣の完全商業利用であれば、この10倍の値付けをするよ。』と思うが、口に出したら品がない。


 皇子は、しばらく黙考する。そして、「精鋭部隊も100名は必要であろう。それだけの予算が取れるかだ。」と考えを口にした。

 武具の価値は実証済みなので、価格のことは言わない。むしろ、特別に安くしてもらっているという思いがある。


「それに見合うだけの大きな危機を防ぐということです。それに、転移魔法陣がダンジョンのある各領地に備えてあれば、領主の往復や商用に利用ができます。利用税を徴収すれば、よろしいでしょう。」

「わかった。皇帝陛下にお伝えする。」皇子の顔が明るくなった。

 話し合いが終了し、僕は、顧問室に戻る。

『やったね。姉さん。これだけ入れば、領地の運営は、当面安泰だよ。』


 イオラント皇子は、本日の委員会とその後のアキラとの話し合いの内容を皇帝に報告した。

「ふむ、そうか。して、お前はどう思う?」と皇帝。

「はい。マリエラの案で進めるのがよろしいかと。」と皇子。

「予算はどうするのだ。大金貨6000枚(60億円)もの大事業だぞ。」と皇帝。

「ですが、転移魔法陣が各所に設置できれば、人や物の流通は大きく変わります。利用税だけでもすぐに元は取れます。」

「また、外国の侵入や海賊の襲来があったときも、軍隊を速やかに送れます。備えのための常時駐屯を減らせますので、それだけでも大きな価値があります。」

「アキラ殿への支払は、分割か領地の税金の免除などでお願いすれば、一度の出金を避けることができます。」と皇子は答える。

「なるほど。それがよさそうだな。よし、詳細を詰めよ。」と皇帝はイオラントに命じた。


 皇子が退出した後、『マリエラの案か・・・。イオラントも成長したのう。』と皇帝は微笑んだ。

 イオラントにとって、初めてのビッグプロジェクトだ。マリエラもいるし、アキラもいる。成功は間違いない。皇子の気持ちは、大いに高揚していた。


 第2回の委員会で、答申の内容がまとめられた。イオラント皇子が皇帝の意見を聞き、まとめた内容を、事務局で敷衍して記述したものだ。魔道具も具体的な状況に合わせて利用方法が説明されている。

「いままで実用化していない魔法が、多く使われることになるのですな。ここまでのものがあるとは・・・。」と委員たちから驚嘆の声が上がる。そして、さすがのファーレンハイム博士も唸る。「早く見てみたいですな。」と。


「ダンジョンの中で、実際に魔物と戦う訓練が必要だな。」

「転移魔法陣は、多用されると、宿場町がひなびてしまうので、利用税を高く設定すべきではないか。」

「商用には高く設定し、領主が帝都と往復する場合は安めに設定してもらうとありがたい。」

「回数に応じて、逆に高くするのはどうか。」

 そのあと様々な意見が出されるが、このような詳細は、事務レベルで配慮するとして、2つの諮問に対する一応の答申の内容がまとめられ、その日のうちに答申書として皇帝に提出された。

 そして、諮問委員会は、とりあえずの役割を終えた。


 僕は、武具の大量発注に備えて、皇子からマリエラを借りてトーリードの13階に何度か潜り、ミスリル塊を大量に手に入れた。

 ダンジョンのミスリルは、武器を作っていて感じたのだが、術式を念じ込みやすく、また、発動の効果もかなり高い。そのため、転移魔法陣やバリアーの発生器も、ミスリル板を使うことを考えた。ミスリル板のハンディ・テレパフォンも試作してみようかと思っている。


 それにしても、ここの13階は、肥料、瓶用の水晶、ミスリルとドロップアイテムの利用価値が高いな。いまのところ、僕らだけの専用階層なのだ。どんどん回収しよう。

 ゴーレムボスの宝箱からは、変わった魔武器も出た。それは、銀色に輝く70cmくらいの小型の弓だ。だがこれは、次の階層でドロップするケンタウロスの矢を射るのに最適かなと合点がいった。


 その後、僕は、皇宮の事務官と具体的な発注内容、金額、支払方法、スケジュールを協議した。支払は、一括では無理なので、協議の結果、タールダム領の帝都への納税分を5年間免除することで折り合った。これまでは、年間大金貨100枚(1億円)程度の納税額だったから、お得だと思ったのかもしれない。

 でもね、僕は、来年はその10倍、3年後には20倍、5年後には30倍の納税額を見込んでいるんだよ。どっちが得だったのか、結果が楽しみだね。


 転移魔法陣は、各所で場所を選定して建屋を作らないといけないので、それが出来てから順番に回る。場所は、安全かつ便利なところで、それなりの広さが必要となる。魔物が溢れている中を100人の部隊が登場しなければならなくなるかもしれないのだ。それに加えて、常時、商用にも使う。


 それから、2頭立ての馬車を、帝都まで転移できるようにする予定だ。これまでは、帝都の僕の屋敷やマリエラの皇宮の部屋から、人1人をタールダム領に転移するのが最長距離、積載人数であったが、エドモンドの僕らの拠点とつないだりしてみて、ダンジョンミスリルを利用すれば、長距離かつ大量に転移することが可能と判断したのだ。


 転移魔法陣は、追々造るとして、まずは武具を作る。並行して、テレパフォンとバリアー発生器を作る。こうして、順次、必要な魔道具を製作していくことになったのだ。

 武具は、剣、盾、兜、腕輪に速足魔法陣の靴の中敷だ。どれも武具の威力を上げるための術式を念じ込んである。


 こつこつと作業をし、そして、武具の最初の納品分20組ができあがった。

『ダンジョン内の最初の訓練は、サービスしたので、早速、訓練を実施しよう。やっぱり手頃なのは、トーリード12階の角の大目玉とミノタウロスだな。』

 と、僕は早速、事務方に連絡をした。


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