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6 ホヴァンスキ・ダンジョン2

 呼吸の出来る海の中か。しかし水の抵抗があるから、戦いにくいということでもある。雷を放って、周りまで感電しないのか、火炎球は消えてしまうのか、消えないとしても爆発したら、振動でこちらにまで影響が及ぶのか。色々注意しなければいけないようだ。

 空気をかくと、身体が浮く。やはり、水中と考えた方がわかりやすい。

 『案の定、泳げるな。』

 そこで僕は、昨日潜ったときに使った足ヒレを装着した。そして、「クロノス、皆の警備を頼む。」と、クロノスを召喚した。


 クロノスは、その空間を4枚のヒレ脚を使って、悠々と泳ぐ。クロノスに守られながら、僕らは、ダンジョン内の疑似海中を進んだ。僕とマリエラは、足ヒレで泳ぐ。結構なスピードで移動ができている。

 うん? 何かがいる。上の方だ。僕は、『みんな、上からエイが襲ってくるぞ!』と皆に注意を発した。


 エイが10体ほどの集団で僕らの上空を舞っている。頭や胴と一体化したそのヒレは、幅が10mもありそうだ。そして、それを波立たせ、僕らを狙っている。尾の部分には、長くて太い毒針が突き出ている。

 『歯も鋭そうだけど、毒針が特に危険だね。』

 でも、エイは扁平型に広がっているので、実は下から狙いやすいのだ。疑似海水の抵抗はあるが、手裏剣で狙ってみよう。


 僕は、長い手裏剣を大量かつ広範囲に飛ばした。

 すると、下から、ブスッ、ブスッと次々に、エラや腹に突き刺さり、突き抜ける。

 『水中でもエイが相手だと案外有効だな。やってみるもんだね。』

 海底ならぬ地面には、エイの毒針が山のようにドロップした。

 毒針っていっても、槍の穂先ぐらいの大きさはあるな。刺さると毒が出るんだね。今度出た魔物に使ってみよう。


 しばらく行くと、右手左手と、巨大なシャコガイが口を大きく開いて待っている。通り過ぎようとすると襲ってくるのは、まず間違いない。

 僕らは、シャコガイが待機している直前で、進行を止めた。

 『さて、どうしようかな。』

 と僕は、一体のシャコガイに、そろそろと近づき、その口の中に、ポケットからいきなりエイの毒針を投げ入れた。


 バック―ンと口が閉じ、そして再び開いた時には、シャコガイの命は既になかった。それとともに、エイの毒針も溶けて消えていた。

 『毒針は、使い捨てだったか。』

 こうして、次々にシャコガイの口にエイの毒針を放り込んでいった。

 『結構、順調だったな。何がドロップしたのかな。』

 するとそこには、層が厚く光沢のある粒の揃った真珠が、まるで砂利のようにゴロゴロ転がっていた。真珠の絨毯だ。

「わーきれい!」エリザベートとマルファが真珠を両手に掬い同時に声を出した。


 さて次は何だろう? しばらく進むと、小山のようなウミガメが甲羅干しをしていた。

 『アーケロンか。甲羅が硬いよね。首を引っ込めると、攻撃しにくいな。どうしようか、姉さん。』

 『カメは、ひっくり返すに決まっているじゃないか。』とマリエラ。

 きっと、郷里では、そうやって遊んでいたんだね。経験者じゃないと、すぐには思いつかないよ。

 アーケロンも同じかな。でも、どうやってこんな小山をひっくり返そうか。

 すると、アーケロンは、僕らを見付けるとドシドシドシドシと突進してきた。

「退けー!」僕らは、そこを退いた。


 カメが、先ほど僕らのいたところまで来たとき、僕は、魔法陣に精一杯魔力を流した。

 僕は、宙を浮く魔法陣をトカゲの皮に念写した敷物を作っていたのだ。別に、今日のためではない。高くに昇り、遠方を確認して、ワープができると便利だと思っていたのだ。でも今では、魔羽があるから、特に使う機会がないまま仕舞ってあった。それを敷いて、アーケロンを待っていたのだ。

 『浮くかな。』

 少し浮いた。それで十分だ。

 『姉さん、行くよ。』

 『おぉ。』

 僕とマリエラは、魔羽を装着してアーケロンの側面に回って、片側からその身体を「えいやっ」と、ひっくり返した。

 『やったね。じゃあ、行こうか。』

 と、甲羅を下にしてジタバタしているアーケロンの首元に載って、そこに剣を突き刺し、斧を叩きつけた。

 『あっ、首が落ちた。』

 小山のようなアーケロンも、その姿を消した。

 そして、後には、鼈甲の大きな塊がいくつもドロップした。工芸品とか装飾品に使われる貴重な素材だ。ありがたく、頂いておく。


 僕らは、どんどん先に進む。すると、向こうから、巨大なキラーシャークが群れを成してやってきた。

 大きな口を開け、鋭い歯を見せる。目つきも悪い。今度は、クロノスにお願いしようか。

「クロノス、こいつら、やっつけて!」と僕は頼んだ。

 クロノスは、縦横無尽に動き回り、次々にシャークをバリッ、バリッとかみ砕く。逃げられるものは、いない。キラーシャークは、僕らを襲うどころじゃなかったね。トンボがカラスに向かって行ったようなものだよ。

 そして、鋭い歯が並んだあごの骨が、ドロップした。

「何に使うんだろう?」と僕が呟くと、マルファが、「粉にして飲むと歯、骨や皮膚を丈夫にすると言われています。」と答えた。

 なるほど、カルシウムだね。でも魔素を含んでいるので、相当効果は高いのだろうな。


 さらに、奥に進む。すると、そこには海蜘蛛が数体、行く手を阻んでいた。

 『蜘蛛か。毒があるのかな。ほかには強そうな要素はないな。女性たちは、見た目で怖がるけどね。』

 毒の耐性があるので、僕は、ひとまず一人で近付いていった。

 すると、シュワーと音を立てて、その口から糸を吐きつけてきた。粘性が強くて、巻き付かれるとやっかいそうだ。

 僕は、その場を飛びのいて、手裏剣を放つ。しかし、蜘蛛は、吐き出す糸でそのすべてを絡め落とした。


 『焼くか。』

 僕は、火炎球を作り出し、ボーン、ボーーンと、魔蜘蛛らを包み込んだ。蜘蛛たちは、身もだえる。だが、火は消えもしないし、体にまとわりついて離れない。蜘蛛の体は、次第に動かなくなってきた。

「燃え尽きたね。」やっぱり虫の類は燃えるよ。

 海蜘蛛がドロップしたのは、蜘蛛の糸であった。海蜘蛛の糸は、柔らかいのに、堅牢だ。それに本体と違って燃えないらしい。衣服から建材にまで使える便利な素材とのことだ。


 あとはボス部屋まで、大した魔物はいないはずだ。蹴散らしていけばよい。だが朝が早かったからお腹がすいた。疑似海中の空間も抜けたので、ここらで、食事にしよう。

 と僕らは、適当な場所を見付けて、早めの昼食にすることにした。


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