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5 トーリード・ダンジョン第14階層

 決闘裁判の呼び出しは、まだ先だ。準備もあるし、公開しなければいけないので、公告して一定期間置かなければならないそうだ。そこでこの機会に、トーリード・ダンジョンの14階に潜ることに決めた。

 13階層は、ゴーレム階層だった。そこを攻略して14階から戻るときに、目にした風景は岩山だったな。さあ、出発だ。


 いつものとおり、マリエラと魔法陣で14階に到着する。シルビアも誘ったのだが、トールウォールで12階にもう一度潜ることになったらしい。マジックバッグも手に入ったし、新しく武器も揃えた、そして、何よりもシルビアが著しくパワーアップしたので、思い切って挑戦することにしたそうだ。

 それでもボス部屋は、従者のミノが5体もいるので、7人のメンバーでは難しいと思う。実力者があと2人は必要だ。または、高性能の武具があれば何とかなる。でも自分たちでもそれはわかっていて、攻略までは計画していないそうだ。それなら安心だね。武具を貸そうかとも思ったけど、彼らのプライドを傷つけるからやめたよ。


 薄暗い岩山地帯だ。さて、何が出てくるかな。斥候を出していたから、もうわかっているんだけどね。さあ、出てこい、ケンタウロス。

 ケンタウロスは、人間の上半身と馬の身体をもった怪物だ。馬の首から人間が生えている感じか。弓、槍、棍棒などを使う乱暴な存在だ。

 と、岩山の両側から、次々と矢が飛んでくる。やっと、出てきたね。

 僕は、両手の魔斧、マリエラは、魔盾と魔メイスで、それらを次々に撃ち落とす。爪楊枝が飛んできたくらいにしか感じないよ。うわっ、今度は、槍が飛んできた。いきなり違うものが飛んで来たらびっくりするね。でもこれも難なく、撃ち落とす。

 すると、ケンタウロスたちは、「ウォー、ウォー」と鬨の声を上げ、槍と棍棒を手にして一斉に僕ら目掛けて岩山を駆け下りてきた。


「グォーン」「バシーン」と次々に叩き、ぶった切る。乱暴な連中だが、武器は結構原始的だ。力任せで振り回すだけなのだ。20体くらいか。あっという間にその辺に叩き伏せられて静かになった。

 ドロップアイテムは、矢、槍、棍棒だ。ケンタウロスのってどうなんだろう。

 矢じりは、ミスリルか。柄の部分は、強くてしなやかだ。何の木だろう? 矢羽は、何だか魔鳥のものみたいだ。射手の思い通りに方向を変化させることができると見た。いい矢なんだけどね。矢だけあってもね、弓がないとな。

 槍はなかなかのものだね。槍頭の部位は、ミスリルか? 柄は魔木なので少し伸びるみたいだ。戦っていて、いきなり槍が伸びたら驚くよね。デフォルトは、少し短めなので、持ち歩きに最適だ。ダンジョン内の狭い場所でも戦えるね。

 棍棒は、いろいろな魔物のやつがバッグに入っているなと思いながら持ち上げてみると、おっ軽い。素材は見当が付かないが、これなら普通の冒険者や武人でも武器として使えそうだ。ケンタウロスをデザインして刻印して売り出すか。「ケンタウロス印の棍棒です!」ってね。そのままギルドに買い取ってもらうより付加価値が付くよね。いっそのこと武器屋でも始めようかな。商売は、嫌いじゃないよ。ダンジョン産の不思議な武器を商えば、話題を呼ぶよ。売れるかどうかは、価格次第だけどね。

 全部、マジックバッグに収納だ。


 途中、何度かケンタウロスの襲撃に遭うが、同じように蹴散らし、ドロップ品を稼ぐ。先に進むと、大きな洞窟、ここには、ガーゴイルがいるはずだ。そんなことは、とっくに知っているよ。上を注意して進もう。


 ガーゴイルは、フランスでは雨樋だったんだよ。日本でも鬼の顔をした雨樋があるように、元の世界では、昔は、雨樋を怪物の形に作って魔除けにしたんだって。わからないけどね。

 フランス語で、水が流れるゴボゴボが、ガーゴイルになったって話だ。これも、本当かどうか、わからないけどね。そういわれればそうかもしれないなとは思う。ガーゴイルは、パリの街中のどこにでもいる人気者なのだ。ノートルダム大聖堂にも立派なのがいるそうだ。でも異世界のダンジョンで暴れているって話は、聞かなかったな。


 その雨樋だったはずのガーゴイルたちが、突然「ウガー」と唸りながら、ビュン、ビュンと急降下して僕らを襲ってきた。ガーゴイルは、もともと焼き物や石だから硬いよね。ガチン、ガチン、なかなか切り倒せない。

 マリエラが雷剣を一閃するが、雷も石には通じない。雨樋に雷は効かないよね。ガーゴイルたちは、バタバタバタと羽音を立て、蝙蝠のように、天井近くに湧いている。切れなければ、叩き割るしかないか。力技だな。


 僕は、羽マントで舞いながら、近づいてくるガーゴイルの羽の付け根を狙って斧を振るう。ドガッ、ドガッと羽元なら切れる。羽を切り落とされた怪物が地面に落ちたら、顔面を目掛けて斧を叩き込み、その顔を叩き割る。『グエッ』と一声、一丁上り。カエルみたいな顔をしているから、こんな鳴き声になるのだろうね。

 マリエラは、盾にぶつかってきたやつをメイスでぶっ叩いて、その顔面を叩き割る。姉さんの戦いは、ド迫力だね。女神の戦士って感じだよ。

 なんとかこうして、ガーゴイルを20体ほど片付けた。まるで石工にでもなったような感じだよ。

 お仕事を終えた。そしてドロップ品が落ちた。『何だ、これは。ビー玉?』


 持ってみると、前を向いているのに、顔や目を動かさずに、自分の目で上が見える、横が見える、後ろが見える。同時に360°見えるのだ。全方位が頭の中に展開するのは、不思議な感覚だが、違和感はない。不思議な玉だ。敵に囲まれたときや、敵がどこに隠れているかわからないときなどに持っていると便利かもしれない。これも高く売れそうだ。

 やはり、お店を持つか。屋号は、「アキラ&マリエラ」がいいかな。「マリエラ&アキラ」より、語呂がいいからね。五十音順で早いが勝ちだよ。

 僕らは、その玉を、試しに使ってみるために、早速1つずつ身に着け、後はマジックバッグに仕舞った。

 さあ、先に進もう。洞窟を抜けると、そこには、明るく広々とした草原が広がっていた。

 いるいる。角を生やした真っ白い馬が、10~20頭で群れをなして草を食んでいた。


 ダンジョンにしては平和な風景だな。と思った途端、その白い馬、すなわちユニコーンは、僕ら目掛けて、ドゥ、ドゥ、ドゥと勢いよく砂煙を上げて一斉に襲ってきた。


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